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THE Ⅵ 六腕の兵士  作者: ティターニト・レドナード
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2話 参加

「あの時の少佐は怖っかったですけど、今思えばとってもかっこよかったです!」

「…そうかい。あの時はバカやってただけさ。今も変わらないが…」

テントの中では、リリーグがシグドナルに出会った時の様子を熱烈に話していた。それを聞いていたシグドナルは少し呆れた様子だった。

今、シグドナルとリリーグは良き理解者同士だ。フィフォーリの戦いの後、リリーグは帝国軍学校に入学した。学校に通っている間はシグドナルが定期的に様子を見に来てくれたり、わからない場所を教えてくれたりしたので、リリーグはあっという間に学校一の成績優秀者になった。そして無事に軍学校を卒業し、一年前にシグドナルと同じ隊に配属された。それ以来シグドナルとリリーグは一緒に戦い一緒に飯を食う仲になった。ただ、リリーグはシグドナルに少しベッタリしすぎなので、そこがシグドナルにとってはちょっとした悩みの種になっている。そんなリリーグだが、フィフォーリの戦いで両手に大怪我を負った。戦場で再び戦う事はもう無理かと思われたが、シグドナルが手術を行い、彼女の両手を治療した上に、改造と強化をした義手を付けたのだ。しかし、リリーグは時々改造した義手を壊すので、その度にシグドナルに治してもらっていた。

「でも、どうして少佐は魔術兵器が嫌いなのですか?戦場で使っているのはその拳銃?ですよね?」

リリーグの言葉にシグドナルの手の動きが止まった。シグドナルは普段は魔法兵器を使っているが、乱戦時や味方が押されている時には拳銃を使うようにしていた。しかし、フィフォーリの戦いでかなりのお灸を据えられたので、敵兵士が死なないように手や足を打つようにしていた。

拳銃やライフル、機関銃やミサイルが兵器として主流だったのはもう1000年以上前の事だ。昔、今の時代、人を殺さない魔術兵器が主流になった上に、拳銃やライフルは中々手に入らない品物なので、そういった物を知らない人がいても何ら不思議ではないし、シグドナルのように拳銃やライフルの実物を持っている人は中々に珍しかった。

「さぁ…なんでだろうな。私は元々、銃というより戦争自体が好きじゃないんだがな…いつの頃からか、銃をぶっ放すのが楽しく感じるように覚えちまったんだ…」

「そうだったのですね…」

「だが、私は軍人。銃をぶっ放すのが当たり前さ。」

そう言うと、シグドナルは再び義手の修理を始めた。

「よし…これでいいはずだ。ちょっと動かしてみてくれ。」

シグドナルにそう言われ、リリーグは手のひらを開いたり閉じたりしてみた。

「すごい!前よりもずっとなめらかに動く!」

「よし。神経回路の接続は問題ないみたいだな。じゃあこんどはアーミーナイフを出してみてくれ。」

「分かリました。」

リリーグが手に力を込めると、手の甲が中心で割れ、中からサバイバルナイフが飛び出した。

「わぁー!カッコいいです!」

「気に入ったかい?」

「もちろんです!ありがとうございます少佐!」

「それなら良かった。」

「早速他の隊員達に見せてきますね!」

「あぁ!待ってくれリリーグ中尉!」

シグドナルはテントから出ていこうとしたリリーグを慌てた様子で引き止めた。

「どうしましたか?シグドナル少佐。」

「実は君に大事な話があるんだ。」

「大事な話ですか?」

「あぁそうだ。ここからの話は他言無用で頼む。たとえ、同じ隊の仲間でもな…実は近々、敵軍の本拠地があるゲルビナードを攻撃する作戦が開始される。『ゲルビナード作戦』だ。」

「ゲルビナードって…敵国のど真ん中にある都市じゃないですか!?」

「そうだ。そこを攻撃するとても危険な作戦なんだが、私としては、君にこの作戦に参加してもらいたいと思っているのだが…」

「…少佐直々の指名でしたら参加するか考えさせてもらいます。ですが、他の隊員や物資はどうするのですか?」

「今回の作戦は帝国軍の上層部の指示ではなく、私の独断でやるものだ。」

「そうなのですか!?」

「あぁそうだ。この作戦を知っているのは、私が信頼している極一部の人間だけなんだ。だから物資も隊員も、全て私の方で秘密裏に揃えた。」

そう言うとシグドナルは、六本の腕で棚を漁ると、そこから一冊のファイルを取り出し、それをリリーグに渡した。リリーグがファイルを開くと、そこには4人の兵士の記録が書かれていた。

「そいつらが、今度の作戦に参加する兵士だ。その金髪の兵士は『ビリー・サグフォッヂ』。爆薬、銃火器のスペシャリストだ。元々はファウドラ国の兵士で、捕虜として兵器工場で働いていた所を逃してやった。」

シグドナルは金髪の兵士の写真を指差しながら言った。次にシグドナルはメガネをかけた白髪で無表情の女性の写真を指差した。

「そいつは『ウィグドナード・ルグフォラ・レ・ルドナード・スコフォディア』だ。」

「今なんて言いました?」

「ウィグドナード・ルグフォラ・レ・ルドナード・スコフォディア。長いからみんな『ウィグ』と呼んでる。魔術兵器研究開発部のエリートだ。メカニックは彼女の専門だ。だが気を付けろよ?怒らせると、このメンバーの中でも一番怖いやつだ。その次の赤い髪につり目の女が『ルドア・フォルカ』。帝国一の医者だ。彼女に治せない病気は無いと言われてるほどだ。そして最後に『ティカトニア・コルバ』。彼女は力仕事や体力を使う仕事専門だ。あとは物資の管理とかも任せてある。」

『ティカトニア』の写真を見たリリーグは自分の目を疑った。

「少佐!この子まさか!?」

写真に写っているティカトニアの肌は緑で、額からは立派な角が伸びていた。

「あぁそうだ。ティカトニアはオーガの娘だ。」

「待って下さい!魔物を戦闘に参加させるつもりですか!?」

この世界には人間程ではないが、エルフやゴブリンといった魔物と呼ばれる存在が暮らしている。今から約1000年前、突如時空の裂け目から現れた魔物達によって多くの人間が虐殺され、文明は衰退し、人類は滅亡ギリギリのところまで追い込まれた。だが、一部の人間と魔物の活躍によって、人間と魔物の間に平和条約を結ぶ事に成功した。その平和条約の中に「魔族と人間は互いの争い事に参加しない」という条約を結んでいた。シグドナルがオーガの娘を参加させるという事はその平和条約を破ることになる。

「あぁ。そうだが?」

だがシグドナルはまるで「そんなことはとっくに知っている」というかのように清々しく返事をした。

「そうだが?じゃないですよ!魔物を戦争に巻き込むなんてバレたら軍法会議!下手したら死刑ですよ!?」

「そんなの分かってるさ。」

「じゃあどうして…」

「彼女が志願して来たからさ。理由は…今は教えられないが、どうしても参加したいと言ってきたな。こちらとしても、力に自信がある奴が欲しかったから許可した。だいたい、上の人間達に内緒で作戦を実行するだけでもとっくに軍法会議ものだぞ?」

「確かに…そうですけど…」

「それでリリーグ中尉。もう一度聞くが、君はこんな危険な作戦でも、私の作戦に参加するかい?」

リリーグは少し考えてから言った。

「…参加します!」

「分かった。出発は明後日の朝四時だが、明日の夜に出発前のミーティングを行う。場所は追々伝える。以上だ。じゃあ私は葉巻を吸ってくる。」

シグドナルは葉巻を加え、テントの外に出ていった。リリーグは期待と不安を胸にその姿を見送った。

今回のお話は如何でしたか?

次回はまたまた新しいキャラクターが登場します。

お楽しみに!

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