1話 神託の儀
俺の名はサーガ。転生者だ。
過去に魔王軍の四天王として名を挙げ、更に盗賊神と呼ばれた男だが今はココリ村で生きる1人の人間だ。
━━━━転生魔法。
人が死んだ時その時の記憶と経験や知識、スキルなんかを引き継いだ状態で次の肉体に乗り移り、新しい人生を開始できる大魔法。
ぶっつけ本番だったが成功した。
「………まさか俺に扱えるとはな」
小さく笑う。
この盗賊の俺に扱えるとは思っていなかった。
正直身の丈に合っていない魔法だ。
こういうのは賢者とかそういう偉いヤツらが扱えるような魔法であってこそ泥に使えるような魔法ではない。
しかし成功した。
「………処刑した俺がまだ生きてるなんて夢にも思わないだろう」
まぁいい。それも昔の話だ。
そんなことを思っていた時だった。
家のドアがノックされた。
「………」
「あ、あの………サーガさん?」
そこに立っていたのは最近は会話も少なくなった幼馴染だった。
「………」
それにしても転生魔法………どうやら俺のコミュ障まで引き継いでいるらしい。
「何だ?」
「ひ、ひぃぃぃ!!!」
しまった。
幼馴染の少女を驚かせてしまった。
「あ、あの!サーガさん!」
「用を」
「ひ、ひぃぃぃぃ!!ごごご、ごめんなさいぃ………殺さないで………」
「殺さない」
「あ、あのですねそのですね………サーガさん全然村に顔出さないから知らないかなと思って、明日神託の義があるのは知っていますか?」
「いや」
「あ、あの、明日の午前10時からですので来てくださいね」
コクっと頷く。
少女サヤ、彼女が俺の家から出ようとしていた。
待て、呼び止めろ。わざわざ家に来てくれたんだぞ?!俺に気があるに決まっている。
「サ、サヤ」
声が出た!
「は、はい!何でしょう!」
「その………わざわざ言いに来てくれて感謝する」
何で礼を言う時まで堅苦しいんだ?俺は!
「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
しまった、堅苦しい言葉と一緒に目が鋭くなってしまっていたかもしれない。
だから怯えてしまったか。俺の鋭い時の目は怖いとよく言われている。
だからたまに細めてしまった時大変だ。
いやそれより………
「………」
声が出ない。
「失礼します!」
少女は慌てて家を出ていった。
………何をやってるんだ俺は………。
モテない男丸出しではないか。
そんなことを思って扉の前で立ち尽くしていた時だった。
「ちょりーっすサーガいるー?っているよねー。友達いないもんねー」
来た………こいつは。
「何だ………」
「ねぇダーリン今日は外で遊ぼうよ♡つーかイカくせぇ。うっは、ゴミ箱に真っ黄ティッシュとか受けるー。でも、何かムカつくなぁ」
この下品な下ネタばかり口から吐き出す生きるエロ本はビクティ。
俺の頭の中にある少女辞典によるとただのビッ〇だ。
やれやれ………俺の好みじゃないんだがな。
※
神託の儀が始まった。
「ダーリンダーリン」
何故か俺の横に生きるエロ本が座っていた。
しかも腕にその2つの巨峰をぶつけてくる。
しかしそんなもので童帝の俺の心は揺らぎはしない。
「………」
「私はーダーリン専属のヒーラーになりたーい」
「………」
断る。
「やったーダーリンが何も反応しないってことはいいってことよねー」
誰も言っていないぞ。
「………」
このまま無視しておくか。そのうち飽きるだろう。
「てかまじだりーし、早くしてくんね?おっさーん、早く私に神託してよー神託ー」
うるさいぞお前。
「………ビクティ、君のジョブは聖女だ」
「まじで?!受けるー。これからも一緒だよダーリン♡」
「勘弁してくれ………」
誰が好き好んでこれと一緒にいたいのだ。
それよりこいつが聖女?大丈夫か?!
「とか言って嬉しいくせにー私ってばーまじ嬉しいんですけどー♡♡」
引っ付くな鬱陶しい。
押しのけたいところだが変に押しのけて反応を貰えると思われるのも嫌なんだよな。
「次はえーっとそうだな。サーガ」
めっちゃ適当じゃね?おっさん。
えーっとって何だよ。明らかにこの生きるえろ本の近くにいたから俺みたいなそんなノリだろそれ。
おっさんは俺のところまで歩いてくると紙を手渡してきた。それから一言。
「君は盗賊だ」
紙にはこうあった。
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【名前】サーガ
【ジョブ】盗賊
【レベル】1
【攻撃力】3
【体力】69
【防御力】2
【素早さ】35
【魔力】78
【スキル】幻影盗賊
・概要━━━━対象から任意のアイテムをどんなものでも盗むことが出来る。
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俺のジョブがノリで告げられた次の瞬間。
「ぎゃーはっはっ!盗賊?!」
「おい、こんな村にいないでさっさと消え失せろよ!盗賊!」
とまぁ散々なことを言われ始めた。
盗賊………今も昔も人に誇れるジョブではない。
それよりも転生前に育てた固有スキルの幻影盗賊が残ってるだけマシというやつだ。
「や、やめてくださいよ!」
しかし、そんな流れを変えるような言葉がひとつ。
お前は………
「サヤ?その盗賊庇うの?」
「盗賊とか関係ないですよ!みんな仲良くしましょうよ!」
この空気の中俺を守るのか?
まさか………押せばいけるのでは?
脈アリっしょ!
サヤか………やはりいいな。
最近はコミュ障のあまり話していなかったが幼馴染で付き合いは長いしかも可愛い。
いけるっしょ。
※
俺は儀が終わって直ぐにサヤを村から少し離れた丘の上に呼び出した。
勿論押せばやれ………じゃない。押せばいけると思ったからだ。
「あ、あの何ですか?/////」
ほら、お前のドキドキ俺にも伝わってくるよ。
ってキモイな。
「………」
「あ、あの、ごめんなさい………そのよく知らないのにさっきあんなこと言っちゃって」
謝らなくていい。
あれは君からの告白だったのだろう?
俺には分かる、何せ俺は盗賊だからだ。人の心の中をのぞくなんて造作もない。
「━━━━黄昏の審判が下る時」
「はい?」
「世界は2人を祝福するだろう」
何を言っている。
俺は………黄昏の審判?
彼女目を丸くしている。
「………」
やばい、何とか軌道修正しなくてはならないのに。
「わ、分かりました………」
何故落ち込んでいる?!
「やっぱり私じゃダメなんですね………」
そして何故俺が振ったみたいな雰囲気になってるんだ?!
「………」
いや、あの違うんだ。そういう訳じゃなくて。
「私………あなたのこと好きだったんですサーガさん。助けてくれたあの時からずっと………でも、やっぱりビクティさんみたいな人がタイプだったんですね?!」
違う。そいつは俺の理想からほど遠い。
理想はお前だ!
「………」
「私見ました。昨日2人でこの丘に来るのを。2人を祝福するというのはつまりそういう事だったんですね?」
違う。というより見られていたのか?!昨日のこと
「ははっ………私みたいなのじゃサーガさんは振り向いてくれない。分かってたことです。ごめんなさい………でも私強くなって帰ってきますから………今でも結婚して欲しいって思ってますから」
そう言って彼女は俺の顔を見ることなく丘の上から去っていった。
その言葉で思い出す。
彼女は賢者に選ばれた。
そのため故郷を離れて勇者パーティに入るための訓練をしなくてはならない。
もう長い間会えないんだ………。
「くそ………何やってんだ俺………」
彼女は直ぐに旅立つっていうのに………。
心の中だけおしゃべりが得意な根暗じゃないか。
明日こそはきちんと答えよう………。
サヤの方は好いてくれてるんだし。
新作です。よろしくお願いします。
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細かい文章の修正を行いました。
本筋に影響はありません。