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48話 緊張感のない奴ら

 俺は早速ギルドに人を集めて今回の四天王討作戦の内容について説明を始めた。


「あのヘボ勇者はどこ行ったんだ?」

「あー、あの勇者ほんとにどこいったんだろうな」


 俺が説明に入ろうとしたところ、ギルド内で人々が話し始めた。

 内容は勇者について。


「そう言えば見ないよなあのバカ勇者」

「お前知ってるか?あの勇者黒い噂が色々流れてたよなー」

「あー、奴隷商人と繋がってる、とか貧民街の病を流行らせたーとかってやつ?」

「そう。それそれ」


 前者は本当の話だが後者は違う。

 しかしどうやらそちらの噂も流れているらしい。


 一度こうなれば尾ひれがつくというやつか。


「ほんとクズだよなあの勇者。何で王様もあんな勇者の世話ってか支持してたんだろうな。いくら魔王に対抗できるのが勇者だけといっても限度があるだろう」

「言えてるわー。聖女様を見殺しにして自分可愛さで逃げようとしたって白状したしな。そんなクズに頼っていた俺達も情けないが」

「それを言うなよ。いや、むしろ俺が勇者なら絶対聖女様は見捨ててないけどな。あの人すげぇ可愛いからな。命に変えてでもお救いしますってな」

「むしろそれで死ねたのなら本望ってやつだよな」


 そう言って笑い始める2人。


「その点やっぱりサーガさんってすごいよね。あの奈落の谷に自ら飛び込んで救出して生還、普通の人間に出来ることじゃないよな」

「そうそう。あの人のおかげで今盗賊目指してる奴も多くなったもんな。あの盗賊がだぜ?」


 その話は初めて聞くな。

 そうなのか。今盗賊を目指す人間が増えているのか。


 変わったものだな。

 子供の将来なりたくないランキングトップ付近をうろちょろするジョブなのにな盗賊って。


「まぢ変わったよね、ダーリン」


 それを見て隣に立つビクティ。


「あの盗賊がここまで慕われるなんて事今までまぢでなかったっしょ」


 そう言って俺の顔を見てくる。


「………出来れば目立ちたくはなかったんだがな。俺は影の住人でいたかったが」


 まぁ今となっては叶わぬ夢か。

 それに後悔はしていない。


 あの勇者を絶望のどん底につき落とせるのだから。

 それにしても勇者は最後にどんな反応を見せてくれるのだろうか。

 本当に楽しみだ。


「くくく………影の住人ですか?またなればいいでしよう。†終焉の世界エンドオブザワールド†にさえ辿り付けば貴方はもう一度私と世界を総べる影の支配者になれますよ………くくく」


 そう言ってビクティとは反対に立つサーシャ。


「そこにいる平行世界から来た………そうですねビクティ達はこの世界に置き去りにして私と共に行きましょうあの快楽の園へ」


 瞳をハート型にするサーシャ。


「はぁ?何言ってんだしあんた」

「あなたこそ何を言っているのですか?300年前からダーリンさんの横に立つ権利を神授せし者はこの女騎士ダークソルジャーである私しかいないんですけど?」


 言い合い始める2人。

 何度しても飽きないらしい。仲がいいんだな。


 2人を放置してギルド内を見回す。

 まだザワついていて勇者の話をしていた。


「まだ来ねぇのか?あの勇者」

「これあの勇者待ちの時間だよな?はぁ………使えねぇなあの勇者」

「ゴミで無能なんだから慎ましく待ち合わせ時間には来いよなあいつも」


 散々な言われようだな。

 しかし1度信用を失った奴なんてのはこんなものだろう。


 というよりこの待ち時間は静かになるのを待っているだけだ。

 誰もあのゴミを待っているわけではない。

 

「サーガ」


 そんな状況の中シャロが声をかけてきた。


「?」

「勇者を知らないか?あいつ来ないな」


 どうやら彼女も勇者を待っていると思い込んでいるようだ。

 しかしそれだと俺だけあいつの居場所を知っているのも不自然だな。


 今更ではあるが千里眼を使えることはあまり気付かれたくない。


「知らないな」


 そう答える。

 その時だった。


「ギルドマスター!ギルドマスター!」


 慌てて飛び込んでくる人影があった。


「どうした?」


 慌てた様子で入り込んできた男に問いかけるシャロに息を切らせた男が口を開く。


「ゆ、勇者が!単騎で出ていったようです!」

「な、何だ、と?」


 訪れる沈黙。

 それから


「サーガ早く行こう」

「そう言われてもまだ説明が終わっていない」


 そう口にするとあっと声を上げる彼女。

 まぁいい。そんなに難しい話ではないし時間は取らない。


 適当に説明を始めることにした。



 説明を終えた俺たちは早速ゴブリンの森に向かうことにする。

 説明と言っても前回とほぼほぼ変わらない。


 作戦の中心メンバーが勇者パーティから俺のパーティに変わっただけだ。

 周りの奴らに雑魚処理を任せて俺達が四天王を倒すフリをするだけ。

 とは言え、


「ふふふ………ついになのです」

「くくく………そうですよね。ついに私たちの出番が来てしまいましたね」


 ルゼルとサーシャが不気味に笑い出す。


「サーガ様!私は大活躍しますよ!サーガ様の奴隷として恥じないように!」


 そう宣言するルゼル。


「私も女神の女騎士として【閃光】の異名に恥じぬ戦いをしてみせるにゃんです!」


 そしてサーシャお前の語尾は何なんだそれは。

 にゃんなのか、ですなのかどちらかにしておけ。


「この【侍】ジョブの私に全てお任せを。ダーリンさんこの私がお守りします。私たちの未来は私が切り拓くのです!4つの心を!輝きの世界を!」


 何を言ってるんだお前は。

 お前のジョブは聖女(肩ゴリラ)だろ。


 何勝手に侍にジョブチェンジしてるんだよ。


「この日のために私は銭を投げ続けました。そして所持銭はついにカウンターストップしました。銭力は9999になりました。これ以上は持てませんが、これだけの銭を投げつければ魔王だって倒せそうですよね。私は女神の女騎士ですので魔王だって倒せます」


 だから何を言ってるんだ。

 そんなことを思っていたら何か口ずさみ始めた。


「たーたったら↑、たーたったーた、たーたったたたーらーらーらー↑」


 今度こそ意味が分からなくなってきた。


「何なんだそれ」


 聞き返すと彼女は何処からかメモリアルストーンを取りだした。

 そして魔力を流すと


「女神の女騎士であり【閃光】の異名を持つ私ですので戦闘BGMは必要です。なので用意しました。ちなみにあの獣人三姉妹に手伝ってもらいました」


 まさか………流すのか?これを


「名前は【闇の閃光EX】です」

「何これまぢ上がるじゃん」


 横から会話に混ざってきたビクティ。


「何か癖になるっつーか、あんただけかっこいい専用BGM持っててずるくね?」

「私はダーリンさんの女騎士ですから優遇されるのは当然ですよ。あなた達のようなぽっと出嫁と一緒にしないでください」

「はぁ?!まぢありえねぇし!ダーリン私もBGM欲しいし!」

「自分で用意しろよ。サーシャは自分で用意してきたんだよ」

「めんどくせぇ」


 その面倒くさい作業をサーシャはやってきたんだ。我慢しろ。


「ダーリンさん!まだありますよ!ポチッとな」


 そう言って何かの操作をした彼女。

 そうしたら今度は物悲しい曲が流れてきた。


 それに合わせて口を動かすサーシャ。


「ちゃん、ちゃらららららん⤵︎ ︎ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃん↓。どうですか?これはダーリンさんが究極盗賊を使った瞬間死んでしまうことを仲間のビクティから教えられた時に流れる名曲ですね。曲名は【ロスト・パラダイスにて】です」


 そう言って俺を見てくるサーシャ。

 静まり返る一行。


 そして次に口を開いたのはエルザだった。


「そ、そうなのか?師匠………究極泥棒をしてしまうと………亡くなってしまわれるのか?そ、そんなの嫌だ」


 そうか。こいつまさかサーシャのキャラを知らないのか。

 ていうか究極盗賊ってなんだよ。


「そういう病気だ」

「病気なのか?!どこが病気なのだ?!リディア!早く治してくれ!」


 そう言ってリディアを呼びに行くエルザ。

 あいつ………まさか俺が病気だと思ってるのか?


 そうしてリディアを連れて帰ってくるエルザ。


「さぁ、早く治してくれ!病気みたいなんだ!」

「え、えっと………その………」


 俺を見てくるリディア。


「さぁ、早く!」

「だからその病気だから………」

「ま、まさか治せないと言うのか?………そんな師匠が苦しんでいるのに何故気付いてやれなかったのだ………すまない師匠………私はポンコツだ………」


 やれやれ………誤解を解くのは面倒な事になりそうだなこれは。

 そう思った。


 それにしてもこれから魔王軍四天王を倒しに行くというのに呑気な奴らだな。

 でもこいつらといると気が休まるのもまた事実だった。

アンケートですがご協力ありがとうございました。

結果やこれからの展開については大雑把にですが次の後書きに書きたいと思っています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 閃光はいい曲です。 ヒストリア~の方も(・∀・)いい!
[一言] 次に勇者見つけた時には彼が【アッー!】な状態になってるかと思うと…。何人かの冒険者がPTSDになる可能性すら
[気になる点] なりたくない職業ランキング最下位だとなりたい職業ランキングトップになりませんか? なので、なりたくない職業ランキングトップもしくはなりたい職業ランキング最下位ではないかと。
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