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第3話 鉄血のインタビュー その3

 オニキスによる【鉄血の翼】へのインタビュー。

 取材は順調に進んでいき、クラウディアは普段と違った物腰丁寧な態度で応じている。


「それでは、リーダーのクラウディア・シルフィードさん。今回は本戦への出場お疲れさまでした」


「ありがとうございます。私としては中途半端な結果になってしまって不甲斐なさを感じています」


「いえいえ! 本戦に出場しただけでも十分な結果だと思いますが」


「それ自体はうれしいことです。ただ、ご存知のように他のメンバーがより高い結果を出しています。

 予選を通過しなかったメンバーも日々めざましく進歩しているので、気をゆるめてはいられません」


「はぁ~、なるほど。自分よりも上の結果を出されると、ギルドのリーダーとしてはうれしい反面、プレッシャーを感じてしまうわけですね。

 今後、ワールドチャンピオンシップやジュニアカップといった大規模なイベント、あるいはギルド対抗戦などに出場する予定はありますか?」


「参加を強制することはありませんが、ここにいるメンバーなら自主的に手を上げると思っています。

 特に新人のリンと小学生のソニアには、より多くのことを体験してほしいですね」


「ソニアさんは、クラウディアさんのご家族とのことですが。

 一緒にプレイするのは楽しいですか?」


「至極、当然であります!

 クラウディアお姉さまこそわたしの――否、この世界の全て!

 いずれ実現するであろう第三帝国のためにも、我が身と力の全てを捧げる所存です!

 わたしこそが偉大なるお姉さま! シルフィードの名を分け与えられし双翼!

 ソニア・シルフィーーーーーーーーード!!」


「は、はぁ……」


 およそ小学生らしからぬ発言に、目を丸くするオニキス。

 対するソニアは、バサッとマントをひるがえして決めポーズを取っている。

 メンバーたちは慣れているが、外部の者は何事かと思うだろう。クラウディアは深く息をつきながら小声で言葉を付け足した。


「申し訳ありません。ウチの妹はいつもこんな感じで……

 言葉の意味を分からないまま、かっこいいと思って使っている部分も多いので、聞き流していただければと」


「分かりました。可愛い妹さんですね。

 ギルドの皆さんは個性がありながらも、団結している様子が伝わってきます。

 当初は新人のリンさんを取材する予定でしたが、ギルド全体への取材に代わったのは本当に幸運でした。

 質問にも丁寧に応じていただけましたので、これで良い記事が書けそうです」


 かくして、取材は(とどこお)りなく終了する。

 他の記者が多忙で動けなかったため、若いオニキスに回ってきた仕事だが、【鉄血の翼】の清々しさは彼女に元気を与えてくれるようだった。


「最後になりますが、何かご質問はありますか?」


「あ……え~と、あの……」


 おずおずと小さく手を上げたのはリン。この取材が始まったときから、ずっと聞いてみたいことがあったのだ。


「オニキスさんもプレイヤー、ですよね?」


「はい。このアバターは元々、私が今の編集部に入社する前から使っていたものです。

 ゲーム好きが高じた結果、この業界に関わる仕事を選んだ感じでして」


「へぇ~、素敵ですね! じゃあ、オフのときはプレイしてるんですか?」


「やってますよ。今度の5周年アップデート、本当に楽しみですよね。

 実は新しい追加カードの情報をここで聞けるんじゃないかと期待していたんですが、みなさんで発売日に開封するという話を聞いて、とてもうれしくなってしまいました」


 仕事としての記者の顔から、楽しそうなプレイヤーの顔へと変わっていくオニキス。

 彼女もまたカードゲームを愛し、同じ仮想世界に生きている。


 それを感じ取ったとき、リンは改めてラヴィアンローズの広さと多様性を実感したのだった。

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