15話 取引の確認としりとり
リディアの確認を終えた俺は次に遠く離れたあいつと落ち合うことにした。
以前この王都で出会った四天王ハンニバルだ。
そいつを王都の外にあるゴブリンの森に呼び出す。
「寝取られ盗賊のサーガちゃんどうしたよ?」
俺が着いたころにはそこにハンニバルがいた。
相変わらず赤髪を逆立たせている。
「お前気安く俺にテレパシーを飛ばすのは構わないが俺は四天王でお前は人間って立場忘れんなよ?」
世間話をしにきた訳では無い。
「協力してくれないか?」
「協力だぁ?」
「勇者を絶望の底に突き落とす」
「魔王にでもなったつもりかよお前。ってかお前はその勇者さんを支援する側だろ?何言っちゃってんのまじウケるわー」
ゲラゲラと笑うハンニバル。
笑い事ではない。
「真面目な話だ」
「詳しく聞かせろよ」
俺は現状を伝えた。
「流石盗賊神。奪われたんなら奪い返すのね。しかも何倍返しだよ500倍返しくらいか?」
「………」
無言で見続ける。
「相変わらず性格悪いなお前。むかつくのは分かるけど女一人寝取られただけで普通そこまでするか?」
無言で返事を求める。
「わぁったよ。協力する。ただし」
「ただし?」
「終わったらのんびりさせてくれ、約束は守れよ?もう勇者が攻め込んでくんのだりぃんだわ」
「確実に死んだ扱いにしておこう」
俺とこいつの間に交わされたのはこいつは俺の指示通りに動き、見返りとして俺はこいつに平穏な日々を約束するという契約。
「そりゃ、助かるわ。あとお前は本気だすなよ?次元最強の盗賊さん」
「俺は勇者ごっこも魔王ごっこもしない。俺の平穏をめちゃくちゃにしたあのゴミを叩き潰す、ただそれだけだ」
「相変わらず怖いなお前。その気になれば世界壊せるやつの言葉の重みは違うな」
そう口にするハンニバル。
どうやら交渉は成立したか。
だが最後に釘を刺しておく。
「破ればどうなるか、分かるよな?」
身を震わせるハンニバル。
「ゾクゾクするからその目で見るのやめろ。第1俺らがお前を敵に回すメリット何一つねぇよ。死ぬよりも苦しい地獄見せられて死ぬ事すら出来ずに苦しみ続けるなんて苦行誰が望むんだよ」
「分かってるならいい」
「勇者には同情するぜ。さすがに手を出した相手が悪すぎるな。こんな性格悪い奴他にいないのに」
やれやれと首を横に振るハンニバル。
「生かすも殺すも思いのまま、この世界の神のような奴に手を出すなんてな。盗賊神の名は伊達じゃねぇのに」
※
宿に戻ったら凄い景色が広がっていた。
「そんな………私とダーリンさん以外にもパラグラム・ガーデンがいたなんて………」
「ふふふ………私もパラノイア・ガーデンなのですよサーシャ様」
サーシャとルゼルが遊んでいた。
相変わらずパラノイアかパラグラムかは定まっていないようだな。
「ダーリンダーリンめっちゃウケねー?パラサイト・デーガンって何なんだろうね♡」
そして原型がなくなった。
「………」
「それより知ってる?ダーリンマジやばじゃね?鬼やばいっしょ」
何がやばいのか言ってくれないと反応に困る。
「勇者パーティが四天王の1人見つけたんだって」
見つかってくれたか。
どうやら奴は俺の言いつけ通りに動いているらしい。
「………」
「ついに私たちの真の力を思い知らせる時がきちゃったっしょ、これは♡」
「そうですよ!ここで1発デカいの打ち上げて盗賊のイメージ変えましょうよ!サーガ様!」
ルゼルのテンションがすごい上がっていた。
ちなみに盗賊のイメージに関しては俺は今のままでもいいと思っているけどな?
そんなことを思いながら作戦について思い出す。
今回のハンニバル戦でリディアを引き込む。
「ダーリンさんダーリンさん」
サーシャが俺に話しかけてくる。
というよりこいつ俺の名前をもしかしてダーリンだと思い込んでるのか?
「X闇の協定Xが結ばれし年の出来事を覚えていますか?」
いや、知らない、なんだその協定。
「あれは忘れもしない300年前の話です。あ、私実はこんなに若く見えますけどエルフなので300年以上生きています」
そういう設定なんだな分かった。
「………」
「その反応はご存知なようですね。流石私の見込んだバタフライ・ガーデンの1人………。それを考えてお話があるのですが、失われし楽園の存在可能性について………」
ベラベラ話し始めたが右から左に流すことにした。
「そう、そこでです。私は言いました『この決定は無効です!ありえませんよ!こんな婚約認めません!結婚してください!ダーリンさん!ダーリンさんに相応しいのはこの私だけです!』と」
何で俺求婚されてるんだ?
そう思っている間にサーシャは俺に跪く。
「そう。これは300年の時を超えた運命の出会いなんですよ、ダーリンさん。この【湖の女騎士】サーシャは300年もの間1人でダーリンさんだけを待っていたのです。さぁ、指輪を通してください。今こそ私は貴方に相応しい女騎士になれたでしょう」
どういう設定なんだ?それは
「………」
ひたすら困惑していると険しい顔をしたサーシャが口を開いた。
「まさか………ダーリンさん記憶が………?」
「ぐすっダーリンそんな過去があったんだ………まじ泣けるし。しかも現実は厳しすぎっしょ」
「ぐすっ………そうですよ。私は凄く感動する再会を見てしまいました」
そしてビクティ、ルゼルは何で泣いてるんだ?
こんな何一つ本当のことがないであろう話でよく感動できるな?
そんなことを思っていた時
「あ、ダーリンさん私ここで寝ていいですか?今日は」
「………」
首を横に振ろうとしたが俺の顔を両手で挟むとサーシャは無理やり頷かせた。
「ふひひひひ………頷くんです………そこで………頷くんです………300年の時を経て再会した私たちの運命の夜になるんですから………ふひひひひ………」
「………はぁ………」
ため息をつく。
今日は眠れない夜になりそうだな。
「今からダーリンのいいところで尻取りっしょ♡じゃあ私からいっきまーす」
そんなことする暇あるなら寝ろと言いたいところだがどうやら寝そうにないなこいつら。
順番はビクティ、ルゼル、サーシャらしい。
「無口」
「チャラくない、です」
「イケメン過ぎ」
開始早々無理やり繋げたな。
そんなことしてたら終わらないだろ?
「ギスギスっしょ。俺に触れるなオーラまじかっこいいっしょ」
「素敵、です」
「き、き、き、………『貴様にこの俺の何が分かる?!』かつて私と共に歩んでいた200年前、対立するライバルに向けて言い放ったファンなら絶対に覚えておきたい一言です」
「ダーリン………そんな辛い過去が………」
「もうやめましょうよこのしり取り。サーガ様の辛い過去なんてもう見たくないです」
そうして尻取りはやめたらしい。
そんな過去ないからな?
ブックマーク評価ありがとうございます。
文章の見直しについて告知していましたが、ちょっと時間が取れなかったので確認などは明日行います。
申し訳ないです。
それとテンポを意識しすぎたせいで描写が足りないという指摘が多かったので加筆(場合によっては話の追加なども行う予定です)。




