4話 村を出て早速災難
翌日盗賊の俺としてはいつもより早めに起きた。。
「ダーリン今日ははやぴじゃん♡」
俺が朝早く起きているのが珍しいらしい。
そんな顔をしているビクティと出会った。
「村を出る」
「え?まじぴ?」
頷く。
「そんなキングオブ陰キャみたいな格好でどこ行くの?」
「王都にでも行くつもりだ」
「まさか幼馴染をあんな風にした王都に復讐するつもり?それはやばぴじゃん」
「………」
黙って立ち上がると棚にあった勇者から奪い取ったアイテムをビクティに渡す。
「何かあれば使え。デバフアイテムだ」
「これプレゼント?何で?」
「世話になった」
「え?これからもお世話してあげるし?何で私が行かないみたいな流れなってるし?私これでも専属の奴隷聖女だし♡」
まさか………付いてくるのか?
それなら
「わぁ!何で潰すし!」
「不要」
あんな汚らわしい奴から取ったアイテムなど不要にも程がある。
「レア度Sって書いてたけど何のアイテムなん?」
「ゴミだ」
「ふにゃぁぁ!最高レアのアイテムをそうやって言えるダーリンまじだいしゅき♡」
「………」
少しだけ手を動かして次の行動を促す。
「分かった。着いてくよ。てか口付いてるんだし話せばいいのに。何で話さないの?♡」
「………」
首を横に振る。
「分かったっぴ。この可愛い可愛いビクティちゃんを前に言葉が出ないぴね」
それはない。
※
俺達が村を出ようとしたところ声をかけられた。
「ま、待ってください!」
そこには勇者の女がいた。
というより横には勇者のクロイツもいた。
「………」
露骨に不機嫌そうな顔を作る。
「クロイツに謝ってください。私だって人間です好きな人が変わっちゃってダメですか?」
「そうだ。盗賊、お前は俺に負けたんだよ。お前の誠意次第ではこの件は上に報告を取りやめてやってもいい」
マスク代わりのマフラーを上にやって口元を隠す。
どうせ報告する気などないくせに。
はったりだ、こいつがここまで見下している俺に負けた、など口が裂けても言えるわけが無い。
それは決闘を見ていた村人も同様。世間的に盗賊は忌み嫌われている。所詮やることは盗み。
それに負けるなんて恥だ。
「………」
呆れるな。
首を横に振って村の外に向かおうとしたが
「待てよ盗ぞk」
「………」
俺の肩をつかんでくるのはわかっていた。
だから掴まれる前にファイア剣で腕を切り落とした。
「ぐぁぁぁあ!!!腕が………あれ」
そうしてすぐ様に魔法で元に戻した。
こいつの感覚で言うなら幻覚を見せられたとしか思えないだろう。
「………」
無言で関わるなと視線を送る。
「あ………あぁ………」
尻餅を付くクロイツ。
「何でこんなことするんですかサーガさん………私何かしましたか?」
「まだ分からないの?まじイラつく」
その言葉に答えたのは俺ではなくビクティだった。
何故か以前のサヤと重なるので今はこいつと話したくなかったから有難い。
「あんたケツ軽すぎ。いつも見てくるくらい好きだったくせにしばらく会わないだけでそんなパツキン勇者に惚れちゃうから呆れたんだよダーリンは」
「聞いてくださいよ。サーガさん。不安だったんです。初めての王都で初めての訓練、毎日不安の連続でしんどくて、そこでクロイツが現れました」
だから浮気しても仕方ありませんとでも言いたいのか?
確かに、俺にも落ち度はあるかもしれない。直接支えてやれなかったのも事実だ。
でもあんまりだろ?
一言あってもよかったんじゃないのか?お前はいきなり現れてその男を連れてきたんだぞ?
しかも結婚してくれと言った相手をついで扱いだぞ?誰でも受け入れられないだろ?
「あんたダーリンの気持ち考えたことある?根暗だなんだ、盗賊は汚いとかなんとかと言われながらもこの村守ってたんだよ?
全部あんたが帰ってくるって信じてたから。無口なのは認めるし何考えてるのかは分かりにくいけど最低限伝えようとしているのがダーリン。ずっと待ってたんだよ?あんたに返事をするために」
「で、でも私だって………」
「でもじゃねぇしって言った。はぁ、私たちにもう付いてくんな。さ、行こダーリン」
俺の背中を押すビクティ。
「サーガさん………またいつもの関係に………」
「うぜぇつってんだよ!イライラすんだよ!あんたみたいなの見てると!」
ビクティがサヤを怒鳴りつける。
「いたっ!」
何もされていないのに尻もちをつくサヤ。
「見損なったしあんたのこと。あんたは変わらずダーリンの事いつまでも好きなんだと思ってたし私、もう行こ。こいつ見てたらイライラしてくる」
俺の背中を押すビクティ。
そうだな。何にせよ今のこいつを見てられない。
「ま、待ってくださいよサーガさん………」
だが一つだけ聞きたいこともあったので1度立ち止まるとサヤの顔を見た。
「その見た目と言動は何なんだ?」
黒髪かどうかなんて些事だ。それと俺としても引っかかる点があった。
「それともまだあの時のこと勘違いしてるのか?それで現れた方が俺が喜ぶかと思ったのか?」
「い、いえ、違います。クロイツがこっちの方がいいって言ったんです」
どこまでも勇者の事だけか。
はっきり否定しなかった俺のせいなら謝ろうかとも思ったが、もう何も考えられない。
「じゃあな」
首を横に振って最後に別れの挨拶をしてから、ビクティと共にテレポで移動する。
※
「そういえばダーリンって何でそんなに魔法使える系?」
「固有スキルだ」
説明するよりやった方が早いと思った俺はスキルを起動する。
【何を盗みますか?】
→テレポの書
・体力上限アップアイテム
・ポーション
上にカーソルを合わせた状態でビクティの体に触れた。
「やん♡」
「………」
「それ何?」
俺の手に握られた書物。
「私こんなの持ってなかった系女子だけど」
「持ってなくても奪える」
「は?」
俺の両肩を掴んで前後に揺さぶるビクティ。
「意味分かんないし無から何かを生み出すの?!マジやばじゃね?てか鬼やばプンプン丸エクストリームだし♡」
「………」
ビクティに無言で巻物を渡す。
「何系?もしかしてくれる系?」
頷く。
別に必要ないしな。
「まじやば!使ったらテレポ使えるようになったんだけど♡」
そういうアイテムだからな。
「やった!これでダーリンにいつでも夜這いできるし♡」
「………」
勘弁してくれ。そんなことするために渡したのではないんだがな。
「ねぇ、ダーリン」
「?」
「私経験者0なの知ってる系?」
「その見た目で男遊びをしてないのは知ってる」
「知ってた系かよ!」
だってこいつ。俺の半径100メートル以内から出ること滅多にないからな。
あまり使わないがマップでそれは分かっている。
本気で俺の事を好きなのだろう。
「ところでさぁ、今日暑くね?太陽マジおこだよ」
それにしてもよく喋るなこいつ。
「てかここどこ系?ダーリン方向音痴過ぎない?あ、もしかして私に引率されたいの?♡」
「迷っただけだ」
「こんな洞窟入るまで迷ってることなんてある?」
あるからここにいるんだが。
その時洞窟の奥から人がやってきた。
「おぉ?声が聞こえんじゃねぇかと思ったら」
「ひっひっひ、女子供の2人?」
「こりゃ、上玉だ。おい、お前ら捕まえろ!」
俺たちを囲んでくる男たち。
何なんだこれは
「ちょっとヤバイ系?」
呑気なのが一人いた。