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THE Ⅵ 六腕の兵士  作者: ティターニト・レドナード
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第3話 集合

次の日の夜。リリーグはシグドナルにミーティング場所として指示されたキャンプ地のハズレにある小川の辺りで少佐達が来るのを待っていた。だが、かれこれ約束の時間を15分はすぎても、少佐達が現れる気配は無かった。

「少佐遅いなぁ…」

リリーグはどこまでも続く平原を見てポツリと呟いた。夜空には満天の星が輝き、リリーグを照らしている。

「よぉ。」

リリーグが星に見惚れていると突然後ろから声をかけられた。振り向くと昨日の資料で見た金髪の女性が立っていた。

「お前が、シグドナルの言ってたリリーグ・レナード中尉か?」

「はいそうです。貴方は確か…」

「ビリー・サグフォッヂ。ビリーでいいさ。隣いいか?」

リリーグが静かに頷くと、ビリーはリリーグの横で寝そべり、煙草を吸い出した。

「シグドナルからお前の話は聞いてる。お前、フィフォーリ戦でのたった一人の生き残りなんだってな…」

ビリーの言葉に、リリーグは再びシグドナルに初めて会った時の記憶を思い出す。

「…お前は、どうして祖国を裏切った?どうして敵の軍に入ったんだ?」

「実は…どうして祖国を裏切って、敵国の兵士になろうと思ったのかは自分でもよくわからないんです…もちろん、祖国の政治のやり方に不満を抱いていたのは確かですが、それは私が祖国を裏切った理由にはならないと思うんです…でも、一つだけ確かなのは、『少佐と出会ってから私の人生が変わった。』ってことです。」

「…そうか。」

「そういえば、ビリーさんも私と同じ、元はファウドラ国の兵士なんですよね?」

「いいや。俺は元々、ファウドラ国の兵器工場で働かされていた奴隷だった。あの兵器工場は、まさに地獄と呼ぶのに相応しい場所だったさ。一日20時間労働は当たり前。睡眠はたったの2時間だけ。食事は残飯…終わりの無い地獄の日々だったさ。けどある日、その工場が帝国軍に攻め込まれてな。俺達は捕虜として、今度はビクトリア帝国の兵器工場で働かされる事になった。俺はまた地獄のような日々が始まると覚悟したさ。けどよ、その兵器工場は俺達が今まで働いていた兵器工場とは全く違かった。食事はちゃんとした美味しい物が支給されるし、睡眠時間はしっかりと確保されている。おまけに休日になれば工場外への外出は許される。物心ついた頃から兵器を作る事しかなかった俺は初めて、自由ってものを味わった。それから俺は外の世界や自由に関心を抱くようになった。そんな時、少佐のやつが俺のとこにやって来てこう言ったんだ。『世界を見て回りたいか?』ってな。もちろん俺は『見たい!』と答えた。そしたら、今回の作戦に参加してくれさえすれば、自由を保証すると言われてな。少し怪しいやつだと思ったが、まんまと話に乗せられちまったってわけだ。っと、すまねぇ。つい長く語っちまった。つまんなかったよな?」

ビリーが横を向くと、リリーグが涙をボロボロ流していた。

「おいおい!どうしたんだよ!?」

「ごめんなさい…私、こういう話に、弱くって…」

「あーもう!ほらこれでふけ!」

ビリーは、ポケットからハンカチを取り出すとリリーグに渡した。

「ありがとうございます…」

そんな二人のやり取りを後ろから無言で見ていた者がいた。

「…何してる…」

リリーグを慰めていたビリーの後ろから小さな声が聞こえた。振り向くと、白髪に変わった眼鏡をかけた女性が立っていた。

「ようビリー。遅かったじゃねぇか。」

「…新しい武器の調節に時間がかかった。」

白髪の女性はロボットの様な感情のこもっていない声で言った。

「…それで、貴方はどうして泣いていた…」

「ごめんなさい。ビリーさんの話でつい。貴方は確か…」

「…ウィグドナード・ルグフォラ・レ・ルドナード・スコフォディア。ウィグと呼んでほしい…」

「今回の作戦では色々お世話になります。」

リリーグはウィグに敬礼をした。しかし…

「…そう。」

ウィグは一言つぶやくと側にある木の下に腰掛け、本を読み始めた。

「あれ?もしかして私、何か気に触ることしちゃいました?」

リリーグが心配していると、ビリーが言った。

「いや。ウィグは人見知りで、人と話すのが苦手だからな。あれでも彼女なりに仲良くなろうとはしたんだと思うぞ。」

「ビリーさんは、ウィグさんの事を知ってるのですか?」

「あぁ。帝国の首都に近い兵器工場で働いてた時に彼女に出会ってな。それから、時々手紙でやり取りする仲になったんだよ。あいつ、人見知りの癖に人一倍寂しがり屋だからな…」

「そうだったのですか…」

「だからさ、時々あいつに声をかけてあげてくれないか?感情を表に出すことは滅多にないから、話しかけてもずっと無表情だと思うが、心の中では凄く喜ぶからさ。」

「はい!」

「あのー…」

その時、二人は再び後ろから声をかけられた。

振り返るとそこには赤い髪にツリ目の女性が見た目とは似つかないようなオドオドした感じで立っていた。

「シグドナルさんに呼ばれて来たんですけど、ここであってますか?」

「集合場所はここであってますよ。」

「はぁ〜。よかった…あ、自己紹介がまだでした。私はルドア・フォルカと申します。」

「初めましてルドア。私はリリーグ・レナードです。」

「俺はビリー・サグフォッヂ。で、あっちで本を読んでるのがウィグ。」

ウィグは一瞬顔を上げ、小さく頭を縦に振ると、また読書の続きに戻った。

「ルドアさんは帝国一のお医者さんなんですよね?」

「そんな。私なんてまだまだですよ。おっちょこちょいで、よくドジ踏んだりしてますから…」

帝国一のお医者さんとして、それはどうなんだと二人は思った。

「…帝国一の医者がどうしてこの作戦に参加するのか、教えてほしい…」

いつの間にか、本を閉じルドアの方を見ていたウィグがボソッと言った。

「えーっと…実は、医学界から追い出されてしまいまして…」

「「…はぁ!?」」

ルドアの意外な答えにリリーグとビリーは声をあげる程驚いた。一方のウィグは表情何一つ変えずにルドアの事を見ていた。

「医学界を追放って、帝国一の医者がか!?」

「…はい。」

「どうして、そうなったんですか!?」

「実は…」

ルドアから語られた追放の理由は、とても恐ろしい内容だった。あまりの恐ろしさにリリーグは気絶し、ビリーは涙を流し、ウィグは…表情一つ変えずに話を聞いていた…

「そういった理由で、医学界から追放されて、行く宛がないところにシグドナルさんからのお誘いを受けて、今回の作戦に参加する事になりました。ってみなさんどうしたのですか!?」

ルドアの話が終わった時、三人は地面に倒れ込みながらこう思った…

「「「コイツ…一番ヤバい奴だ…」」」

如何でしたでしょうか?

次回はいよいよ、作戦の全貌が明らかになる…かも?

お楽しみに!

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