四、初デートは雲仙島原。大助、謎の更年期らしきものに悩まされる 後編
大助は疲れていた。
小浜ちゃんぽんの味・・・そんなの覚えてない。
大助はいつものように、無言でちゃんぽんを食べ終える。
「早食いなんですね」
芽衣ちゃんを見ると、まだ半分しか食べていない。
うちは父も母も早食いなんだよなんて言う余裕は大助にはない。
「そう」
大助はそう言うと、食べ終えたどんぶりを見る。
「山本さんって、あまり話さないんですね」
「・・・ほら、食事中は無言で食べなさいって言われてた口だから」
「ふーん。そうなんだ」
「・・・うん」
気まずい雰囲気の中、2人はお昼を済ませる。
車は時間の都合上、雲仙地獄めぐり仁田峠などの観光スポットをスルーし島原城へ。
カーステレオから東方神起が流れる中、芽衣ちゃんは肩を扉にもたれかけ、窓の外を見ている。
大助は話す言葉が見当たらない。
会話のチョイスは浮かんでは消し、浮かんでは消しの繰り返しだった。
島原城に着き、城をバックに記念撮影するが、大助がこの日の為に買ったカメラが動かない。
(・・・よりによって)
ブルーな気持ちで、電源をつけたり消したりしていたら、ようやく作動する。
城の関係者の方に撮影していただく。
大助は城の入り口にある甲冑が気になっていた。
「ご自由に着て記念撮影されてください」そう書かれてある。
甲冑着たい・・・着たい・・・でも、芽衣ちゃんになんと思われるだろう。
・・・誘惑が勝った。
「あのう」
「はい」
「甲冑、着てみたいんですけど」
「・・・いいですよ」
「やった!」
大助はこの日、個人的には唯一の楽しい時間となった甲冑に身を包み、玩具の刀をドヤ顔で身構えた。
「・・・・・・」
虚ろな目(そう見えた)の芽衣ちゃんに、
「あのう」
「・・・はい」
「写真撮ってくれます」
「わかりました」
すると、城の前で観光アピールしている侍姿の女性の方から、
「写真、撮りましょうか」
と言われる。
「お願いします」
2人はファインダーに収まる。
「お似合いですよ」
大助はその言葉にあたたかさを感じ、まんざらでもない笑顔、芽衣ちゃんも微笑んでいた。
武家屋敷を散策した後、芝桜公園が見頃ということで行ってみる。
公園に敷き詰められたピンクの芝桜が美しい。
やがて夕方を迎えようとしている。
少しでも距離を縮めたい大助はここでしっかり会話をしようと思っていた。
今となっては、よく覚えていないが、少し会話が弾んだように思う。
散策し終えた頃には、夕闇が包みはじめていた。
ふたたび平港からフェリーに乗り長洲へ。
大助は長いデートだったので、芽衣ちゃんをこのまま送ろうと思った。
「これから、どうします」
彼はとりあえず聞いてみる。
「ご飯(夕)、食べましょ」
「・・・・・・はい」
大助は疲れがピークに来ていた。
緊張と自称更年期のせいで、心では帰りたい一心だった。
「わかりました。では、何を食べます」
キリッ、心で泣いて、顔は見栄を張る(笑)。
「じゃ、ちょっと待ってくださいね」
芽衣ちゃんはスマホを取り出し、夕食を検索しはじめる。
(ファミレスでもいいでしょうが~)
大助は、顔は笑いつつ、心は号泣していた(笑)。
この辺りではめずらく、もんじゃ焼きの店で夕食をとった。
ひたすら疲労していて会話は覚えていない(笑)。
芽衣ちゃんと、待ち合わせ場所で別れ、家に着いたのは20時頃だった。
次に会う、約束は取り付けた。
だけど、大助の心は浮かない。
ちゃんと付き合うならちゃんと言わないといけないな、次で言おう。
彼は心に固く決めた。
島原雲仙日帰りの旅で、思いのほか疲労した大助、先行きに不安を感じつつも、芽衣ちゃんに付き合うなら、先に言っておかないことを思い出す。
次のデートは二週間後、行き先は熊本通潤橋そして、宮崎高千穂の日帰り旅・・・やれんのか大助、男を見せろ!次回「早くも旅の終わり?男悶える」お楽しみに。
諦めないことが大事。