二、二人お茶する~弾まない会話~
いや~、思い出すと、ちょっぴり胸が苦しい(笑)。
相談所にて。
大助は芽衣ちゃんが座るテーブルの対面に腰掛ける。
おっちゃんが、いそいそとお茶を運んでくる。
2人は無言でお茶をすする。
相談所の閉所時間が間もなくとあって、やたらと追い出そうと急かされる。
「じゃ、後は二人でゆっくり話して」
2人は止む無なく外へ出た。
なんとなく気まずい空気が流れていた。
ここはイニシアティブをとらねば、
「喫茶店でも行きましょうか」
大助は声をかける。
「はい、どちらの喫茶店で」
「車で来られたんですよね。じゃ、私の後に着いてきてください」
大助は傷だらけの黒デミオを発進させる。
ちゃんとついて来てくれるかな、そんな不安を抱えながら、国道沿いにある喫茶店へと入り車を停める。
車から降りると、大助は外へ出て、芽衣ちゃんの駐車の案内をした。
ぶーんききぃーっ!男勝りなドラテク(ドライビング・テクニック)で、大助の案内も見ずに停車する。
「・・・行きましょうか」
「はい」
大助はとりあえず、彼女をエスコートをして店内に入る。
コーヒーを注文する。
「ごめんなさい、用事があって遅くなりました。待ちましたよね」
大助は遅刻の非礼を詫びだ。
「ええ・・・でも、ちょっと、勉強したかったので図書館にて時間を潰しました」
正直に答え、さりげなく棘さす芽衣ちゃん。
「勉強?」
「ええ、昇進の試験があるんです」
「はぁ」
準社員契約の大助は心にちくり傷みを感じる。
「凄いですね」
「それほどでも・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・はは」
大助はコーヒーを啜った。
「用事はなんだったんですか」
突然聞きだす芽衣ちゃん。
(ぎくり!)
「ちょっと、野暮用でして」
「野暮用?」
「はは、そう」
大助はごくりとコーヒーを飲む。
(これは、聞いとかないと・・・)
大助は気まずく躊躇しそうになる気持ちを抑え、
「また、会ってくれますか」
と、尋ねた。
「ええ、私でよければ」
「良かった~」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
会話は一向に弾まない。
「・・・ライン」
芽衣ちゃんは言う。
「は」
大助はなんの事?と首を傾げる。
「ライン、交換しましょう」
「・・・はい」
2人は文明の利器に頼ることにした。
これが後々まで、絆を繋ぐものとなるとは、その時の2人は知らない。
「今度、デートしましょう」
「はい・・・でも、私、たいがいの所は行ってるから」
(それ言う)
大助は、芽衣ちゃんのあまりの正直さに面食らう。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・はは」
大助は残りのコーヒーを飲んだ。
これは前途多難、あまり期待しない方がいいなと思った。
勿論、芽衣ちゃんもそう思ったことだろう。
その日、会話の弾まないまま、2人は別れた。
とりあえず、次の会う約束をして。
次回「初デートは雲仙島原。大助、謎の更年期らしきものに悩まされる」お楽しみに。
さぁ、次回も超微妙です。