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62話 どん底の女

 翌日。

 朝起きるとサヤがリビングの床で寝ていた。


 相当疲れたのか自分にかかった卵などは取り切れていない。


「わっ………ルゼル様!ごめんなさい卵が滑って割れちゃいました」


 ルゼルかと思ったら今度はシーラがサヤに卵を投げていた。

 滑ったとかじゃない。明らかに投げてる。


「あっ!私はナイフが滑りました!」


 そう言ってルゼルがサヤにナイフを投げつけた。


「いたっ………」


 卵では起きなかったサヤがナイフによって出来た傷で起きてくる。


「………」


 自分の傷を見つめる彼女。


「だ、大丈夫ですか?虫けら様」


 そんな中シーラがサヤに駆け寄った。

 ぼんやりとした目でシーラを見つめる。


「傷にはこれがオススメですよ」


 そう言ってシーラが傷口に香辛料を塗りたくる。


「痛い………それ………香辛料じゃ………」

「え?傷には香辛料って言わないんですか?私達はいつもこれを塗ってますよ」

「!!!!!」


 痛みを頑張って我慢するサヤ。

 しかし相当痛いのか傷口は徐々に赤くなっていく。


「ご主人様、装備の点検しといたにゃん」


 次に部屋に入ってきたのはリトルだった。

 彼女はビクティが使っている杖を持ってきてそれを振り回してサヤに当てる。


「つっ………」

「あ、ごめんいたんだ。虫けら。ダニくらい不快な存在で視界に入れたくないから気付かなかったごめん」


 そう言いながら俺に杖を渡してくるリトル。

 彼女は去り際に今度は足をわざとぶつけて部屋を出ていった。


 俺は………流石にこいつに手を出すつもりは無いが………見る限りビクティ達は相当イラついているらしいな。

 多少はこいつの苦しむ姿を見たかったから引き取ったが思ったより効果的だったか。


 死なない程度には好きにやらせてやるか。

 結局こいつは最後まで謝らなかった訳だしな。


「………」


 言葉も漏らさずに彼女は部屋の隅に移動する。

 卵もナイフも飛んでこないであろう位置。


 しかしそこは扉のすぐ横だった。


「おっはよー!!!☆」


 ガーン!

 勢いよく扉が開いてサヤの頭に当たる。


 そこから現れたのはビクティだった。


「ちょっと………ビクティさん………」


 何か言おうとしたサヤだがビクティは無視して俺の方に来た。


「ねぇ、今日デート行こうよー♡」


 そう言ってサヤに目をやる彼女。


「丁度いい警備員もいるしさー♡」

「そうだな」

「やったし!久しぶりに皆で出かけちゃおうよ♡じゃ、私準備してくるから!」


 そう言って俺から離れて部屋を出ていった彼女。

 俺も準備するか。



 とは言ったが俺は1人で別行動していた。

 王に呼び出しを受けた、とか適当なことを言って出かけた時に途中で別れたのだ。


 そうして千里眼でサヤの様子を見る。


「………」


 無言で泣きながら地面に落ちた卵の殻を集めている。


「ひくっ………ひくっ………ぐすっ………」


 嗚咽を漏らして今度は床を拭き始める。


「………やらないと………もっと酷い目に………昨日は虫を食べさせられました………今日はどうなるんでしょう………もう………嫌です………」


 そう言いながら今度はモップでゴシゴシと床を擦り始める。

 それから移動しようとしていたがバケツに足をひっかけてこける。


「いだっ!」


 モップの柄で顔を打って赤くなる頬。


「ひぐっ………えぐっ………もう………嫌です………で、でも………」


 そう言って彼女は机の上に目を移した。

 そこにあるのは紙だ。


 ルゼル達が食事を作るための食材を買いに行けと命令を出しているからそれの確認をしているのだ。


「買出しにも行かなきゃです………」


 そう言って憂鬱な顔をしながらも立ち上がると外に向かう彼女。

 扉に手をかけて外に出ていく。


 貴族街を抜けて小綺麗な露店が並ぶ通りにやってきたサヤ。

 そこで色々な食材に目をやるその時に声が聞こえた。


「ママ?あれ賢者様?」

「あんな戦犯見ちゃだめ、もっと面白いものを見ましょう」


 そう言って親子が別の方角に向かっていくのも見えた。


「………」


 拳を握り締めるサヤ。

 しかし、それでも意を決して露店の店主に話しかけた。


「あ、あの………林檎を下さい」


 強面の親父がサヤの顔を覗き込む。

 顔を伏せるサヤ。


「あんた賢者だよな?」

「………」


 反応を示さない。


「お前みたいな戦犯に売るもんなんざねぇんだよ。野垂れ死ねよ。もうすぐで戦争になるところだったんだぞ?お前があの勇者に媚びて調子に乗らせてたからな」

「………そこを何とか………」

「林檎1つで10000ゼニーだ。帰んな。それにあんた臭いんだよ客が寄り付かなくなる」

「………」


 そのあともサヤは色々な露店を回ったが何も買わせては貰えなかった。


「買い物すら満足に出来ないなんて………今日はどんなことをされるんでしょう………」


 そんなことを言いながら次に彼女が向かったのは貧民街の方だった。

 何も買えないからたどり着いたのだ。


 俺の活躍のおかげでそこそこマシになった貧民街だがそれでもまだ悪いところは悪い。


「へへっ姉ちゃん可愛いな」


 そこに男が近付いてきた。


「ひっ………」


 見るからにガラの悪い男。


「あんたあれだろ?賢者って奴だろ?あんたその格好見るに………大分苦労してるみたいだな、そんなあんたでもできる仕事があんだが」


 そう言って手を伸ばす男。


「や、やめてください」


 それを弾くサヤ。


「あ?」


 男はさらに詰寄る。

 そこで千里眼を切り上げて俺はサヤの近くにテレポした。

 

 瞬間男の首に手刀を入れ眠らせる。


「た、助けてください………」


 後ろで小さく呟くサヤの声が聞こえた。

 背後を振り返ると胸の前で何かを両手に抱えてぎゅっと目を閉じているところだった。


「大丈夫か」


 俺が声をかけると恐る恐る目を見開いた彼女。


「さ、サーガさん………どうしてここに?」


 そう言って泣いて抱きついてくる。


「ひぐっ………ぐすっ………ごめんなさい………もう………辛いです………助けてください………ごめんなさい………生きててごめんなさい………もう許してください………ごめんなさい………ごめんなさいごめんなさいごめんなさい………助けて………ください」


 無言で彼女の手を取ると歩き出す。


次分岐です。


先に救済パターンになります。


救済パターンとそうでないパターンでは、幼馴染の過去設定がかなり変わってくるので読んでいただけると嬉しいです。(物語を書いている段階からどちらのパターンにするか決まらなかったのでどっちつかずの中途半端な行動が多かったのは本当に申し訳なく思っています)


今までは救済しないパターンで考えていましたが、次を読めば印象が変わるかもしれないので読者さんの反応を見ながらもう一度考えさせてもらえれば、と考えています。


印象が変わらないくらいヘイトを稼いでしまっていたならばこのままいきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 虐められっ子が、力をもって復讐する図。しかも、ネチネチと腐りきった感情のままで。屑にかかわったせいで屑が感染した?
[良い点] 面白いですが・・・ [気になる点] 連れて行っちゃダメな気がする。この後、さんざんイジメ返すのを延々書くのは一般受けはどうだろう。少なくとも、ムナクソ展開が続くなら私は読まないと思う。展開…
[一言] さすがにやりすぎてる気がするので救済があると助かります
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