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12話 奪う準備、距離を縮める

 予定通り俺たちは訓練に参加することが出来た。

 計画通りだ。


「ねねダーリンダーリン」

「どうした」

「どって訓練参加することにしたの?」


 俺は目で向こうを見るように促した。

 王城に向かって歩いていくパーティがいる方角だ。


「げぇ………まじ最悪だしあの女」

「狙いはそっちじゃない」

「どゆこと?」

「クロイツだ。あいつを惨めに泥水を啜らせて殺す」

「まじ?それ面白そう。てか!あれで終わりじゃないってマジだったんだ!」

「俺は弱者には手を出さないがあいつは違う。自分から手を出した自殺願望の強いやつだ。なら望むままに殺してやるだけだ」

「でもどうするつもり?」

「見ていれば分かるさ。少し長丁場になりそうだが根気よく内側から壊す」


 そのために訓練に参加する必要があった。

 こうやって近くにいることであいつらの動向なども見やすいから。


「ところで目をつけられないようにきちんと訓練には打ち込めよ?」

「ちょりーっす」

「もちろんルゼルもだぞ」

「は、はい!」


 さてと俺も動くことにするか。

 夕方まで待ち王城付近に誰もいなくなるのを待った。


 それでも監視の目はあるが。

 草むらに隠れて念の為透明化魔法を使う。


 そして千里眼。

 見るのはただ1つ。クロイツのパーティの現状だ。



 あの4人は王城に部屋を借りているらしい。

 クロイツの部屋に4人で集まって3人の女がクロイツを囲っている。


「クロイツ?大丈夫?」


 今声をかけているのは聖女のリディアとかいう女だったな。


「あ、あぁ、すまなかったな」


━━━━━━━━

【名前】クロイツ

【ジョブ】勇者

【レベル】58

【攻撃力】154

【体力】523

【防御力】168

【素早さ】175

【魔力】485


━━━━━━━━


 クロイツのステータスを覗き見してみたが前回よりは少しマシになっているようだ。

 この成長スピードは流石勇者と言ったところか。


 他の聖女とかのジョブとは違い勇者に選ばれる奴らは少ないらしく、本当に効率のいい狩場を選んで優先的に育てているという話は聞いた。

 その成果だな。


「あの男に出会ってからろくなことがねぇ………」

「ごめんなさいクロイツ。サーガさんが………」

「いや、気にするなよ。あのゴミのゴミのような考えに気付けなかった俺も悪い。盗賊風情が………」


 どうやらチーム内の雰囲気は意外にもいいみたいだな。

 弱体化したクロイツに腹を立てているのかとも思ったが違うらしい。


 まぁ、初めからそうなっているとつまらないから嬉しい話だ。

 俺はここまで待っていた絶好のチャンスを。


 お前からまずは一つ奪う。

 あとは止まらない。

 

 すべてを奪う。

 地位も名誉も何もかもを………ステータスリセットだけで終わったと思うなよ。


「でも………俺こそほんとに悪いなみんな。今日は俺が足引っ張っちまった」

「いや、今はクロイツの調子が悪いんだ。仕方ない事だ。それに私たちは仲間だろう?苦しい時こそ助け合うべきだ」


 もっともらしいことを言っているエルザ。


「そうだよ。みんなで乗り切ろうよ!」


 リディアも鼓舞しているらしい。

 士気が高まり団結力も高まっているように見える勇者パーティ。


 現状の確認を終えると俺は千里眼を終える。


「先にリディアかな。奪われる方が悪いんだろ?勇者サマ?」


 そう呟いて宿に戻ることにした。



 翌日。

 声が出るか不安だったが俺は勇者パーティの帰りを城門で待っていた。


「おいおい、盗賊が何様のつもりだ?」


 掴みかかってくる勇者。

 勇者特権というやつで好き放題やってるなこいつ。


 それから


「サーガさん?」


 近寄ってくるサヤ。

 俺は2人を無視してリディアに目をやる。


「聖女のリディアといったか」

「………」


 最初の印象が悪すぎたのか無言だ。無理もない話だが。


「話がしたい」


 そう言って小さく切った紙を渡す。


「嫌なら来なくてもいい。そこで待ってる」


 クロイツの手を乱暴に払って拘束から抜け出すと俺はその場から歩き去った。





 俺はそれからリディアが来るまで待ち合わせ場所で待っていた。


「待った?」

「いや」


 直ぐにやってきたリディア。


 俺が接触した理由を探りたいというところもあるのだろう。

 むしろそれを想定して来るだろうと誘ったのだ。


「何の用なの?」

「この通りだ」


 そう言って頭を下げる。


「!?」


 十分なほどの時間頭を下げてから上げると更に言葉にも出す。


「謝罪させてくれ。すまなかった」


 その言葉を聞いて顔に驚きを浮かべる彼女。


「どうしたの?」

「顎は大丈夫か?」

「へ、平気だけど」

「本当にすまなかった」


 心の底から謝罪する。

 俺としても悪かったと本気で思っている。


 演技の必要もない。


「………別にいいけど」

「それでも謝らせてくれ。悪かった。最低だよな、頭に血が上ったとは言え女を殴………いや蹴るなんてな」


 もう一度頭を下げる。


「い、いいよ。もう終わった事だし」


 目を丸くして見開いている彼女。


「それより、謝れるんだ」


 以前にも聞いたことのあるセリフを返された。


「あぁ。これからは共に戦う仲間だ。問題は解決しておきたくてな」


 そう言うと小さく笑うリディア。

 意外な会話でふっと緊張の糸が切れたか。


「ごめん。あなたのこと勘違いしてたかも。意外にいい人だね。話せば分かるし。何考えてるか分からないけど、でも私こそごめん」

「何が?」

「サヤのこと。好きな人がいるというのは聞いてたんだけどね。いきなりあんな格好して前に出てきたら驚くよね」

「………そうだな。だからカッとなった」

「あなたの事大事にすべきだって言い聞かせておけばよかったなぁって。そうすれば、こんな事にもならなかったし。はぁ、馬鹿だな私」


 予定通り俺へのイメージは大分良くなっただろうか。

 今日のところはこんなものでいいか。


「時間を取らせたな」


 そう言って立ち上がる。


「もういいの?」

「あぁ。謝罪したかっただけだ。胸のつっかえが取れた。こう見えて夜もあまり寝られない日があったからな」

「そうなんだ。意外だね」

「とにかく悪かった」


 最後にもう一度謝っておく。


「もう、いいよ。謝罪禁止」


 そう言って指を1本立てる彼女。


「じゃあね。訓練頑張ろうね」


 彼女は歩き去っていった。

 今のところ予定通り、か。


 一回こうして接触できたなら後は簡単だ。

 クロイツ、俺にやられた時の精神的ダメージはしっかり休んで回復したか?


 これから本当の地獄を見せてやる。

 終わったと思ったときに来る一撃は重いと思うぞ?




今日も何とか更新できました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公は奪うのはいいけど奪ったものに責任はもってほしいな 最低のクズにはならないでほしい
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