第四話 このままでは
「ふう……」
拝啓、天国のお母さん。
俺は今、最高に幸せな気分です。
今現在、可愛い双子の義妹が俺を挟むように、それはもう可愛い寝顔で眠っています。
初めは、俺に妹ができた! とは素直に喜んでいました。
けど、あの頃の二人は、本当に人形かのように無反応で、嫌われているんじゃないだろうかと思ったほどです。
それがどうですか?
今となっては、ダメ人間にされる勢いで甘えています。
二人とも、可愛いだけではなく、料理も得意で、小学生とは思えないほど頭もよく、謎の色気もあり、俺はドキドキが止まりません。
父さんには一線を超えないようにと言われましたが、どの辺りが超えてはならない一線なのかわからなくなっています。
俺、二人と一緒に風呂にも入ったんです。
さすがにそれはだめだ! と二人を追い払おうとしたのですが……捨てられた子犬のような潤んだ目でお兄ちゃんなんでと言われ、簡単に折れてしまいました。
タオルなんて巻かず、真っ裸。
俺は必死に二人の裸を見ないように目を瞑りました。
けど、勝手に想像してしまう。
あの夜、顔を埋めたロリなのに、とても柔らかいちっぱいの感触を。目を開ければ、振り向けばそこには!
まあ、そんな欲求に俺は打ち勝ち、なんとか戦場から帰還……したと思いきや二人に挟まれながら体を拭かれる。
さすがに大事なところに触れさせるわけにはいかないので、二人の残念そうな声攻撃をなんとか耐え抜きました。
二人と仲良くなれたのは本当に嬉しいことです。
けど、このままの生活が続けば、俺はマジでダメ人間になってしまいます。
母さん……俺は、どうしたらいいのでしょうか?
「あ、おはようお兄ちゃん」
と、エルウィーちゃんが左から囁き。
「おはよう。今日は早起きだね。ざーんねん。お兄ちゃんの寝顔を見れなかったや」
と、アルフィーちゃんが右から囁く。
「あはは。いやぁ、可愛い妹達の寝顔を見ていたくて。な、なんて」
さすがに調子に乗りすぎたか?
自分の発言を受け、二人がどう思うかドキドキしていると。
ぎゅっ!
両サイドから柔らかい感触が、俺を包み込む。
「えへへ。嬉しい」
「だったら、もうちょっと寝ててもよかったなー」
どうやら、二人ともかなり嬉しいようだった。
そんなこんなで、二人に甘える生活が今日もスタートする。昨日と同じように、二人からあーんをされ、父さんに苦笑される。
その後、二人と一緒に自宅から出る。
「一晴」
空実だ。昨日と違い、空実は自宅の玄関先で待っていた。それに、なんだかいつも通りに戻ってる?
昨日の遠慮がちな雰囲気が消え、いつもに近い雰囲気になっていた空実は、俺の近づいてくる。
「お、おはよう空実。今日は、早いんだな」
「ええ。……あ、あのさ!」
なにかを決意したような表情だ。いつも通りと言ったが、今日の空実は何かが違う。
「お、一昨日に言ったことだけど」
一昨日。
つまり告白の返事のことだ。夏騎とエルウィーちゃん、アルフィーちゃんのおかげで回復したが、やはり言った本人の口からその話題が出ると心がざわめく。
「あ、あれはふったわけじゃないから!」
「……え?」
「な、なにを言って」
思わず、エルウィーちゃんが介入しようとするが、空実は止まらなかった。
「付き合えないとは言ってないから! だから……そ、そういうこと!! ほら、行くわよ!」
「え? あのちょっと……!」
何やら怒涛の展開で、俺の思考も追い付いていない状態だ。
というか、エルウィーちゃんとアルフィーちゃんが置いてけぼりに。
しかし、そんなことは気にもせず空実は俺の手を握り締め、歩いていく。
「お兄ちゃん!」
「わたし達も一緒に行く!」
「あ、ああ。空実、そういうことだから」
「……そうね」
追い付いてきた二人を見て、空実は俺の手を引くのを止める。
そして、二人は何やらいつも以上に俺の腕に力強く絡み付いてきた。あれ? なんか空実を睨んでる? まさか盗られると思ったのか?
「ふっ」
「ぐぬぬ」
「このぉ」
えぇ……なんだか、三人の間にただならぬ雰囲気を感じるんだが。お、俺の知らないところで何かあったのか?
というか、空実のさっきの言葉って……つまり、そ、そういうことなのか? 確かに付き合えないとは言ってなかった。
でも、付き合ってくださいと言った返事がごめんなさいだったし。
ど、どうなってるんだ? あー! わけがわからない!
天国の母さん。
俺は、これからどうなってしまうでしょうか!?