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THE Ⅵ 六腕の兵士  作者: ティターニト・レドナード
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第8話 対トロール戦

やがて、ティターニア達とカーデンロイドは小高い丘の上で止まった。丘の下には小さな集落があるのが見えた。

「あそこに見えるのが、レゴナ村です。」

ハッチを開け、外に出たシグドナルは双眼鏡を覗き込んだ。

「どうですか?何か見えましたか?」

遅れて外に出たリリーグが聞いた。

「あぁ。トロールがわんさか居るのが見えるな…ざっと数えて10匹ぐらいかな…」

「で、どうするんですか。」

「そうだな…ティターニア、他のケンタウロスは何処に居るんだ?」

「村の中央にある牢屋に閉じ込められています。」

「了解…リリーグ中尉、紙とペンを。」

「あ、はい!」

リリーグから紙とペンを受け取ったシグドナルは村の地形を事細かに書き記していった。

「『村の中央に閉じ込められている』ということは、村の中で戦闘を行うと捕まっているケンタウロスが巻き込まれる。やはり、村の外に奴等をおびき出すしかないな…」

「でも、どうやっておびき出しますか?」

「そこが問題なんだよな…ビリー。何かいい案はないか?」

「無茶言うなよ!俺は爆薬専門だ。爆弾でふっ飛ばしても良いなら話は別だけどな。」

荷台で爆弾をいじっているビリーの姿を見て、シグドナルは頭を抱えた。

「…ウィグは何か良い考えあるか?」

「…今考えてる。あと一時間待って…」

「そんなには待てないだろ!全く、どうしたらいいんだ…」

シグドナルは、トロールたちをおびき出す良いアイディアを必死に考えた。

「あ、あの…」

その時、医者のルドアが声をかけた。

「私に、良い考えがあるのですが…」

「なんだって!本当かい!?」

「はい。済みませんが少しお耳を拝借。」

ルドアはシグドナルの耳元で何かを囁いた。

「確かに、その作戦ならトロール達をおびき出せるかもしれない。でも、そんな危険な作戦は…」

シグドナルが作戦を否定しようとしたその時、ルドアがシグドナルの口にそっと人差し指を当てた。

「大丈夫です。私、こう見えても足の速さには自身がありますから。それに、ティターニアさん達を救うにはこれしかないです。」

「…そうだな。よし!その作戦で行こう。」

ルドアの作戦はこうだった。まず、ルドアが一人で村に行き、トロール達を誘い出す。実は、トロール達は美人の女性が大好きで、見つけると何処までも追いかける。それを逆手に取り、ルドアがトロール達をシグドナル達が作った落とし穴まで誘導し、穴に落ちたところを一斉射撃する戦法だ。そしていよいよ、作戦が開始された。

「では、行ってまいりますね。」

ルドアは爽やかな笑みを浮かべると村に向かった。シグドナル達は予め作っておいた落とし穴の側に身を潜めていた。シグドナルとリリーグは穴の正面に。ビリーとウィグは穴の右側に。ティターニア達は穴の左側に待機していた。ティカトニアは危ないので荷台に隠れている…はずだったが、疲れていたのか眠ってしまった。

「しかし、ルドアには驚かされてばかりだよ。」

「はい?」

煙草を吸いながらシグドナルはボソッと呟いた。

「あんな可愛いい顔して、時々とんでもない発想を繰り出すんだから。知ってるか?彼女は帝国一の医者だったのに、とある理由で医学界を追放されたらしいんだ。」

その話を聞いたリリーグは急な吐き気に襲われた。昨夜のルドアの話を思い出してしまったからだ。

「あれ?その感じはもしかして、本人から聞かされた?」

「…バッチリ全部聞かされましたよ。オェッ!」

「なんか…すまない…」

現場に気まずい雰囲気が漂い始めたその時だった。

「おい少佐!ルドアが戻ってきたぞ!」

ビリーの叫びに慌てて村に続く道の方を見ると、ルドアがその細い体からは想像できない様なスピードで戻ってくるのが見えた。そしてあっという間にシグドナルの元に帰ってきた。

「ただいまです。」

あんなスピードで走ってきたのに、息切れせずに爽やかな笑顔でいられるルドアに、シグドナルは少し、恐怖を感じた。

「あ、あぁ、お帰り。それでどうだった?」

「バッチリです。あと1分ぐらいで来ると思いますよ。」

その時、遠くの方から大きな足音が沢山聞こえてきた。

「あ、来たみたいです。」

「よくやった。さぁ、ルドアも隠れて。」

ルドアが隠れたと同時に、沢山のトロール達が姿を現した。トロール達はギャーギャーわめきながら猛スピードでこちらに向かってきた。

「そうだ…そのまま、そのまま!」

そして、落とし穴の上の地面を踏んだ瞬間、地面に吸い込まれるように消えていった。

「やったぞ!上手くいった!」

「やりましたね!」

シグドナル達が喜びの声を上げる。

「総員!銃を構えたまま穴の中に落ちたトロールを確認せよ!ただし警戒は怠らないように!いいな!」

「「「「了解!」」」」

みんな銃を構えたまま、落とし穴に近づいた。穴の中を覗くと、穴の底に仕掛けていたネットにトロール達が絡まっていた。

「…やりましたね。少佐…」

「ウィグの設計した落とし穴のおかげだ。ありがとう。」

「…別に大した事はしてない…」

「さて…こんだけ好き勝手暴れたんだ。死ぬ覚悟はできているんだろうな?」

シグドナルは一匹のトロールの額に銃を構えた。その時、トロール達が悲鳴にも似た金切り声で鳴き始めた。

「何だ?私に許しを求めているのか?」

だが、それは違った。その瞬間。近くの茂みや木の上から大量のトロール達がシグドナル達が襲いかかって来た。

「クソ!新手か!」

シグドナルが攻撃指示を出そうとしたその時だった。

「待って下さい!ここは私に任せてください!」

「ティターニア!駄目だ!無茶すぎる!」

「仲間が助けを求めていたのに、私は殆ど何もできなかった…このままでは村の者に合わせる顔がありません!」

「ティターニア…」

「だからここは、私達がやります!皆さん行きますよ!」

ティターニアを戦闘にケンタウロス達はトロールの大群に突っ込んでいった。

だが、十数人のケンタウロスに対してトロールの数は数十匹。圧倒的な力の差にケンタウロス達は次々と倒れていく。

「もう見てられない!」

ついに、シグドナルがしびれを切らした。

「ウィグとルドアは怪我人の手当て、残りの兵士は私と一緒にトロールを一匹残らず殲滅せよ!」

「「「「「了解!」」」」」

シグドナルの合図で一斉にトロールに飛びかかる。

「これでもくらいなさい!」

リリーグは両手の義手に隠されたアーミーナイフを展開し、次々とトロールの喉元を切り裂いていった。

「トロール達め!俺のスペシャルブレンドをくらいやがれ!」

ビリーはお手製の手榴弾でトロール達を粉々に吹き飛ばしていく。

「出血が酷いですね。直ぐに手当てをしないと…ウィグ、包帯を。」

「…了解した…」

ルドアとウィグは怪我をしたケンタウロス達の手当てを行っていた。

「さっさっとくたばれ!この汚らしい怪物が!」

シグドナルは六本の腕に握られた拳銃で、次々と襲い来るトロールの眉間をぶち抜いていく。戦闘狂とも恐れられたシグドナル・ビルゲナウ。トロールを狩っていくその顔は恐ろしいほどに狂気に満ち溢れていた。その時、一匹のトロールがシグドナルの背後から襲いかかって来た。シグドナルは咄嗟に銃を構えたが、トロールは高く飛び上がった。シグドナルはトロールの強靭な爪で引っ掻かれる事を覚悟した。しかし、トロールはシグドナルに襲いかからずにその上を飛び越えた。シグドナルはトロールが何故飛び越えたのか一瞬分からなかったが、すぐにその理由が分かると焦った。トロールが着地しようとしているそこには手当てをしているルドアとウィグの姿があった。

「ルドア!ウィグ!危ないの!」

シグドナルは咄嗟に銃を構えたが間に合わない。ルドア達が振り返ると、トロールが自分達に襲いかかろうとしていた。そして、ルドアが悲鳴をあげた、その時だった。ルドアとトロールの間に何かが上から落ちてきた。そして落ちてきたそれはそのままトロールの頭をぶん殴った。ぶん殴られたトロールは頭が粉々に吹き飛んだ。

「フタりともダイジじょうブ?」

二人の前に現れてトロールをぶん殴ったのは荷台で寝ていたはずのティカトニアだった。

「バンバンうるサイからおきたらフたりガオソわれそうニナッテいたから。ケガはなイ?」

「怪我は大丈夫です。ティカトニアさんありがとうございます。」

「…ありがとう…」

二人にお礼を言われたティカトニアは恥ずかしそうにしていた。

「こコはワタシにまかセテ!」

そう言うと、ティカトニアは走り出し、高く飛び上がった。そして、トロール達のお腹を次々とぶん殴っていった。殴られたトロールは、お腹に綺麗な丸い穴が空き、次々とその場に倒れていった。ティカトニアのパンチは鉄の塊でさえ粉々に粉砕できるほどの力がある。そんなものをくらったら、流石のトロールでもひとたまりもない。

「オねぇサま!だいじョウブ?」

「ありがとうティカトニア!おかげで助かった!」

「ワタしはどうスレばイい?」

「私と一緒に奴等を一匹残らず狩り殺してくれ!」

「わかッタわ!」

「いくぞ!」

シグドナルとティカトニアはトロールの群れに突っ込んでいった。シグドナルは銃でトロール達を撃ち殺し、ティカトニアは襲いかかってくるトロール達を次々とぶん殴っていく。

「いい感じだ!このまま…!?」

突然シグドナルの銃から弾が出なくなった。

「どうシたノオねぇサま!」

「クソ、弾切れだ!ティカトニア弾を入れる時間を稼いでくれ!」

「ワカったわ!」

シグドナルが弾を入れる間、ティカトニアは襲い来るトロール達を必死に倒した。だが、ティカトニア一人だけでは無理がある。倒し損なった一匹のトロールが装填中のシグドナルに襲いかかる。

「アブない!オねぇサま!」

トロールがシグドナルに鋭い爪を振りおろそうとしたその時だった。一本の槍がトロールの体を貫いた。

「ティターニア!?」

トロールを槍で串刺しにしたのはティターニアだった。全身傷だらけで、額からは血を流していたが、槍で突き刺したトロールを軽やかに空中に放り投げた。

「ここは私に任せてください!やられっぱなしじゃあ、私のプライドが許せません!」

そう言うと、ティターニアはトロール達を槍で次々と突き刺していった。そのスキに、シグドナルは弾を入れ終えた。

「シグドナルさん!私に乗ってください!私に乗ったまま、トロール達を撃てば、弾切れを起こしても襲われずに弾を入れられます!」

「でも、その怪我じゃあ…」

「私は大丈夫です!トロールに勝つにはこの方法しかありません!」

「わかった。じゃあ失礼するよ。」

シグドナルがティターニアの背中に跨ると颯爽と走り出す。ティターニアの背中に跨ったまま、シグドナルは揺れる背中の上で次々と正確にトロール達を撃ち抜いていく。二人のコンビネーションで、大量にいたトロール達はあっという間に全滅した。怪我をしたケンタウロス達も、ルドアとウィグの治療のおかげで一命をとりとめた。

「よし!殲滅完了だ!」

そう言いながらシグドナルはティターニアの背中から降りた。

「さぁ!捕まっているケンタウロス達を助けに行くぞ!」

その後、シグドナル達によって捕まっていたケンタウロス達は開放され、村は救われたのだった。

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