表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE Ⅵ 六腕の兵士  作者: ティターニト・レドナード
1/16

プロローグ ファントム戦

時は1910年。ファブローム大陸にある3カ国「ファウドラ国」「ストラフ共和国」そして「ビクトリア帝国」を主軸とした「3カ国対戦」が幕を開けた。各国は独自の技術で作り上げた「魔術兵器」を駆使し、領地の拡大を狙ったその戦いで、それぞれの国が戦果を上げていた。しかし1916年、ビクトリア帝国の連敗が続き、帝国の領地は後退の一途をたどった…

同年6月6日青空国とビクトリア帝国の国境付近にある「ファントムの丘」この丘の周辺には草原が広がり、そよ風が吹き抜ける心地よい場所なのだが、この日だけは違った…

丘のまわりの草原には傷だらけの無数の死体が転がっており、悲惨な光景だった。本来、魔術兵器とは人を無効化させる魔力を込めた「魔弾」というものを使用するので、魔術兵器で人が死ぬことはもちろん、外傷を負うことは絶対にあり得ないのである。やがて丘の上に黒い雨雲が出始めた頃、ファウドラ国の兵士およそ100人が、ファントムの丘にやってきた。兵士達は丘の上まで来るとそこで足を止めた。あの大量の死体を目にしたからだ。彼等はこれほどまでに恐ろしく、そして残酷な光景を見たことがなかった。兵士の中にはあまりにも残酷すぎる光景だったからか、それとも死体からの悪臭のせいか、嘔吐してしまう者もいた。やがて、雨雲が空を覆い尽くし雨が降り始めた。その時だった!

「ヒハハハハハハハハ!」

雷音と共に女の笑い声が響き渡ったその瞬間、一人の兵士の頭が、――という音を立てて吹き飛んだ。突然の出来事に兵士達が混乱する中、女の笑い声と共に、兵士達の頭が一つ、また一つと吹き飛んでいく。

「逃げろ!みんな逃げろ!」

恐怖に耐えられなかった一人の兵士が叫んだ。それを皮切りに、他の兵士達も我先にと逃げ出す。だがその時、兵士達の行く手を塞ぐようにして、笑い声の主がついに姿を現した。その姿を見た兵士達の顔は真っ青になった。声の主は美しい女兵士だった。だがその体からは六本の腕が伸び、とても人間とは思えないような姿をしていた。少女の6本の腕にはそれぞれ銃が握られ、その顔は狂気に満ちた笑みを浮かべていた。

「ば…化け物」

一人の兵士が声を漏らした瞬間、その兵士の胸元を鉛の弾が貫いた。

「化け物とは失礼だな。私はこう見えてもれっきとした人間なんだよ。」

狂気に満ちた笑顔のまま、少女は言った。その顔を見た兵士達は恐怖に震え、その場から逃げ出した。その姿を見た少女は舌なめずりをすると、逃げ惑う兵士達に飛びかかった。少女の握った銃が火を吹くたびに兵士達は次々と倒れていく。

「ヒハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハハ!」

それを見た少女は只々笑いながら、銃の引き金を引くだけだった。その光景はまるで小さい子供がアリを殺すようだった。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

少女の狂気に満ちた笑い声は更に大きくなる。兵士達は抗うことすらできずに、次々と死んでいった。やがて雨が止む頃には100人近くいた兵士は全滅していた。死体の海と化した草原の真ん中で、少女はただ一人祈りを捧げていた。

「主よ。この哀れな罪人をお許しください…」

祈りを捧げた少女は、首からぶら下げたペンダントを強く握りしめた。

「こちら司令室!シグドナル少佐!応答願います!」

突然、少女の耳付いた小型無線機に通信が入った。

「あー。こちらシグドナル。どうぞ。」

「ご無事でしたか少佐!通信が途絶えたので心配しましたよ!」

「すまない。通信機の不具合いらしい…」

「今援軍が向かっていますから、もう少し待っていてください!」

あーその事なんだが、援軍は必要ないかもしれんな…」

「必要ないって…一体どういう事ですか少佐!?」

「…私一人で全滅させちまったんだ。詳しいことは帰還してから報告する。オーバー。」

少女は半ば強引に無線を切った。

「…報告書書くの面倒くさいな…」

少女は空に向かって、ポツリとつぶやいた。彼女の名前は「シグドナル・ビルゲナウ」。人は彼女を「六腕の兵士」と呼ぶ。

このような作品を読んでいただきありがとうございます。不定期投稿ですが、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ