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しようとする王様と防ぐ王妃【完結】  作者: オリハルコン陸
おまけ

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16/18

王様の成人パーティー (王様vs舅)

学園を卒業した王様が成人した。


国王の成人ということで、今日は王宮で盛大なパーティーが開かれている。国内外から、多くの貴族や使者が招待された。

だが、純粋に王様を祝いに来た人間は少ない。大半は、重要人物の集うこの機会を利用するのが主目的だ。

でもそれも仕方のないこと。王侯貴族のパーティーなどそんなものだ。



今、王様と話しているのは騎士団長だ。彼は、王様を祝う為に来た人間の一人だ。王様の剣の師匠だからか、随分と親しげに見える。国防の要たる彼が王様側だと見て取れるのは、かなり心強いものだ。

摂政はその光景を横目に見て、ふんと鼻を鳴らした。


剣の腕は知らんが、王は数年前に比べて随分身体つきが逞しくなったな。良いことだ。

ひ弱な王など話にならんからな!

…王が自分から鍛えて欲しいと言いに行ったらしいが…まあ、そこは評価してやらんこともない。


だがどうせ、賢く美しく完璧な我が娘の入れ知恵があったに決まっている!おかげで騎士団長とも近しくなれて良かったじゃないか。

あの真面目な騎士団長が王家への忠誠心を失くすとも思えないが、それでも個人的に慕われて悪いことはない。それも含めて娘に感謝しろ!


そんな雑念まみれにチラチラと見ていたが、王様が騎士団長と話し終えると近づいた。

丁寧に一礼し、手に持ったグラスを掲げる。


「陛下、本日はおめでとうございます」


「ああ、ありがとう」


王の風格というのだろうか。

最近そんなものを漂わせ始めた王が憎々しーー

いや違う。うちの娘の婿ならば、これくらいは当然だ。こんなことを考えていたと知られたら、また妻に頭を叩かれてしまう。…いや、妻に叩かれるのはやぶさかではないが…。


摂政がそんなどうでもいい事を考えていると、王様がため息を吐いた。


「アレは、どうしたものかな?」


王様が視線をやった先にいたのは、隣国の大使だった。今我が国の貴族たちにちょっかいをかけてる真っ最中の。


一応友好国ということになっている国に「是非ともお祝いを述べたい」と言われれば、出席を断る訳にもいかない。

そんな訳で、その男は王様を祝うパーティーに堂々と出席して、本人を蹴落とす悪巧みに励んでいた。


「あの程度、どうということもありますまい」


王様がしっかりしていれば、靡く貴族もいないのだから。

摂政が肩をすくめると、王様は再度ため息を吐いた。


「そう言えるおまえが羨ましいよ」


…なんだ。随分弱気だな。

ちょっとイライラする摂政。


「自信がおありでないので?」


ニヤリと笑ってみせる。

しかし目はギラリと光って王様を射抜いた。


この程度で蹴つまずくなど許さんぞ。


何しろ王様は、摂政の娘の婿なのだ。頼りない男に娘を預けておくなど冗談ではない。


「そうではないのだが…」


口ごもり、眉を下げる王様。

歓談時間中の二人きりの会話とはいえ、随分と情けない姿を見せるものだ。

摂政は、荒く鼻息を吐いた。


「ふん。その手のことに詳しい者を、後で手配致しましょう。しっかり勉強されると宜しい」


そう言って一礼し、サッとその場を辞する。


そういうのが得意なのは…トニー卿とルドルフ卿か。ルドルフ卿は、確かさっき見かけたな。


後日呼び出して…などまだるっこしい事はしない。折角この場にいるのだから、話を通してしまうつもりだった。


早速教師の手配に向かう摂政を、王様は嬉しそうな顔で見送る。

それに気づいた摂政が、途端に渋い顔になった。


やめろ。これも全部愛する娘の為だ。おまえの為じゃない!感謝の視線なんか向けるんじゃない!


プリプリしながら視線を走らせ、見つけたルドルフ卿の元に真っ直ぐ向かう。その視界の端に、笑顔で別の貴族と話し始めた王様が映った。

さっきより、ずっといい表情だ。

そのことにほっと息を吐く。

そしてほっとしてしまった自分に気づいて、摂政は胸の中でゴニョゴニョと言い訳した。


………別に王をもう一人の息子のようになど思ってない!一応。一応義理の息子ではあるが。

最近成長が目覚ましいとか、将来が楽しみだとか全然思ってない!


そして気をとりなおすと、少しぼんやりとしていたルドルフ卿ににこやかに話しかけた。


「こんばんは。良い夜ですな」


彼はやや反王寄りだが、この機会に取り込んでしまおう。


そんな事を思いつつ。

王様が成人したので、そろそろこういった回りくどい手を増やしていく必要があるのだ。

あまり摂政が前に出過ぎると、王様が侮られてしまうから。


全く。成人したとはいえ、まだまだ手のかかる


王様の為に動く摂政の口元は、楽しそうに緩んでいた。


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