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11話 特別なスキルは必要ない


 剣をナイフで受け流し続ける。

 やはり演技よりこうやって本気で戦う方が戦いやすいな。


 手を抜くよりこっちの方がやはり自然に終わりそうだ。


「………何のバフなんだ、これ………急に速度が………」


 ステータスの速度は間違いなく落ちているが、動きとしての速度は確かに上がっている。

 今まで動いていないようなものだった俺が動き出したからな。


 0と1では当然変わる。

 速度が変わったことに気付いたのは間違っていない。

 

「………」


 間違いがあるとすればそれはバフじゃなく、自分のステータスを1桁減らすデバフがかかっていることだ。

 口が裂けても言えないが。


 向こうから見れば手を抜かれてるようにしか見えないだろうし。


「………」


 小さな隙を狙い着実にダメージを与えていく。


「………何だこの動き………私の方がステータスは高いはずなのに………」


 確かに今のステータス差では彼女に利がある。

 しかし俺にとってはこの程度誤差だ。


 強さを決めるのはステータスが全てではない。勿論圧倒的にステータス差があれば話は変わるが。

 それ以外ならば戦略や経験も勝ち負けを分けるが、それらを持ちステータスにも恵まれたこの天才に普通の人間なら勝てないだろう。


 しかしここにいる俺は転生者、前世で弱かったころに身に着けた足運びとナイフの扱いでシャロ程度なら勝てる。

 たかが10年程度の経験で俺を超えたと思うなよ。


「そこだ」


 喋っていてがら空きだ。


 今度は俺の右手のナイフに目をやりすぎだ。

 そっちを囮に左の靴裏に仕込んだナイフでシャロの足に傷を入れる。


「今何処から!何故私の攻撃が………入らない!くっ!なんだこの動きは!目では追えるのにまったく読めない!盗賊はこんな動きができるのか?!それになんだ今のは……靴に武器だと?!」


 そろそろいいか。


「がっ!」


 シャロの足を狩り倒すと首にナイフを押し付ける。


「チェックメイトだ」

「な、何が………」


 ここから逆転はない。


━━━━━━━━

【体力】743/958


シャロ

【体力】54/958

━━━━━━━━


「しょ、勝者!サーガ!」


 審判が俺の勝利を告げた。


「私が………負けた………?」

「ギルドマスター!大丈夫ですか?!」


 周囲の奴らがギルドマスターを助けに来た。

 

「サーガ………君はいったい………何者?」

「………」


 首を横に振る。

 何者でもないただの1人の盗賊だ。


「すまない。ただ目が眩んだだけだ。1人で歩ける」


 シャロは助けに来た奴らの手を払い除け俺に目を向けた。


「ギルドに来てくれるかい?そこで待ってるよ」


 そう言って彼女は先に舞台から姿を消した。

 そして………残り2人の方に目をやった。


 ビクティとルゼルの方だ。


「おーっと!あちらも予想外の展開だったがこっちはもっとすごい!挑戦者の圧勝です!」

「うおおぉぉ!!!すげぇぞ!あの金髪のねーチャン!!!」

「いや、あっちもすげぇぞ!あの黒髪の子!2人ともとても戦うような格好じゃないのにBランクの冒険者をワンパンだぞ?!」


 どうやら見るまでもなかったらしい。

 というよりステータスを隠す気がないのか俺たちの試合より注目されることになっていた。



 俺がギルドに戻るとすぐ様ビクティとルゼルが飛びついてきた。


「私めっちゃ強くなったっしょ?ダーリン♡」

「私もすごく強くなりました!サーガ様のおかげです!」


 無言で頷く。

 そうだな。2人ともかなり戦えるように見えた。


「全部サーガ様のおかげですね」

「そうそう。ダーリンのおかげだし♡」

「待たせたね」


 そうやって待っていたらギルドマスターのシャロが戻ってきた。


「みんな見事だったよ」


 そう言った後に俺を見るシャロ。

 どうしたのだろう。


「勝たせるつもりは少しもなかった!」


 と大声で白状された。

 周囲の目が俺達に集まる。


「ギ、ギルドマスターどうしたんですかい!」

「マスター?!何を?!」


 カイサを始めとした冒険者達がギルドマスターの横に駆け寄った。


「すまない、おごりがあったようだ。私はここにいるサーガに負けるつもりのないゲームを挑んだ。しかし、負けた」


 そう言って俺を見てくるシャロ。


「接戦までもさせないつもりだった。私は君になら圧勝出来るだろうと考えていた。しかし私は負けた。完敗だ」


 一瞬だけ下を向くシャロ。


「認めよう。君たちは私が責任をもってランクBにしておく」

「べりべりはっぴーじゃんそれ♡」

「ほっ………これでサーガ様の足を引っ張らなくてすみます」


 2人もそうやって喜んでいる。


「3人のカードを預かるよ」


 そう言われたので俺たちはカードを預けた。

 それを持ってシャロは奥へ向かおうとするがこちらを向いて一言


「サーガ。君には一緒に来て欲しい」

「ご指名じゃんダーリン♡」

「ここで待っていますから」


 コクリと頷いて付いていく。


「適当に座ってよ。すぐに終わるから」


 ギルド内の職員専用の部屋、そこに置かれた椅子に座った。

 中には俺とシャロ2人だけだと思われたが何故かカイサも付いてきていた。


「何者なんだい?サーガは」


 シャロが作業を始めながらそう口を開いた。


「ただの盗賊だ」

「いや、そうじゃねぇのは分かってる」


 答えたのはシャロではなくカイサ。


「先も言った通り、私は勝たせる気は微塵もなかった」


 そう言って真っ直ぐに俺を見つめてくるシャロ。


「自分で言うのもなんだが私は1000年に1人の天才と呼ばれている。まだまだ若いせいで荒削りな部分もあるがそれを含んでも私は類を見ない天才だった」

「………」


 無言で続きを促す。


「そんな私に接戦とは言え。勝つ。偶然でできるとは思えない。もしかして有名な貴族の子供なのかい?」


 首を横に振る。

 だがそうしても気を悪くしたような様子は見せないシャロ。


「まさか………こんな化け物がこの世界にいるなんてね………ほんとに世界は面白い」


 そう言って立ち上がったシャロは俺に手を差し出してきた。


「これからも良きライバルでありたいものだ」


 握り返す。


「私が認めた男だ。リタイアしてくれるなよ?」

「坊主すげぇじゃねぇかギルドマスターに認められるなんて。嬉しくねぇのか?」


 喜ぶリアクションをするところだったのか?今のは?


「いや、ちげぇわ。こいつ緊張して声も出ないみたいですわギルドマスター」


 カイサが違う受け取り方をしてくれたらしい。

 助かるな。


「すまないな。表では初めての敗北で照れくさくて言いにくかったんだ。これからよろしく頼むよサーガ。私の………初めての男。これからも末永くよろしく頼むよ」


 一瞬だけビクティがよく見せるタイプの目になったシャロ。

 それに今の最後の言葉少し寒気がしたが………気のせいだといいが。

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