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しようとする王様と防ぐ王妃【完結】  作者: オリハルコン陸
本編

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2/18

11歳



「おい!今日こそするぞ!」


「何をですか?」


王様の声に、王妃はベッドの上で読んでいた本から顔を上げた。

ちなみに本のタイトルは『上手な不正の見抜き方 〜お茶会の有効活用と発見後の処理について〜』。前王妃の手書きの指南書だ。


「くっ……言わせるな!子づくりだ!子づくり!」


まだ幼いため言葉にするのは恥ずかしいのか、顔を赤くする少年。


「はー。相変わらず陛下はバカですね」


そんな少年を、少女はパタンと本を閉じながら呆れた表情で見た。


「ため息をつくな!聞いたぞ!その……この前……初めて……」


そこで少年は口ごもった。


「ああ、月のものですか?」


「さらっと言うな!言い淀んだこっちがバカみたいじゃないか!」


何でもないことのように言われて、少年は噛みついた。


「みたいって言うか、陛下はバカですけどね」


「だからバカと言うなとーーすぅ、はぁ。……まあ、いい。それより体の準備ができたのなら今度こそーー」


「本当におバカさんですね、陛下は」


そしてまた少女にさえぎられた。


「バカって言うな!さんを付ければいいってもんじゃないぞ!何がだ!」


怒りながらも律儀に問い返す少年に、少女は答えた。


「今はまだ、一番最初の準備が整っただけなんですよ。今産んだら結構な確率で未熟児や死産になりますよ。障害が残っても火種の元ですし」


「…………え?」


思ってもいなかった言葉に、少年はショックを受け目を見開いた。


「それに今産んだら、出産時に私が死ぬ確率も高いです」


そこにさらに衝撃的な事実を知らされて、少年は固まった。


「………………………………え?」


「成長しきっていない体に、出産は負担が大きいですから」


そんなこと誰も教えてくれなかった。

みんな早く世継ぎを作れとしか。


「………え?……そう……なの……か?」


なんとか口を動かす。


「はい」


少女は、怒りもせずに淡々と頷いた。

そんな大事なことを知らずに、ただ家臣達に言われるままに行為を成そうとしていたのかと、少年は青ざめ俯いた。

そしてしばらくしてから、少女に小さな声で謝罪した。


「……………悪かった」


それに対し、少女はいつもの調子で返す。


「いえ、陛下がおバカさんなのは承知していますから」


あまりにいつも通りに自分にバカと言う少女に、少年は反射的に言い返そうとして顔を上げた。


「だからバカって言うなとーー!」


しかし、あろうことか少女はすでに横になり目を閉じていた。


すぅ、すぅ。


静かに寝息を立てる少女の穏やかな寝顔を、少年は呆然と見つめる。そしてゆっくりと息を吐き出した。


「……はぁ。まったく本当におまえは…………おやすみ」


あっさり許され気が抜けた少年は、少女の隣にどさりと寝転ぶとすぐに眠りに落ちた。



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