16歳
「おい、王妃!今日こそーー」
勢いよく寝室の扉を開けながら放った王様の言葉は遮られた。
「最近思うんですけど、陛下って貧相ですよね」
という王妃の心ない言葉によって。
「なっ!?」
王妃は『我の強い重臣たちを上手に操縦する方法。その3』を閉じながら訂正した。
「すみません、貧相は言い過ぎました。体つきが頼りないですよね」
「言い換えただけで意味変わってないだろ!」
密かに気にしていたことを指摘され、ショックを受けながら怒る王様。
「ふふっ、それがわかるようになってくれて嬉しいです」
珍しく自分に向けられた王妃の柔らかな笑顔に、王様は少し頰を赤らめた。
「いや、これくらいは…ってそうじゃない!貧相だと!?」
勉強の成果か、王様はノリツッコミも期せずして習得していた。
「ええ、勉学に励んでいらっしゃるのは結構なのですが、もう少し体も鍛えられませんと。体力のない王様なんて色々不安です」
困ったように頰に手を当てて、痛いところをつく王妃。
王の仕事は激務なので、体力は重要なのだ。
「ぐっ…。あ、ああそうだ。それなら王妃が付き合ってくれればいいじゃないか」
それでもめげずに、さも名案だと言わんばかりに王妃に提案する王様。
「わたくしが?」
不思議そうに、最近色香が漂い始めた首を傾げる王妃。
「そうだ。子づくりはそれなりに体力を使うと言うからな!」
自信満々に言い放った王様の言葉に、しかし返ってきたのは深いため息だった。
「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
心の底からの、長い長いため息だった。
「だからため息だけ返すのはやめろ!」
ムキになって噛み付く王様。
「陛下は相変わらずおバカさんですね」
王様を見る王妃の目には、憐れみがこもっていた。
「何でだ!」
理由がわからない王様は素直にたずねた。
「成人男性の騎士達との打ち合いと同じ体力を、寝台で消費するおつもりですか?私相手に?」
言われたことを理解し、口ごもる王様。
「それは……………」
「無理でしょう?わかったら寝ましょう。明日からは騎士との訓練もしてくださいね」
優しく諭すように、しかしきっぱりと王妃は告げた。
王妃はする気が全然なさそうだし、貧相と言われて体を見られるのが急に恥ずかしくなった王様は、渋々頷いて寝台に横になった。
「…………………わかった。おやすみ」
「おやすみなさい。(くすっ)」
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