第一話 変わりゆく日常
「はい。お兄ちゃん、あーん」
「あっ! ずるいよ、エルウィー! こっちもこっちも!」
「……」
どうも、皆さんおはようございます。幼馴染のことを好きだと知り、思いきって告白をしましたが見事に撃沈。
親友に慰められるが、それでも心に負った傷は癒えませんでした。
しかし、今の俺は完全に近いほど回復しています。
それもこれも、可愛い妹達が俺を癒してくれたおかげ。
再婚した母親であるミランダが、連れていた双子。
最初は、お人形みたいで可愛いし、仲良くしたいとは思っていたのだが……まさかこんな形で仲良くなれるとは。
これには、父さんや義母さんも唖然としている。
それもそのはずだ。
俺は何度も仲良くしたいと思っていることは知っていたが、それを双子は無視、というか無反応だった。
親としては、俺達の仲を気にかけてくれていた。
「お、お前達。いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
と、父親である大悟が問いかけてくる。
土木作業員で、肌はよく焦げ、筋肉はモリモリ。だが、そんな体に似合わず、めがねをかけている。
それが俺の父親。
「あ、いやそれが」
「お兄ちゃん。ほら、冷めちゃうよ?」
「あ、うん」
「次はこっち!」
「う、うん」
双子に挟まれながら、差し出されたものを交互に食べる。
普通に幸せな一時だ。
「ふふ。大悟さん。そんな些細なこと気にしない気にしない。今の三人を見れば、仲良しなのは一目瞭然。それで良いじゃないですか」
再婚相手の女性。現母親であるミランダは、先ほどは唖然としていたが、今は俺達のことを受け入れてくれている。
美人過ぎて、どうして親父が再婚できたのかわからないと今でも思ってしまう。互いに、妻を夫を病気で亡くしてしまい、ずっとシングルで育ててきた。そういうこともあって、次第にひかれあったのだろう。
「まあ、確かにな。けど、今までが今までだからな。一晩でここまでの仲良しっぷりを見てしまってはな」
親父。俺もそう思うよ。
俺だって、まさか一晩でここまで仲良くなるとは思ってもいなかった。二人は、俺のことになんて興味がないのだとずっと思っていたからな。
「これで、家族団欒。幸せな家庭の完成ですね」
「ああ。だが、一晴。間違いだけは犯すなよ?」
「は、はあ? なんだよ間違いって」
親父の言葉に、俺は昨日の出来事を思い出す。
「血が繋がってなくとも、お前達は兄妹だ。男女の一線は超えるなってことだよ」
「そ、そんなの当たり前だろ? な、なあ? 二人とも」
すまない親父。すでに、一線を超えてしまったかもしれない。
いや、昨日のは違う。
あれは、ただ兄として妹と仲良く添い寝をしただけなのだ。
決して、やましい気持ちがあったわけじゃない。
「うん。大丈夫だよ、お父さん。ね? エルウィー」
「うん。大丈夫大丈夫。ね? アルフィー」
そう言って、俺の腕に絡み付いてくる二人。
「ほら。二人もこう言ってるし」
「まったく。こっちが恥ずかしくなるな」
「ふふ。二人とも、これからもお兄ちゃんと仲良くね?」
『はーい!』
こうして、いつもと違う朝食時間は過ぎていく。
そして、学校へ向かうため、俺は早々に玄関から出ていく。
いつもと違うことと言えば、二人が両サイドに居るということだ。
いつもなら、俺が出てからしばらくして出ていく。
完全に避けられてる、なんてずっと思っていたよ。
「あっ」
「あっ」
そして、もうひとつ昨日とは違うことが。
家から出ると、丁度いいタイミングで幼馴染の空実が出てきた。昨日の今日だ。
こうして、前にすると自然と体が硬直してしまう。
「お、おはよう」
「う、うん。おはよ……」
あれ? なんだか空実も緊張しているのか? てっきり普段通りに接してくるとばかり。
まあ、さすがにあんなことがあったから普段通りには無理だよな。
「それじゃ、あたしは用事があるから先に行くね」
「え? あ、ああうん」
なにかを言いかけたような気がしたが、空実はそのまま小走りで先に行ってしまう。
「ふふ」
「ふふふ」
「どうかした? 二人とも」
突然笑い出す二人に、俺は問いかける。
「なんでもないよ、お兄ちゃん」
「うん。なんでもないない。ほら、早くしないと遅刻しちゃうよ」
が、なんでもないと返し、俺の手を引く二人だった。