六、鯉こくを食べて恋に終わりを告げる
フォーエバーマイラブ(笑)。
それは盛夏の頃だったろうか、あまり覚えてはいない。
苦い過去の話。
数回デートを重ねるも一行に距離の縮まらない大助と芽衣ちゃんは、佐賀県武雄市に来ていた。
どことなく不機嫌そうな芽衣ちゃんに、大助も最近の体調不良が重なり、いつもに増して無口、車中は会話のない険悪な雰囲気だった。
大助は武雄神社の駐車場で車を停めようとするが、その時、ほぼ満車だった。
空いてるスペースが一か所でそこはめちゃくちゃ狭かった。
なんとか、車を停めるも互いに扉がギリギリ開くぐらいの狭さだった。
もう、ホントにギリギリだった。
彼は、
(何で危ないよとぐらい言ってくれないんだろう)
と、芽衣ちゃんに不信感を抱いた。
武雄神社にお参りをして、楠の大きな大木を見ても、大助の心は晴れなかった。
芽衣ちゃんもいつにも増してつまらなそうにしている。
互いに少しずつ積み重なった苛立ちや思いが、ここにきて溢れだしたのだろうか、再び、車を走らせる頃には、さらにどんより重たい空気が車内に充満していた。
大助はようやく口を開く。
「お昼、何、食べます」
「なにか食べたい物ないの?」
「私は別に、なんでも」
「私ばっかり決めさせるんですね」
「そういう訳じゃ」
「ふう」
芽衣ちゃんは溜息をつくと、スマホを取り出し、近くの食べ物屋を探しはじめる。
(自分が、地の物、食べたいって言ってたのに・・・)
大助は、ここに来て、どうでもいい気持ちになってしまった。
今度は、今度はちゃんと付き合って、自分を見てもらいたい、そんな思いがぼろぼろと崩れ去る。
「ありました。小城町の鯉料理が有名だそうです」
「そこでいいんですね」
「だって、なんでもいいんでしょ」
「・・・わかった」
大助は敬語を忘れ、ぶっきらぼうに言った。
小城町の閑静なところに、鯉の料理屋はあった。
見るからに高そうである。
(そんなことはどうでもいい。疲れた・・・時間を置きたい・・・そう言おう)
大助は決心した。
鯉こく料理は、気が滅入っていたせいもあってか、全然美味しくなかった。
芽衣ちゃんも不機嫌そうに食べている。
会話はしたが、互いに攻撃的なことしか言わなかったと思う。
「疲れた」
食事が終わると、大助はそう言い、
「ちょっと横になります」
座敷に寝転んだ。
こんな事をするのは付き合ってから一回もしてないことだ。
(どうにでもなれ)
大助はやけくそだった。
仰向けで天井を睨む。
「はぁ」
芽衣ちゃんの溜息が聞こえた。
帰りの車の中、大助は思ったより淀みなくそれを話しだす。
「少し、距離を置きましょう。このままだと、辛いだけだから」
「はい、わかりました」
芽衣ちゃんは短い言葉で返した。
お互い、我慢の限界だったのだろうか。
(終わった・・・)
大助は脱力感が込み上げる。
芽衣ちゃんも力が抜けたのだろう。
これからは、みう・・・お互い身体の力が抜けたのか、他愛の無い会話で盛りあがり、いつものように別れた。
そう・・・別れた。
冷却期間といいつつも、大助は終わったと感じていた。
互いに距離をとることになり、毎日を過ごす2人。
何事もなく一か月過ぎようとある日、大助から、芽衣ちゃんにラインを送った。
・・・会って、話がしたい。
2人はこれから先どうするかを話す為、居酒屋にて再会を果たす。
次回「居酒屋にてキラリ涙」・・・で、君は時の涙を見る・・・かもしれない(笑)。
なるべくしてなった感じですかね。