42話 次の目標
サーシャも含めて起床した皆を集めてこれからのことについて話した。
別に大したことはなく俺の今考えているこれからの行動について大まかに説明するだけ。
とりあえず今はクロイツの穴を埋めようと思っていることを伝え今日王様に会うつもりでいることなども伝えた。
そして王城の王室までやってきたのだが。
「サーガか。どうした?」
「最近の魔王討伐の動きに関して進展がないようなので自分にも何か出来ることは無いかと思いまして」
勇者から勇者の座を奪いたいところではあるのだが具体的な手段が思い浮かばない。
これは正直な話イレギュラーな話になってしまう。
だから素直にコツコツと実績を作るのが1番手っ取り早いかなと思う。
「そうか………四天王もまだ残り3人いるのだが………ふむ。それをどうするかだが。出来るだけクロイツに倒させたいところなんだがな。経験を積ませるためにも」
「経験ですか」
「そうだな。四天王自体の撃破は盗賊のお前でも可能だろう。だがそれでは勇者に経験値が入らない。四天王は強大な敵だ。それだけあって経験値も多い。だからこそ勇者に四天王を倒させたいところだが」
何か言いたげな王様。
ところだがというのは、どういうことだろうか。
俺は話の続きを待つことにした。
「俺は今お前にとても期待している」
「そうですか。ありがとうございます」
「そこで、だ。お前に次の四天王の討伐を頼みたい」
「次の、ですか?」
「あぁ。お前が良ければになるが納得してくれるのならお前に次の四天王討伐を任せたい。今勇者はあの様子なのでな。率直なところ使い物にならない」
確かにあの状況では何も出来ないな。
それは俺も理解しているところだ。
「どうだろうか?お前が代わりに動いてくれないだろうか?」
「いいんですか?経験値がいいという話でしたが」
「俺はお前に可能性を感じているという話はしたな?お前なら前代未聞の勇者以外が魔王を退治するという夢物語を見せてくれるかもしれない。ならばそのためには力を惜しまない」
そういう話なのか。
これは素直に受けておいた方が後々動きやすいのは確実だが。
そうだな。あいつらにも相談してみるか。
「それとな俺としてはお前に勇者になってもらいたいところもある」
「そうなのですか?」
それは意外な話だな。
まさか現時点でそう思ってもらえているとは思わなかった。
根暗だ。勇者なんて存在とは対極にいる存在。
「今の勇者は腕はそこそこあるが難がありすぎるし、何より黒い噂がもう既にかなり立ってしまっているからな」
「と言いますと?」
「先日の弟殺しあれは元奴隷にやられたという話が濃厚でな」
その通りだな。
「奴隷は認めていないというのにな」
ため息を吐く王様。
「奴隷の存在を認めているなんてやつが勇者では色々と不味いのでな。その点お前は万人に等しく接するだろう?それに腕が立つ。俺はお前にその力があるのなら魔王を倒してもらいたいとすら感じている」
「自分でいいのですか?」
「あぁ。むしろお前がいい。あの勇者は色々と黒すぎる」
そこまで言ってもらえるのなら俺としては倒したフリをしてもいいが。
あいつらと話をすれば芝居の1つや2つ難しくはない。
「ま、待ってください………」
その時王室の扉が開いた。
そこに立っていたのは
「もう平気なのか?回復したら登城しろとは言ったが」
「いつまでも待たせられません」
その意気込みは評価してやってもいいな勇者。
昨日の今日と殆ど時間が経っていないのに登城出来るのは大したものだろう。
顔色も良くはないようだがここに立っているだけでも流石と言わざるを得ないか。
「それにそこの盗賊に勇者の座を明け渡すなどあってはならないことだ」
先程の会話を聞いていたのか。
「俺の黒い噂など全てデマです。弟は無実の罪で殺された!」
清々しいまでの嘘だな。
こちらで全て調べが付いているというのに。
「俺は弟の敵討ちをしたい。こんなところで止まってなどいられません」
「何を言っている勇者。俺がお前の行いに気付いていないと思っているのか?」
「全てデマです!俺を信じてください王」
「剣聖は貴様を裏切りサーガのパーティに加入した。その際に貴様から不当な暴力を受けていたと聞いている」
「………」
黙り込む勇者。
「盗賊に脅されているんですよ。そうやって口にしろ、と」
またとんでもない話を考えたな。
「バカも休み休み言えよ?クロイツ」
「本当のことです。その盗賊は怪しげな術を使います。それでエルザを騙しているのでしょう」
そう言ってエルザに目を向けるクロイツ。
「今なら何も言わん戻ってk」
「断る」
冷静に言い放つエルザ。
「悪いがクロイツ。私はもうお前に付き合いきれない。もう暴力はごめんだ」
「………後悔すんなよ?」
王様には聞こえないくらいの声でそう呟いてから王様に目を向けるクロイツ。
「王様。ご命令を。今残ってくれている新聖女シャーロットと賢者のサヤ。それから俺で何とか次の四天王を倒してみせます。数だけ揃え連携も何も無いそこの盗賊には絶対に負けません」
それを受けて頷く王様。
「分かった。貴様にもチャンスをやろう勇者。魔王を倒すのは勇者。この定石を崩すのは不安要素でもあるからな」
そう言って王様は俺たちを交互に見てから口を開く。
「2人に次の四天王発見及び討伐の任務を与える。見つけ方などは自由だ。そして倒し方も問わん。その首だけを持ち帰ればいい」
玉座から立ち上がり先にクロイツに向かっていく王様。
「期待している。せいぜい結果で示してみせよ。はっきり言っておく。俺の中でのお前の評価はココ最近のゴタゴタで落ちている。是非とも信用を取り戻してみせよ?最悪………分かっているな?」
「はい!お任せ下さい!必ずや四天王の首を!」
そう告げて立ち上がると勇者は外に出ていった。
それから王様は俺に向かって口を開いた。
「期待しているぞサーガ」
「お任せを」
俺も軽く頭を下げてそう答えた。
さて、こっちの方も進めつつクロイツの家のことについても証拠を掴んでいこうか。
国民も味方につけたいところだ。




