世界の半分
説明っぽくなってしまった、、、
情報多過で書きたいことと、書くべきことが混ざる、、、
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「この世界では、共闘していこうじゃないか」
賢が創也に手を差し出して握手を求める。
がっちりと組まれた手には共闘の、協力の意思こそあれど、友愛の情は見受けられない。
賢と創也は、お互いを利用し合っている歪な仲といっていい。
今回の密会も、"助け合い"なんて意図は双方ないであろう。創也は賢の持つ頭脳を、賢は創也の持つ閃きと戦闘能力を求めて、昼に会うことを約束したのだ。
賢と創也は、生徒達に、また異世界人に悟られないよう、日中のうちに夜に会う約束を取り付けていた。
元の世界でも、あまり直接的な関わりを表に見せて来なかった2人なので、生徒達も創也と賢が手を組んでいるとは考えないであろう。
創也と賢の仲が知られない利点は主に2つ。
1つは、どちらかが問題を起こした時に、もう片方が巻き込まれないこと。特に賢は《賢者》という特殊な職業のため、様々な諍いに巻き込まれることが予想できる。創也も、クラスのカースト上位陣と対立しているため、問題は絶えないだろう。
もう1つは、繋がりを知られていない状況での協力ができること。これは、意外と効果的な策である。
人は、無力な、また無力と思われる人の前では油断することが多い。それは、隙をみせても自分に害が及ばないという慢心の現れでもあるし、良く言えば余裕を持てるといってもいい。
ステータスで強さを数値化できるこの世界では、上下関係ができやすい。より強い相手に負けない為に必要なのは、数や策で勝ることと相手の油断を誘うことだ。
創也と賢は、協力を知られずに異世界を生き抜くことを目指して行動することに決めていた。
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静まり返った暗闇の中、賢が急くように話し始めた。
「じゃあ、まずはステータスのことから話し始めようか」
賢は相変わらずの狂気の表情で、その口調はどこか楽しさを感じさせる。大き過ぎず、かといって聞き取りやすい落ち着いた声で賢は続けた。
「この世界のステータスは、単に能力を数値化するだけの便利機能ではない。むしろステータスは、身分の証明や確認に使われることの方が多いんだ。」
「身分の証明?」
「あぁ、ステータスは普通、こんな使い方をする。」
賢はそう言って、ステータスオープン、と唱えた。
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斉藤賢 人族
賢者Lv1
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「これは、ステータス、なのか?」
昼の時とは違う青白い表示を眺めながら、創也は率直な意見を言った。
賢が開示したステータスには一切の数値が書かれておらず、まさに身分の証明に適しているといっていい。
「これは、制限開示というステータスの表示方法だ。制限開示、と念じながらステータスを開示すればこんな表記になる。」
賢はさも当たり前かのように話を続けた。
「そして、ステータスの最も重要な点は、普通の開示でも制限開示でも表記されている、"レベル"だ。なぜならこの世界は、レベル至上主義更に言えば、ステータス至上主義なのだから。」
どこで仕入れたのか、次々と言われるこの世界の情勢に、創也は関心しながらも必死に点と点を繋げるような作業を頭の中で行っていた。
聖女の言葉、見学した王城、賢の情報を照らし合わせて整理し、今後の行動方針を思考する。
そんな創也の考えも知らずか、賢はベッドの上に置かれた本を当たり前かのように手に取る。
そして、ページを開いて中に書いてある地図を創也に見せた。
「まず、俺達が召喚されたのは、この大陸の西に位置するノスフィディア王国だ。」
地図の西端を指差し、説明を続けようとする賢。
「ノスフィディア王国は、北からの魔物の襲撃を受けていてーー
「おい、ちょっと待ってくれ」
流れるように説明を始めた賢に、戸惑いを隠せず、創也は思わず声を上げた。
その視線は賢の出した本に釘付けだ。
「まさか、読んだのか?」
記号の羅列してあるページと、その横にあるこの世界の地図と思われる図。
きっと城の蔵書室から無断で持ち出したと思われるその本は、もちろん異世界の文字で書かれている。
賢の能力をもってすれば、未知の言語をすぐに理解するというのは、ありえないことでは無いだろう。
しかし異世界に召喚された当日に言語解読とは、あまりにも適応が早すぎるのではないだろうか。
「今日で、どこまでこの世界を理解したんだ?」
抽象的で、それでいて非効率な創也の疑問の答えは、具体的な賢の解答で示された。
「この世界の半分。つまり、秘匿された真実以外の全てだ。」
次回の更新は明日の21:00です