表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/20

第九話 深まる謎

 結局、ジェンガは夏騎が崩してしまう。

 その後、再び順番を変えてやると、今度は一晴が崩してしまう。

 このまま続けるのも良いが、他に何か楽しいものがあった気がすると、五人で物置部屋を探した。

 再婚してから、二家族分のものが詰まっており、一晴もどこに何があるのか把握できていない。

 

「あっ、これバトミントンのラケットだね」

「それ、懐かしいな。昔、空実とよくやってたっけ」

「一晴もまだ持ってたんだ。そのラケット」

「当たり前だろ。大切な思い出なんだから」

「そ、そう」

「というか、空実も持っているんだね。さっき、もって言ってたし」

「そうだけど、何よ? なんか文句あるの? 夏騎」

「思い出は大切にしないとね」


 探していると、次々に思い出の品が出てくる。

 そのほとんどが、一晴と空実が関係しているものばかり。

 一品見つける度に、つい懐かしさで話し込んでしまい、物探しはなかなか進まないでいた。

 そんな様子を、エルウィーとアルフィーは面白くない様子で見詰めている。


「ん? これは」


 思い出話に花を咲かせていると、一晴は見覚えのないものを見つけ出す。

 それは、掌サイズの小さな箱。

 見た目は、指輪を入れているような箱に似ている。


「父さんの……じゃないよな。父さんのは、部屋にあるって言ってたし」

「それにこの箱。開けられないんじゃないかな?」


 よく見ると、溝のようなものもなくただただ四角い形をしたものだった。


「……これって」

「空実? なにかわかるのか?」

「え? あ、ううん。ごめん。もしかしてって思ったけど。よく見たら違うみたい」

「そっか」


 しばらく謎の箱を観察している一晴と夏騎を横に、空実は今一度観察する。

 二人には見えない魔なるオーラ。

 まさか、と空実は別の場所で物探しをしているエルウィーとアルフィーを見る。


「あ、これなんてどう? 野球のグローブ!」

「でも、肝心のボールがないよ? アルフィー」

「グローブがあったんだから、ボールも近くにあるよ。よく探そうエルウィー」

「あっ! 卓球のボールならあった!」

「それじゃあ、小さすぎるよ!」

「ごめんごめん。えーっと」


 こちらを気にしている様子はない。

 それとも、気づけていないだけ? 明らかに二人の所持品だと思われる小さな箱。

 退魔士として、こんないかにもなオーラを放つ危険物を放置するわけにはいかない。


「とりあえず、この箱は後回しだな」

「だね。次はそっちのほうを探してみようか」


 タイミングよく一晴と夏騎が箱から意識を外した。

 周囲を一度見渡し、誰も見ていないことを確認した空実は、箱をこっそりと回収しようと手を伸ばす。


「それに触っちゃだめだよ」

「怪我じゃすまないよ」

「……どういう意味かしら?」


 箱に触れる直前で、エルウィーとアルフィーがそれを制した。


「そのままの意味だよ。その箱に触ったら、お姉さんはただでは済まない」

「まあでも、わたし達的にはそれで良いんだけど」

「だったら止めなければよかったじゃない。敵であるあたしに対して随分とお優しいわね」

「えー? わたし達はいつでも優しいよ」

「そうそう。あっ、これは回収するね。普通の人には毒だから」


 そそくさと箱を回収した二人は、物探しを再開した。


(普通の人には毒?)


 エルウィーの言葉に、一人離れたところで、空実は思考する。

 だったら、一晴は?

 直接触れていた。だが、一晴に変わった様子はない。


「まさか、一晴にも何か秘密が?」


 そんなはずがない。小さい頃からいつも一緒に居た自分が気づかないはずがない。

 一晴は、普通の人間だ。だが、ただの人間にサキュバスが生命力ではなく純粋な愛を求めるなどありえるのか?


「一晴……」



・・・・・★



「いやぁ、今日は楽しかったよ。まあ、後半はほとんど物置部屋で物探しだったけど」

「あれはあれで楽しかっただろ? おかげで、懐かしいものがたくさん見つけることができた」


 楽しい時間というのは、なんでこうも早く過ぎていくのか。

 二人とも帰る時間となり、俺は玄関まで見送りに来ていた。

 当然、エルウィーちゃんとアルフィーちゃんもだ。


「今日は楽しかったよ、夏騎お兄さん」

「それはよかった。今度は、妹の秋波も連れてくるよ」

「楽しみにしてるね。空実お姉さんも、また来てね」

「ええ。まあ、あたしはすぐ隣だから、いつでも来れるけど」

「えへへ。それは楽しみだなぁ」

「今度は、どんな歓迎をしようかなぁ」


 最初から最後まで、この三人はバチバチしていたな。でも、楽しそうにしているようにも見えるし。

 やはり、女同士だからこその関係というやつなのだろうか?

 聞きたいけど、謎の威圧感で聞き出せない。


「じゃあ、お邪魔しました」

「またね」


 二人を見送った後、俺達は片付けに取りかかる。とはいえ、ほとんど散らかってはいないので、すぐ終わった。

 

「しょっと」


 その後、俺は風呂掃除へと移った。

 ……いかんいかん。

 つい思い出してしまった。昨日のことを。さすがに今日は大丈夫だよな。

 まさか、今日も、というか毎日? 


「あれ……?」


 洗剤をシャワーで流そうと、立ち上がった時だった。

 突然の目眩が襲う。

 なんとかその場に踏み留まったが。


「なんで目眩が……ははは。まさか昨日のことを思い出してなんて理由だったら、笑えるな」


 目眩はすぐ収まった。

 疲労、ということもありえるが、正直原因はわからない。

 結局、その後は何事もなく、とはいかず。

 昨日と同様に、義妹達に甘えてしまった。俺はなんて情けない男になってしまったんだ……。

 夏騎や空実にも、その一端を見せてしまったし。

 思い出しただけで、滅茶苦茶恥ずかしい……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] まさか……コトリバコ?((((;゜Д゜)))))))
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ