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71話 捨てる神あれば拾う神あり

更新空いてしまってすみません。


「サーガさん!」

「………」


 サヤに話しかけられたので何も答えないことにする。


「サーガさん?」

「悪いがお前と話をするつもりは無い。言ったろう?お前と戻るつもりは0だ、と」


 あの変態がどれだけ俺とこいつをくっつかせようとしていたとしても0だ。

 永遠の0。

 希望はない。


「………」

「分かるか?俺にはもうビクティ達がいる。お前がどれだけ俺のために尽くそうが俺がお前を認めることはこの先ない。死んでやり直せ」

「それってどういう………」

「自分で考えろ。言ったよな?自分の足で立て、と」


 改めてサヤの顔を見る。


「これが俺からの最後の言葉だと思え。俺はもうお前と過剰に関わるつもりはない。無惨に殺されない程度に守ってやるがそれだけだと思え。理解してるよな?お前は実行犯じゃないだけで相当煙たがられてることを」


 こいつが幼少期を共に過ごした奴でなければ俺はとうに見捨てていただろう。

 それくらいには一応情というものがあった。


「はい………」

「………」


 何も答えずに庭に出る。


「お、お待ちしておりましたわ!サーガ様!」


 今日はシャーロット達と出かける約束をしていた。

 メンバーはシャーロット、エルザ、リディアの3人。


「し、師匠待っていたぞ!」

「2人ともすごいカチコチだねー」


 カチコチになって俺に挨拶してきた二人を見て笑うリディア。

 彼女だけが普通な感じだった。


「さぁ、行くか」


 今日は4人でクレープでも食べに行こうという約束をしていた。


「おーー!!!」


 元気よく返事をしてくれたリディア。

 それから


「お、おー?」

「おーですわ!」


 恥ずかしそうにしている二人を連れて俺は街に向かうことにした。



 sideメリオルダス



 一方その頃メリオルダスはその影のような姿で王城に出向いていた。


「あぁ………実に可哀想なものだな。あの性格の悪い男にここまでコテンパンにされて可哀想なものだ」


 男が向かったのは王城の地下だった。

 薄暗くジメジメとした地下牢にその男はいた。


 そしてその視線が捉えているのは空いた独房などではなく


「あ、あなたは」


 勇者クロイツ。

 不死身の化け物になったそいつに向けられていた。


「おはよう」


 眠そうな目でそう勇者に声をかけるメリオルダス。


「私はメリオルダスという者だ」


 そう名乗り律儀に礼をする男。


「メリオルダス………聞いたことがある。魔王軍幻の四天王か」

「もうやめたがね」


 そう言いながら男は鉄格子をすり抜ける。

 彼に実体がないからこそ出来る芸当だった。


「ス、すり抜けた?!」


 しかしこの男の正体を知らない者は何が起きたのかを理解できない。


「君は奪う神がいれば与える神がいることを知ってるかね?」


 そう声をかけながら己の右手をクロイツの額に伸ばした男。


「私から君に贈り物をしよう。憎くないかね?あの盗賊ルーヴィスが」

「ルーヴィス………?」

「サーガと名乗っていたかね。あいつのことだよ」

「サーガは憎い。俺から全てを奪っていった」


 人間簡単には変われないということを勇者クロイツは体現していた。

 やはり真の意味で人が根本から変わることはないのかもしれない。


「復讐を果たしたくはないかね?」

「復讐………」


 自分の体を見つめるクロイツ。


「望むのなら私が力を与えよう」

「よ、よせ!そんなことしたらあの男が飛んでくる!」


 全てを観察され手の内を読まれていたようなクロイツだからこそ、その危険を理解していた。

 サーガは何らかの手段で自分を観測していることを何となく理解していたのだ。

 しかしその言葉に微笑むメリオルダス。


「安心したまえよ。あいつは今デート中だ。そしてあいつがここに私がいることを知ることは出来ない。実体のない相手の気配を感じることは出来ない。あいつが目をこちらに向けない限りは私が今ここにいることを知ることはないのだ」


 そう言ってメリオルダスがそのウザったらしい口調で言葉を続ける。


「どうだね?私と手を組まないか?勇者クロイツよ」

「どうやって」

「私が力を与える。不死身となった君であれば奴と渡り合えるのではないかね?」


 そんなわけが無い。

 しかしメリオルダスがこう言ったのはこの男の心を折らないためだった。

 自分の計画に必要な駒を壊すような真似はそうそうしないのがこの男。


「力が欲しい」

「交渉成立といったところだな。私はこれから君の前から消える。しばらくすると力が湧いてくるはずだ。湧いたのならそれでこの鎖を断ち切り牢獄から出ていけ。大丈夫だ魔力的な力ではないためこの対魔力の鎖も切れるはずだよ」


 そしてメリオルダスは勇者の耳元で囁く。


「………というわけだ、後は今言ったことを実行してくれ。あいつの悔しがる顔を見たいのでな」

「分かった」

「決して彼の周りに手を出そうとするな?」

「分かった」


 伝えることを伝えたのかこの場から消え失せたメリオルダス。

 それからしばらくしたら勇者の足元から黒い炎が立ち上がった。


「うおっ!力が漲る!」


 そう言って彼は自身を縛る鎖を破壊した。

 そして鉄格子までも破壊する。


「これが俺の力………」


 今破壊したものを見て自分の力を確認したクロイツ。

 そしてニヤっと笑った。



「何をしている」


 良からぬ気配を感じてデートを切り上げて王城の地下牢にやってきた。

 思った通り勇者が何かをしていた。


「なっ!サーガ?!」

「良からぬ気配を感じたので来てみたが」


 そう言いファイア剣を作り出すと


「がっ!」

「おとなしく死んでおけ」


 それで刺し殺した。

 どうせ殺しても蘇るので殺すのに抵抗はない。

 血の海に沈む勇者の死体を見てから頬に着いた返り血を拭き取ると


「新しい牢屋に繋いでおかなくては。後は、見張りなども必要か」


 そう言いながら俺は王室に向かった。

 




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― 新着の感想 ―
[一言] 性格が悪いだけになってるなぁ(苦笑) まぁ、読者がサヤを救わないを選択したからこういう展開になったんだろうけど、それを選択した読者がどれだけ今も読んでるんだろうか(苦笑) 物語が破綻してない…
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