70話 とりあえずの休戦
特上級の変態がサヤの願いを叶える発言をしてそれなりの時間が経過した。
奴は今も尚石を投げ続けているのだろう。
その影響と思われるものが各地で見られているのがその証拠だ。
例えば魔物がやたら増えたり、川が氾濫していたり、細かく書けば色々とあるのだが、そんなところだ。
あの変態が石を投げれば秩序は乱れ天が荒れ狂うということを身に染みて理解した。
そこで、だ。
「王よ」
俺は1人王城に来ていた。
「おう、サーガか。魔王退治の方はどうなっている?」
完全に勇者から俺に魔王退治の話は移っている。
「今回はそれも含めて話がある」
「話、だと?珍しいな」
全て打ち明けることにしよう。
それだけ今回の1件は俺一人で対応出来るとは思えないからだ。
この二重生活を何処まで続けられるかの自信もなかった。
「俺は四天王ルーヴィス」
「………は?」
王の間が静まり返る。
「四天王………ルーヴィス………?」
王が聞き返してくる。四天王ルーヴィス。
はるか昔に人間を蹂躙した存在だ。
「しかしそれは前世の話」
これまでの事を掻い摘んで話す。
「なら貴様は今まで俺を騙し通してきたというのか?」
「俺自身としては騙した訳では無い。それに俺は今は人間だ」
「何が目的だ?」
「魔王と和解して欲しい」
単刀直入に告げた。
「魔王と和解だと?!簡単に言うなお前!」
怒りを露わにして立ち上がるシド王。
その時
「ガァァァァァァァァ!!!!!!!」
小型のドラゴンが王室に現れた。
「ド、ドラゴン?!!!!」
「ひ、ひぃぃぃあ!!!!」
臣下が驚き、警備が剣を抜く中
「アルマゲスト」
俺は魔法を使いドラゴンを無に返した。
「なっ………無属性最強魔法のアルマゲスト?」
誰かが呟いた。
「アルマゲストを使えるのか………?」
口々にそんなことを言い始める奴ら。
それを無視して俺は話を続けることにする。
「今のを見ただろ?」
「見たが」
「あれは人間軍、魔王軍どちらがやった事でもなく、言わば第3の勢力がやったことだ」
それが占星術士。
あの変態は下らないことで本気になっているらしく第2の魔王となりつつある。
というよりあいつが最早魔王だった。
「仮にそいつが実在したとして何故さっきの話に繋がる?」
そう言うのを理解していたからこそ
俺はテレポ魔法を使った。
すると魔王達がこの場に現れた。
しかも全員無傷の四天王を引連れて、だ。
いや、今は三天王の方が正しいか。
「なっ!魔王!しかも倒したはずの四天王まで?!」
「ひははあの程度で俺を倒せたと思ってたのかよ」
ハンニバルが笑いながらそう口にした。
「そうよ〜ん。あの程度で私をやれたと思わないことね☆」
最後の一人は無言を貫くらしい。
そんな濃い面々を見てから魔王が1歩踏み出した。
「話はルーヴィスから聞いておろう?」
「聞いたが。正気なのか?」
「正気じゃ。今は魔王軍人間軍と言っている場合ではないのじゃ」
魔王サタンの言う通りだ。
俺たちは厄介すぎる変態を見逃し続けてしまった。
「私は今ここでお前たちと休戦協定を結びたいと思う」
ザワつく王室内。
「休戦協定だと?!」
「魔王軍と手を組むのか?!」
「し、しかし、どうなさるおつもりなのですか!王よ!」
臣下の1人が王に言葉を求めた。
「第3の勢力についてもう少し情報をくれないか?今の段階では正直何ともな」
確かに今のドラゴンだけでは説得力に欠けるかもしれないな。
「メリオルダス。占星術士じゃ、かつて私の配下にあったのじゃが、変態的な望みを抱きその変態地味た力で変態じみたことをしている究極の変態じゃ」
「あいつか………」
何か知っているのか俯いた王様。
「分かった。あいつが相手ならば手を組もう」
そしてあっさりと手を組むことにしたらしいシド王。
「決定、じゃな。では早速本題に入るとしよう。これからどう動くのかについてじゃ」
「分かった。会議室はこちらだ、ついてきてくれ。団長、それから警備隊は俺の護衛を頼む」
そう言って出ていく2人。
俺はお呼びじゃないらしいしとりあえず家に帰るか。
※
家に帰ろうかと思ったが先に地下牢に向かうことにした。
「よう、勇者」
「さ、サーガさん………」
俺の事をついにさん付けで呼ぶようになったか勇者。
「調子はどうだ?」
「ううぅ………最悪ですよ。どうして俺だけ………」
「お前にやられた奴は全員そう思ってることだろうよ」
そう言って廊下の壁に背を預ける。
あの変態の言葉を聞いて少しはやり過ぎたか?とも思ったがこの様子を見る限り別にそうでは無いな。
「奴ら俺が死ねないことをいい事に何度も何度も囮にさせるんですよ!」
「そりゃいいな」
適材適所というやつだろう。
俺だってこんなにも同情できないやつが不老不死ならば何度だって囮にするだろう。
「うぐぅ………俺は後何度死ねばいいんですか?」
「さぁな」
鼻で笑って答える。
「それは俺じゃなくお前が好き勝手してきた連中に聞いた方がいいだろうな」
俺からの贈り物はこれで全てだ。
「も、もう許してください!」
「だからそれを許すのも俺じゃない」
何度も言わせないでほしいな。
お前を許すのは俺ではなく人類だ。
「サーガさんなんでもできるでしょ?!もう解放してくださいよ」
「都合のいいやつだなお前」
「都合のいい?」
「今まで好き勝手やってきて自分がやられる番になるとあれは嫌、これは嫌だと都合のいいやつだなと思ってな」
まぁそのお陰で俺もお前に対して精一杯のことをやれたと言うのはあるが。
「ではな。勇者、これからも頑張ってくれ。誰もお前を望まない世界でな。サヤは改心した。もうお前を擁護することは無いだろう」
だからと言って俺もあいつを擁護するつもりも許すつもりもないが。
だからあの変態の考えていることについては何が何でも阻止しなくてならない。
いくら身を清められようがあいつと俺が結ばれるなんて話は悪いがなしだ。
あの変態の思い通りにはさせない。
「そ、そんな………」
「ではな。永遠に苦しめよ」
そう言って俺は薄汚い地下牢を後にすることにした。
この後も予定がある。
何時も読んでくださってありがとうございます。
追放物が書きたくなったので新連載を始めました。
よろしければそちらも読んでいただけると嬉しいです。
幼馴染の勇者パーティを追放された聖者は実は最強です~俺だけのログボガチャチートでざまぁしながら成り上がります~
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