30話 女魔王との約束
男から聞いた情報をまとめる。
病というのは咳から始まって最後は死んでしまうらしい。
そして治し方は確立していない。
だが1人だけ治せると呼ばれている人物がいるそうだ。
どうにも胡散臭い話だがな。
「どうする?ダーリン」
「どうするも何もこれを解決する」
「どうするつもりなん?」
その質問には答えずに俺は歩き出す。
今この辺り"一帯を対象に"して鑑識眼スキルを使ったのだが。原因が分かった。
これは一人で向かった方がいいか。
「ビクティ、リディア」
「どったの?」
「なに?」
彼女達に指示を出すことにした。
とは言え残りの二人サーシャとルゼルを頼むといったものだが。
「ダーリンがパパッと解決してくるんだね♡」
頷く。
原因の排除、俺以外にどうにかできる代物じゃないなこれは。
「という訳でみんなを頼む。すぐにもどる」
※
テレポを使って目当ての場所まで飛んできた。
人里離れた山奥の洞窟だった。
そこから妙な魔法の流れが貧民街まで続いていたのだ。
とは言えそこにいる人物を俺は前世から知っているが。
「ようこそ、待ってたわよファントムちゃん♡」
早く帰りたいと思いながらも話を聞くことにする。
「ハンニバルから聞いたわよーん、ルーヴィスの奴が復活してやがったひははって」
「はぁ………」
頭を抑えて横に振る。
目の前にいるのは魔王軍四天王のサーラ。
男だ。オカマだ。
「サーガって名前にしたみたいねー。あーら前に見た時より可愛くなって食べちゃい………」
「は?」
信じられないものを見るような目でサーラを見た。
「その耳障りな声で気持ち悪い事を話すな」
「じょ、冗談よ悪かったわ」
「俺こそ短気だったな」
我に返る。
余りにも耳障りにしろ言ってはいけないこともあるか。
「貧民街で謎の病が発生していたがお前か?」
「ぴんぽーん。ごめんねー。殺すつもりじゃなかったんだけど予想以上に人間が脆かったの。流した理由だけど魔王様が貴方にどうしても会いたいって」
「病を蔓延させれば俺が来ることを予想していたか?」
「ぴんぽーん。ルーちゃんなら気付いてくれると信じてた♡」
やめてくれ。
背中が凍る。
「用件は?」
「協定を結びたいみたい。ルーちゃん昔から最強だったのにもっと最強になって手を付けられないからね。魔王様のところ行く?」
「そうだな。あいつとは1度会って話をしておきたい」
「そうこなくっちゃね。こっちよー」
うねうね動くオカマの使用したテレポで俺たちは魔王城まで移動する。
次の瞬間俺達は魔王城の一室、魔王の部屋にいた。
周りには意外と少女趣味の可愛らしいぬいぐるみがあったりする部屋だ。
「お連れしたわよー魔王様ー」
「よくやったのじゃ褒美を遣わすぞオカマ」
相変わらずこの魔王様も変わらないみたいだな。
金髪をツインテールにした見た目15くらいの少女。
それが今の魔王様。
「久しいのールーヴィス。サーガと呼んだほうがいいかの?」
「どちらでも構わない」
「なら我の嫌いなルーヴィス名で呼ぶことにするのじゃ」
本人を前にして嫌いとか言うなよ。
「ルーヴィス今我々は窮地に立たされておるのじゃ」
「そうなのか?」
「馬鹿者。お前の転生のせいじゃ」
やれやれと首を横に振る女魔王サタン。
「我らはお前があの世に行ってくれると信じて処刑したのに何故転生しておるのじゃ。正直今も内心お前が暴れださないかびくびくしておる」
「四天王の座に疲れたからな元々そのために殺してくれと頼んだ」
俺が死んだのは自分のためだ。
転生して新しく人生をやり直したかった。それだけだ。
「それなら四天王を辞めさせてくれと言ったら良かったのじゃ」
「辞めたところで1度貼られたレッテルは剥がれない。だから新しい人間としてやり直したかった。こんなことどうでもいいだろ?それより協定だろ?」
「そうなのじゃ」
玉座から降りて俺の方に歩いてくるサタン。
「我らは人間と協定を結ぶわけではなく、お前個人と協定を結ぶ………それを覚えておくのじゃ。正直今の勇者なぞそこのオカマでも倒せるじゃろ。しかしお前は違う。お前に攻められてはこちらが1分もたない」
いや、1分くらいはもつだろ。
買い被りすぎだ。
「我々は必要があればお前に出来る限り協力する。それと引き換えに我々の生活を脅かさない………内容はそれでどうじゃ?勿論お前の獲物である勇者にも手を出すつもりもない」
「構わない。元々ハンニバルと交していた内容でもある」
「決定なのじゃ。くれぐれも忘れんでくれよ?」
こうして俺たちの間には協定が出来た。
「オカマ帰りは送ってやれ」
「分かったわん魔王様。さぁ、行きましょルーちゃん」
俺の尻を触ろうとしてきたサーラの手を弾く。
「やん♡」
「触るな変態」
「相変わらずキレキレの暴言ね♡ルーちゃんこれから暇?」
「暇ではない。勇者をどうやっていたぶろうか考えているところだ」
「あなた魔王になっちゃえば?」
その一言は無視することにした。
※
「ごめんねー付き合わせて」
「これっきりにしてくれ」
「それと、はい。病を蔓延させる魔法は解除しておいたから、それとこれ薬草」
そう言って俺にかなりの量の薬草を渡してきたサーラ。
「これで今病にかかってる人は治るから」
「………」
「何なのその疑いの目は?!偽物とか用意しても仕方ないじゃない!私だってルーちゃんに殺されて死にたい訳じゃないんだから!」
何を言ってる?スキルでこれが効用のあるものだというのは理解している。
「眠くて目が細くなっただけだ」
「あら、夜更かしは体に悪いわよ。それとも私が寝か………」
「断る」
短く告げて歩き出す。
「きぃぃ!!!!まだ何も言ってないじゃない!」
「突然尻を触ってくるような奴とは一緒にいたくないんだよ変態」
「えぇ?!!だって憧れのルーちゃんのお尻を前にして素直に退けるわけないじゃないの!」
「俺はお前に引いてるよ。だから退けるはずだ。頑張れ」
「そんな!お尻を触らせ」
「断る」
そう言って距離を取ってから最後に振り向いて口にする。
「じゃあな。薬草、助かった」
「気にしなくていいわ」
その言葉を背に受けてからテレポを起動する。
戻るか。
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