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しようとする王様と防ぐ王妃【完結】  作者: オリハルコン陸
おまけ

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15/18

おやすみのキス

ゴタゴタ真っ最中の頃の二人。

ギシリと微かに寝台が軋む音に王妃は目を覚ました。マットレスが沈み、身体が少し傾く。王様が寝台に上がったのだろう。

「起こしてしまったか」とすまなそうに言われたくなくて、王妃は眠ったふりを続ける。


王様は今日も遅くまで執務が終わらなかったのだろう。最近はずっと、王妃が眠ってから帰ってきている。

心配になって、こっそり毛布の端を握る王妃。


もっと私が手伝えることがあれば良いのだけれど…。


目を閉じてじっとしている王妃の髪に、何かが触れた。

そのままそっと撫でられる。

優しい手つき。

王様の手だ。

うっとりしながら、寝たふりを続ける王妃。


王様と王妃は、昼間にこういう事をしたことはまだない。

私的な場で王様が近づくと、つい恥ずかしくなった王妃が一歩引いてしまうのと、王様もそんな王妃に追撃できないのが原因だ。


今は…今も王妃はドキドキしているけれど、部屋は暗いから顔色なんて見えないし、寝たふりをしなければいけないから…


そう言い訳して、王様の手の感触を大人しく受け入れる。


このゴタゴタが、早く終わればいいのに…そうしたらもっと陛下と一緒にいられて、もっと陛下と……


想像に王妃の顔が赤くなる。


陛下のあの腕に抱きしめられたら、どんな感じなのだろう…。


そんなことを考えていたら、不意に右手を取られた。動揺しながらも息を殺して寝たふりを続ける王妃。

そのままスッと持ち上げられ、何か温かいものが手の甲に触れた。

そして


ちゅっ


と、明らかに唇の触れた音がした。

王妃の顔が、一気に燃えるように熱くなる。


今、部屋が暗くて本当によかった。


そう思うくらいに顔が真っ赤だ。

心臓が大きな音を立て跳ねている。王様に聞こえてしまうのではないかと、思ってしまうくらいに。

けれど王様は


「おやすみ」


穏やかにそう囁くと、王妃の手を握ったまま静かに身体を横たえた。相当疲れていたのだろう。すぐに寝息が聞こえてくる。

握った手の指は、絡められたまま。


………おやすみなさい


王妃は心の中で返事をして、絡めた指先にほんの少しだけ力を込めた。



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