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9話 ギルドマスターとゲーム

 宿に戻ってきた俺は早速今後の予定について確認することにした。


「どったのダーリン」


 眠そうな目を擦りながら俺の横に座ってくるビクティ。


「………」

「ん?【勇者育成計画?】こんなの何処で手に入れたん?」

「適当なやつから奪い取ってきた」

「適当な奴って、こんなの持ってないっしょ?適当な奴は」


 そこまで言って俺のスキルに気付いたらしい。


「めちゃくちゃすぎっしょ。相変わらず持ってなくても虚空から奪い取るなんて、で何書いてるん?」

「これまでの計画とこれからの計画」

「今何処まで進んでるん?」

「ここだ」


 俺は指で示して彼女に伝える。


「まだ四天王を倒す前の段階だな。そこまでは一応いっていたらしいが………くくく………」

「何笑ってるん?」

「計画が崩れたからだ」


 アイテムポーチから1つのアイテムを取りだした。

 あまり使わないし使いたくないと思っていたアイテムだが、あのクズ勇者野郎には躊躇なく使用していた。


 とは言え、そうやって誓ったものを躊躇なく簡単に使う俺も人のことは言えないか。


「何これ?リセットの小瓶?」

「おかしいと思わなかったか?俺と勇者の決闘」

「確かに、鬼遅かったよねー勇者。関係あるん?」

「このアイテムは使用された者のステータスを強制的にリセットする」


 ここまで言ったら何をしたのか分かるかと思って見ていたが合点がいったような顔をするビクティ。


「………てことはあの戦闘中これでステータスがリセットされた系?まじやばじゃね?」

「そうだ。俺がリセットした結果あいつはステータスがオール1になっていた」

「やばすぎっしょ………」

「普段は使わないがな」

「どって?そんなのあればガンガン使って世界征服出来るじゃん笑」

「そんなものに興味が無い。俺は降りかかる火の粉を払うだけだからな」


 今回降りかかったクロイツと言う名の火の粉を俺は振り払おうとしただけだった。


「払うってか、吹き飛ばしてるって表現の方が近くね?♡」

「ま、その辺の判断は任せる」


 そう口にして俺は作戦を立て始める。


「この作戦俺達も参加する」

「え?できんの?」

「一般兵として参加することが出来る」

「まじ系?」


 黙って頷く。


「魔王退治と言ってもあいつらだけでやる訳じゃない。他にも冒険者を何人か連れていき勇者を中心に動かす」

「へー。でも大丈夫なん?あのパツキン勇者がダーリンのこと報告したら」

「しない。盗賊は最も忌み嫌われているジョブ。それに勇者が負けたなんて口が裂けてもあいつは言わない。少なくともあいつのようなプライドの高そうなやつは死んでも口にしない」


 だから、あの時の報告するというのもただのハッタリだ。


「ダーリンすご!あの一瞬でそんなことまで分かってたの?!」

「………」


 大したことじゃないだろ。

 観察してたら誰でも分かる。


「でもこれに参加してそもそも何する系なの?まさかパツキン馬鹿と仲良くしたいなんて言わないよね?」

「聞きたいか?」

「………アァ………」


 珍しく汗を流しているビクティを見て訝しんでステータスを見て見たら【恐怖】状態になっていた。


「悪かった」

「はっ!今のは………」


 大量に汗を流しているビクティ。


「すげぇ………ゾワゾワしたけど何今の?生きた心地がしなかった系なんだけど」

「忘れろ」

「えぇ………教えて欲しい系なんだけど?それともあれ?本物の英雄は目で殺せるってやつ?」

「近いものだと思ってくれ」

「すごくね?!ダーリン!」


 殺されかけたというのによくまだ引っ付く気になれるなこいつ。


「ねね私ぶっちゃけていい?」

「何を?」

「私Mなんだよね。今のダーリンのSの波動でまじ目覚めちゃったんだけど」


 目覚めなくていい。



 次の日。

 目が覚めた俺たちはギルドに来ていた。

 用件はもちろん作戦に参加するためだ。


「魔王討伐作戦に参加したいんだが」


 簡単に用だけを口にした次の瞬間。

 職員が黙り込んで、カイサが近寄ってきた。

 

「サーガ、おめぇ何でそれを知ってんだ?」

「色々あってな。人伝に聞いた」


 そう言うと職員に目をやった。


「手続きなんかはどうすればいい?」

「は、はい。それなのですが………お客様方のランクでは………」


 反応で聞かなくても分かった。

 ランクが足りないか。


「何処まで上げればいい?」

「最低限がBランクです」

「分かった。上げよう」


 そう言って依頼を取りに行くが。


「面白いことを言うな君は………待て」


 声が聞こえた。

 声の主は背を壁に預けて腕を組んだ状態でカウンターの奥に立っている。


 美しく流れるように背中まで伸ばした金色の髪に金色の瞳を、俺は忘れることはないかもしれない。


「あ、あれは………」

「あの人が出てくるなんて………嵐でも来るのか?」


 そんな声が聞こえてくる程の金髪の女性が立っていた。


「お出ましか………」


 ここらでは有名なはずのカイサすらも敬っているような視線を送っている存在。


「ギ、ギルドマスター?!どうしたんですか?!こんなところに!」


 職員がその人の身分を教えてくれた。

 なるほどあれがギルドマスター、か。


「ランクBに上げるのに平均どれくらいかかるか分かるかい?少年」

「俺が少年ならあんたは少女だろう」


 そう言い返す。


「ははは、世辞が上手いのだな少年」


 ギルドマスターと呼ばれた少女は長い金色の髪を揺らしながらカウンター脇を通ってこちらにやってくる。


「何この人すげぇ、まぶい!オニマブだわ!」


 そんな少女を見て態度を微塵も改めない奴が横にいた。


「てか、めちゃキュートじゃん!めちゃきゅーだよ鬼キュー!やば!ダーリン!やばいよこのチャンネー!」


 お前のその言葉遣いの方がやばい。


「はは………ありがとう」


 ほら、今まで崩さなかった顔を少し崩して苦笑いしてるぞこの人。

 しかし、それでも俺を見てくるギルドマスター。


「君がサーガでいいかな?」

「そうだが」

「実は待っていたんだ。そこの職員に聞いてね。ランクEなのにスライムを50匹始末してきた化け物新規がいるって」


 昨日の1件で目をつけられたらしいな。


「どうやら作戦に参加したいらしいね」

「………」


 黙って頷く。


「私とゲームをしないか?その結果次第では君、いや君達のランクをすぐにBまで上げよう」


 彼女の口から飛び出た言葉は意外すぎる一言だった。

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