第4話 腐れ縁
その頃、シグドナル・ビルゲナウは集合場所から少し離れた丘で、煙草を吸っていた。
「そろそろ、全員集まったかな…」
そう呟いたシグドナルは煙草の火を消し、集合場所へ向かおうとした。その時、突然後ろから声がした。
「あんたは昔も今も、やる事は全然変わってないわねぇ…」
シグドナルが振り返るとそこにはハエの羽を生やした女が空中に浮かんでいた。女の周りには悪臭が漂い、そばに生えていた草は一瞬にして枯れ落ちた。
「…ベルゼブブ。随分と久しぶりじゃないか。」
女の名前は『ベルゼブブ』。ハエの王であり、七つの大罪の一つ『暴食』を司る悪魔である。シグドナルとは腐れ縁的な存在だ。
「6年前と同じくまた私の邪魔をしようというのか?」
シグドナルの言葉にベルゼブブは不敵な笑みを浮かべた。
「さぁーて、どうかな?少なくとも私は今のところ邪魔をするつもりはないけど…お姉様達が邪魔をするかもしれないよ?」
「その時はまた地獄に帰るまでぼこぼこに痛めつけてやるよ。」
「おー怖い怖い!じゃあ期待しないで待ってるよ。」
そう言ってあざ笑うと、ベルゼブブは悪臭を残して何処かに飛んでいってしまった…
「クソバエ女が…」
シグドナルはボソッと呟くと丘を降りて行った。
丘を降りたシグドナルは集合場所に向かって歩いていく。途中、川にかかった橋を渡っていると、川底から何かがあがって来るのが見えた。シグドナルはとっさに銃を構えた。やがて、川底から上がってきた何かがその姿を顕にした。それは青い髪に青い鱗を使った衣服を纏い、海蛇の尾をはやした美しい女性だった。
「シグドナル・ビルゲナウ。久しぶりの再開だというのにいきなり銃を向けるとは何様のつもりだ。」
「レヴィアタン…」
シグドナルは向けていた銃を降ろしたが、相変わらず目つきは鋭いままだった。
レヴィアタンは海蛇の姿をした悪魔で、七つの大罪の一つ『嫉妬』を司る悪魔である。
「我がいない内に、いい身分になったものだな?少佐など、随分と偉そうになったもんだ。」
レヴィアタンは自分の尾をシグドナルに巻きつけながら、嫌味をぶつける。流石、『嫉妬』を司る悪魔だけなことはある…だが、シグドナルは表情を一切変えずにレヴィアタンの事をジッと睨んだ。
「…あんたも私の邪魔をしようっていうのかい?言っておくが、今度は前みたいに片腕だけじゃ済まないぞ。」
シグドナルが言い返すと、レヴィアタンはシグドナルを尾で放り投げた。
「たかが腕が六本あるだけの人間が何を言うか!言っておくがなぁ!6年前のあれは運が悪かっただけだ!覚えておけビルゲナウ!もし今度、我と戦う事になった時は魂すら残らないように粉々にしてやる!」
そう言い放つと、レヴィアタンは水の中へと消えていった…
「イタタ…ったく。ベルゼブブに続き、レヴィアタンまで来るとはな。やっぱ、奴等と戦う事は避けられないのか…」
シグドナルは落ちた帽子をかぶり直すと、再び集合場所へと急いだ。シグドナルと彼女たちの間に何がったのか…それが明らかになるのは、もう少しあとのことであった…
如何でしたか?
今回は少し短めになってしまいました…
次回はもう少し長く書く予定なのでお楽しみに!