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57話 目的地まで来た

 王様も実に優しい、というやつだ。

 あれだけやらかしたクロイツにまだ一応チャンスをくれてやろうとしているのだから。


 ギルドの前で作戦について話すクロイツを見てそう思う。

 だがこれが最後だ。


 お前がこうしていられるのもこれで最後。

 最後は思う存分に舞うがいい、そして散れ。


 四天王は恐らくこれで最後だ。

 空き時間に魔法でハンニバル達と話してみたが4人目は胡散臭い奴で滅多に姿を見せないらしい。

 そして魔王への忠誠心もほとんどない。


 スノウも大概だがそれ以上に、というより四天王就任時と後何回か顔を合わせたっきりで普段は何処かにいて姿を見せないそうだ。

 それについては女魔王のサタンも訝しんでいるらしいが魔王軍は超実力主義。


 実力があれば四天王になれるしその座を下ろされることは無い。

 人格破綻者の俺が四天王でいられた理由はこれだ。

 腕だけはあったから。


 警戒の必要はあるだろうが、向こうから来ないというのならそこまで気にする必要もない。


「すまなかったなみんな」


 最後にクロイツが前で全員に謝っていた。


「俺は勇者という超特権階級のジョブでいたせいで思い上がっていた部分もあった。だが………もう心は入れ替えた。これからは力を貸して欲しい」


 そう言ってギルドの中にいる全員を見たが誰もいい顔をしない。

 その反応を見るにこいつの人間性というのが見て取れる。


「はぁ?勘違いすんなっつーの」


 そんな中1人口を開くのはビクティ。


「みんなダーリンに協力してるだけであって誰もあんたに協力なんてしねぇからマヂで思い上がんなよ?笑」


 彼女の一言がきっかけだった。


「そうだ!俺たちはサーガさんに頼まれたからここにいる!お前のためじゃない!」

「ほんとなんだよ!てめぇ目障りなんだよくそ勇者が!散々俺らのこと貶してきて今度は手伝えか?都合良すぎなんだよ!」


 ギルド内の怒りが全て勇者に向かう。

 

「おい!賢者!お前も聞いてんだろ?!お前も許されると思うなよ?!その屑の横に立ち続けてゴミが死ねよ!」


 もう完全に終わったな。

 勇者パーティーに信頼はもうない。


 自業自得だが。


「すまなかった!」


 クロイツが土下座する。


「すまなかったで済むわけねぇだろ!」

「そうだぞ!くそ勇者が!死んで詫びろ!」


 当然の反応ばかり聞こえる。

 仕方ないな。最後の助け舟を出してやるか。


「まぁ、落ち着けよ」


 俺はクロイツの前に立つと庇うように手を軽く広げた。


「サーガさん?!庇うんですか?!」

「そうですよ!サーガさんもそいつには散々馬鹿にされたんでしょう?!」

「こいつは勇者だ。魔王を討伐してもらわねばならん。あまり責めてやるな。やる気を削ぐような真似はよせ」

「サ、サーガ………」


 俺のことを見て名前を呼んでくるクロイツ。


「サ、サーガさんがそう言うなら」

「そうだよな。魔王は勇者にしか倒せない」


 そうして勇者への罵倒は終わっていった。


「サーガ、助かる………」


 感謝してくるクロイツ。


「気にするな。行くんだろ?四天王討伐に」

「あ、あぁ。説明は終えた。行こう」


 あぁ、行こうか。

 お前の死刑台へ。


 例えどれだけ反省しようとお前の過去は変わらない。

 お前の犯した罪は消えない。



 道中声をかけられた。


「あ、サーガさん」


 手をパンと叩いて近付いてくるサヤ。


「サ、サヤ?」


 顔を歪な形にするクロイツ。

 それを見てハッと我に返るサヤ。


「私………今何を?」


 頭を抱えるサヤ。


「あっ………あっ………」


 クロイツが俺達から離れて尻餅をつく。


「ど、どうしたんですか?クロイツ」


 近付いていくサヤだが。


「く、来るな………はぁ、はぁ、」


 それを拒むクロイツ。

 精神的にかなり弱っているな。


 目の端から涙がポロリと零れた。


「は、はい………」


 それを聞くとサヤは素直に離れていく。


「あ………あが………サーガ………見たか?今の」

「あぁ」

「サヤの奴記憶を無くしていってるんだよ」


 言われなくても知っている。

 あいつの記憶を消しているのは俺だからな。

 

 最後に残ったものすらお前をどんどん忘れていく絶望………どんなものなんだろうな?


「本当か」

「あぁ。俺とのデートの思い出とかも消えていってるんだよ」


 身を震わせてそう語っている。

 それは良かったな。


「このまま行けば………俺のことを忘れないかとか心配なんだ………あいつだけは最後まで残ってくれた………幸せにしたい………」


 それは心配だなー。


「そう言えばお前の元恋人なんだっけ?………悪かったと思ってる、お前らの仲を引き裂いて」


 別に気にするなよ。

 お前に絶賛仕返し中だからな。


 どうだ?一人奪っただけで全て奪われる気持ちは。

 それに今となっては不思議とどうでも良くなってきていた。

 俺の心をビクティ達が癒してくれた。


 だがそれでお前の罪が消えると思うなよ?

 お前は胸糞の塊だ。何人殺してきた?何人を地獄に叩き落としてきた?

 徹底的に潰さないと気が済まない。


「あいつがお前の横を選んだんだろ。なら俺に咎める資格なんてない、気にするな」

「サ、サーガ………感謝する」


 心の中で鼻で笑う。

 俺を恨むならともなく感謝するなんて頭の中がお花畑なんだな。


「俺お前の事勘違いしていたな………お前に復讐されてると思ってたけどバチが当たってたんだな」

「………」


 楽観的に考えたいのか。

 そりゃそうか。ここまで絶望的な状況ならば少しでも楽観的になりたいか。


 だが一つだけ安心していいことはある。

 俺からの贈り物ぜつぼうはもうじき終わるからな。


「俺勇者になれて浮かれてたのかもな………酷いことを沢山してきた。罪を………償いたい」


 だから今償わせてやってるだろ?そしてこれからも償い続けるがいい。


「魔王を倒したら俺どうなんだろうな………処刑されちゃうのかな?両親はいなくなって家柄はなくなって、役目もなくなった俺の存在を誰が許すんだ………生きたい………魔王を倒したくない」


 そんなことを言い出した。

 自分勝手なやつだな。


 それにしてもここまで人格が変わるなんて一時的なものだとしても凄い変わりようだ。


「でも倒さなくちゃならない。ならば、俺はそれまでに少しでも善行を積んでみんなに俺の存在を許して欲しい」


 叶うといいなその願い。

 俺としてはどうでもよくなってきたが世界がそれを許すかどうかだよな。


 そんなことを思っていたら


「着いたぞ、ここが四天王スノウのいると言われている最果ての塔だ」


 ようやく着いた天を穿つほどの高さがある塔。

 ここに最後の四天王がいるのか。


 さて最後の活躍見届けてやろうか。




四天王最後の一人は少し後で出ます。


手を抜いているわけではないです。

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