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斉藤賢

書きたい戦闘描写までもう少しかかります。


もう少し、、、

「よく来たな」


上の階の窓とロープ、下ってきた創也を見ながら見ながら賢はそう言い放った。


長い前髪に黒縁のメガネ、小さく覇気の無い声と、賢を表すなら陰鬱や根暗といった言葉が最適だろう。人との関わりを極端に避ける彼と創也の関係を説明するには、3ヶ月ほど前に遡る。





▼ ▼





ある日の放課後、賢はいつも通り机に向かって勉強していた。

周囲の様子も気にせず、一心不乱にノートに何かを書き込んでいた。


いつも1人でいる賢が気になった創也は、賢が集中しているのをいいことに、興味本位でそのノートを覗き込んだ。

賢は、数式を解いていた。きっと、高校では習わないであろう範囲だ。創也は、何が書いてあるかが理解できなかったため、勝手にそう判断した。


途中式を遡りながら、創也は横目で未だに創也に気づかない賢を見た。

手は高速で動きながら次々と文字を生み出しているのに対して、その表情は単純作業を繰り返しているかのようだった。


変わった奴だ、と思いながら賢の書いた式を遡る。


創也は、速く綴られた割には整った文字を目で追い、遂に何の式を解いているのかを見る。


その遡った最後、否、式の始まりだから最初、つまりは賢が証明している式を見たとき、創也の持っていた面白半分な気持ちは吹き飛んだ。


賢が証明していたのは、高校生なら一度は目にしたことのある有名な数学の未解決問題だったからだ。


「うん」


呟いたかと思うといきなり筆を止め、スマホを取り出す賢。彼はノート全体が収まるように写真を撮ると、何かのサイトへとび、その写真を投稿した。


「帰るか」


そう呟いてノートを閉じようとした時、賢は初めて彼の側にいた創也に気付いた。


一瞬体を硬直させた賢は、目を下に泳がせた後、創也に問いかける。


「見てたのか?」


咄嗟に首肯する創也。


創也は賢の次の言葉を待ったが、そんな創也を気にもとめず、賢は創也の横を通り過ぎ、教室を出ていった。


創也は、その後のことはよく覚えていない。


翌朝のニュースで、数学の未解決問題の解答がネットに投稿されたとか、海外の教授がそれを自分の論文だと主張しているだとか、そんな内容だった気がする。


そんなことよりも、創也の頭からは賢の単純作業でもしているような、つまらなさそうな表情が離れなかった。


これが、創也と賢の初対面である。




▼ ▼




「それじゃあ情報のすり合わせをしようか」


冷淡にそう言った賢の瞳には、その口調とは裏腹に狂気ともいえる好奇心の光が宿っていた。創也には、彼が何を考えているか容易に推察できた。


彼は、斉藤賢という人間は、好奇心の化け物なのだ。あんなにもつまらなさそうな表情をしていた元の世界の面影はなく、口の端はつり上がり、目も見開いている。


退屈な日々に、変化が訪れる。


文字にすれば凡庸だが、賢にとって異世界転移とはその通りの出来事であったのだろう。


これは、3ヶ月間賢を観察してきた創也のだした勝手な結論である。だが、創也には的を射ていると思っているし、実際、賢はなによりも未知を愛する人間(へんたい)だ。

そして、その変態(にんげん)は、"異世界"という最高の未知に出逢ってしまった。きっと今、彼の頭脳では何百という仮説が渦を巻き、その立証への渇望を叫んでいるだろう。


「今僕は、最高に楽しいよ」


見れば分かる、そう言いたいところだったが野暮なので創也は口には出さなかった。


「未知の物理法則だ。否、物理であるのかすらも怪しい。この世界は何かが根本的に違う」


普段とはうってかわって饒舌な賢を見ながら、創也は内心安堵した。

この異世界でも、賢の頭脳があればきっとなんとかなるだろう。


そう確信できるくらいには、創也は賢を、そして賢の能力を評価していた。


次回の更新は明日の21:00です。

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