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25話 ミスリル鉱山

 翌日から俺達の訓練内容はガラリと変化した。


 今までは各自のジョブに合わせた訓練を行っていたのに対して、王様の口にした通りパーティとしての動きを鍛えるものにかわった。


「今日はここだよ。ミスリル鉱山、それにしてもまさかサーガと一緒に訓練出来るなんて嘘みたい、夢じゃないよね?」


 あまり気は進まないがクロイツ達と行動することになっていた。

 1人、リディアだけはすごく嬉しそうにしているが。


 そして今日このことを知った時からリディアは俺にベッタリ引っ付いていた。


「ねぇサーガ、一緒に訓練出来るなんて嬉しいよねー」


 俺としてはすごく複雑ではあるがリディアにとっては嬉しいことらしいな。


「おい盗賊」


 俺がこの訓練を憂鬱だと感じている原因が話しかけてきた。


「何だ?」

「くれぐれも俺達の足を引っ張ってくれるなよ?お前のようなゴミに足を引っ張られて失敗したとなるとつまらないからな」

「分かってる」

「ほんとか?その小さな脳みそで理解出来ているのか?ははは、小顔だから脳みそまで小さそうだなお前ふははは」


 脳みそは確かに小さいかもしれないがそれくらいは理解出来ている。


「それで勇者サマ?俺たちは一体何をすればいい?」


 気に食わない話だが俺たちはあくまで勇者パーティを補佐するためのパーティだ。

 あくまで今は、だが。


 訓練内容などは出来る限りクロイツの言うことを聞けとなっている。


「お前たちは荷物持ちだ。もちろん、俺達が訓練を始める前から疲れないために大切なことだ」


 そう言って自分達の荷物を山ほど俺たちに押し付けてくるクロイツ。


「アイテムポーチを使えばいいだろ?」


 魔法道具アイテムポーチ。

 魔法で別の場所のある倉庫に繋がっており好きな物を好きなタイミングで取り出せる道具。


 冒険者なら誰もが持っているものだ。


「俺はアイテムポーチを使わない主義でね。それより文句を言うな盗賊風情が。俺の荷物を持たせてやってるんだ。感謝しろ愚民。愚民は俺の持ち物に手を触れることすら栄誉とするのだ。貴様もその足りない頭を動かして記憶しておけよ」


 絶対に嫌だなそれは。


「おい、リディア」


 クロイツがリディアに目をやった。


「お前の居場所はその盗賊の横じゃなくて俺の横だろ?いつまでそこにいるつもりだ」

「どうせ一緒に行動するんでしょ?なら何処にいても変わらないじゃない」

「はっきり言わないと伝わらないか?俺はお前を心配して言ってやってるんだよ。盗賊に大事なもん奪われたくないだろ?そいつはしょせんは盗賊。何をするか分からないんだぞ?」


 ニヤニヤするクロイツ。


「それがどうしたの?仲間を信じないでどうするの?」

「そいつは仲間ではない。俺達を補佐する召使であって仲間ではない。お前の仲間はこの俺だけだ。さっさと横に立て」

「嫌」


 これ以上ないと思われる程はっきりした否定をするリディア。


「私はサーガと一緒にいる」

「これが最後の言葉だリディア。戻ってこい」

「嫌」


 やはりはっきりと否定するリディア。


「絶対に嫌。前も言ったよね?あなたの機嫌を取ってたのはあなたが勇者だから。あなたの横なんてもう二度と戻りたくないから」

「ちっ………」


 そう言われた瞬間舌打ちして顔をしかめるクロイツ。


「その言葉後悔するなよ?リディア」


 そう言ってからクロイツは歩き始めた。

 俺達もそれに続く。





「私らマジやばくね?超ノリノリじゃん」

「ナイスでーすビクティ様!」


 俺達も適当に与えられた課題を終わらせる。

 ビクティとルゼルがハイタッチしていた。


「ふっ………私とダーリンさんの絆に比べればまだまだ荒削りですがね」


 それを見てニヤニヤしながらそんなことを口にするサーシャ。


「ですよね?ダーリンさん?私とダーリンさんのラブラブ絆パワーをこの2人に見せてあげましょう」

「は?私とダーリンのラブラブパワーの方がやべぇし♥人間とエルフには越えられない壁があるし」

「私たちは種族の壁を超えたんです。今ここに愛の力を………」


 ギャーギャー言い合いを始める2人。

 相変わらず仲のいいことだ。


「あ、あのー」


 そんな二人を見ているとルゼルが声をかけてきた。


「どうした?」

「私の動きどうでしたか?」

「良かったと思う」


 初めの方と比べると随分チームとしての動き方はマシになっているように思う。

 俺の返事を聞いて胸を撫で下ろすルゼル。


「じゃ、じゃあ私は今サーガ様達の足を引っ張っていませんか?!」


 頷く。


「よ、良かったです」


 胸を撫で下ろすルゼル。

 そんなに俺たちの足を引っ張っていないのが嬉しいことなのだろうか。


 俺としては足をどうのとかじゃなくてもう少し前に進んで活躍して欲しいところではあるが。

 まぁ、でも先程の動きを思い出す。


 この様子じゃ心配はいらなさそうだな。

 そうして話していたところ


「おい、盗賊」


 今最も話したくない生物ナンバーワンに話しかけられた。


「何だ?」

「訓練の方は順調か?癪な話だがお前がどのように訓練をしているかなど俺様は王に報告しなくてはならんからな」


 心底嫌そうな顔をしてそう口にしている。


「あぁ、順調だ」

「そうか。分かった」


 そう答えて去っていこうとする勇者だったがもう一度こちらを振り向いて、楽しいことを思いついたような顔を浮かべた。


「そうか、そうか、順調だったか。ならば俺からひとつ課題をくれてやろう。盗賊」

「何だ?」

「この奥に繋がる道分かるよな?」


 目をやる。

 確かに奥に続く道はある。


「何だ?」

「奥に行ってミスリルを取ってこい」

「何故俺が?」


 ニヤッと笑うクロイツ。


「お前が俺たちの支援をする役割だからな。さぁ、行ってこい」

「聞いていいか?ミスリルを取ってきてどうするつもりだ?」

「武具の強化に回す。ミスリルは硬度の高い鉱石だ。防具に混ぜれば魔物の攻撃を受け止め、武器に混ぜれば鉄をも容易く切断できる鉱石と呼ばれている。盗賊だろ?お前。うってつけの相手だと思ってお前に相談した」


 今更表面上だけでも取り繕っているらしいな。


「分かった」

「理解してくれたか?盗賊君?」


 馬鹿にしたようなトーンで口にするクロイツ。


「分かったと言った」

「結構。ではミスリル採取はお前に任せるとしよう。言っておくがこれは意味の無いことではない。理解してくれるな?さぁ、早く行けよ盗賊」


 そう言われて俺はビクティ達に目をやった。


「おい、何をしている?盗賊」

「何をしていると言われてもな。ただ、仲間に今の件を」

「お前一人で行くんだよ盗賊」

「は?」


 本気で意味が分からなかった。


「ちょっと!そんなの横暴だし!」


 ビクティが反論する。


「俺は盗賊を信用しているんだよ」


 ニヤニヤして話すクロイツ。


「お前なら1人でミスリルを取ってこれるだろうとな。それにこいつは1人でリディアを助けに行った。その身のこなしが出来たのは1人だったから、ではないのか?」


 そう言ってニヤニヤビクティを見ている。


「そのような素晴らしい身のこなしができる盗賊にお前たちのような他のジョブが同行しても邪魔になるだけではないか?」


 考えたなクロイツ。


「はぁ?!こことあそこじゃ違うっつーの!」

「俺の決定に従えないか?ならばこの件を………」


 腕を組むクロイツを見て俺はビクティの口を押えた。

 仕方ない。


 こいつがこんなことを切り出してきたということは何かしらの考えがあるのだろう。

 ならば俺はその考えを超えるまで。


 思い通りに進むと思うなよ?


「分かった。行こう」


 そう答えるとニヤっと口元を歪めたクロイツ。


「流石盗賊。そこの馬鹿聖女と違って物分りがいい。期待しているぞ」


 何を考えているかは分からないが今は従ってやろう。

 俺を下の存在だと思ってくれ。


 お前の場合、下に思っていた奴にじりじりと抜かれることほど苦痛なこともないだろう?

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな話をしてても勇者のステータスを下げ続けてるだろうな
[一言] ゆーしゃくんはホモのオークに掘られて 動画を拡散されればいいのよ
[一言] いやリディアのことを気にしろよ 一人になるんだぞしかも勇者と同室で 一番危ないわ
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