表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

嵐の前の静けさ

 宇宙暦563年、地球は人類が起こした環境破壊によって荒廃した星に変わり果ててしまい、人類は地球が滅ぶ前に月へ火星へと次々と進出していた。


 宇宙に生活圏を伸ばすようになった人類であったが過酷な環境下である宇宙や惑星に人類は大いに苦しむ事となる。そのため人類は過酷な環境下でも対応できるよう人体を改造しサイボーグ化していった。そしてサイボーグとなった人体をよりよく活かすために超高性能AI「マスターエデン」を人類15つ目の拠点である「ジンマ星」に作り上げ、機器との連携することでその指示に従うようになっていった。


 サイボーグとなりAIと強く連携した人類はやがて「スペーストランスレーター」と呼ばれるようになり着々とその数を増やしていった。一方で機械化を拒む人類も多く存在しそれらは「ナチュラルアース」と呼ばれ両者の溝は深くなっていった。


 人類の15つ目の拠点「ジンマ星」は人類が広げた宇宙の生活圏内において一番中心の位置に存在している。拠点になってから何百年もたちある程度高い建築物が立つようになった。その中にひときわ目立つかなり高い建物がそびえ立っていた。「メッショナルタワー」と呼ばれタワー内に超高性能AI「マスターエデン」が存在し宇宙館ネットワークを通じて様々な情報提供を行っていた。いわばサイボーグ化した人類「スペーストランスレーター」の司令塔とも呼べる。


 そのタワーの最上階は議会としての機能を持っており街全体を見下ろすことができる議会室にて本日もまたサイボーグ化の是非についての議論がなされていた。楕円形を描いた大きな赤い机に9つの机が並べられ一番奥の座席にこの星の皇族で総長のジネラル・アーサーが座り、位の高い順から座っていく。


「果たして最高議長であるジネラル閣下自身がナチュラルアースであると言うのはいかがなものでございましょうか。ここにはマスターエデンが存在しいわば宇宙の中心なのです。いつまでも一族の掟に従わずジンマ星の皇族であり総長として革新していくべきではないでしょうか。あなたのご子息もトランスレーター化したのです。」

ジネラルに最も近い席のスペーストランスレーターでありジンマ星軍総司令であるマクサー・アルデニスが物々しく言った。


「これは我々人類がAIや機械に頼りすぎて道を誤らぬように作られた掟である。簡単に覆せるわけもなかろう。あと掟を勝手に破り行方知れずバカ息子のことを話しに出すな。やつならとっくに破門済みだ」

ジネラルは先祖から自分に引き継がれてきた一族の掟を否定された事と思い出したくもない愚息のことを言われ顔をしかめる。


「しかし総長、今や総人口の七割がサイボーグ化しているのも事実です。我々の人類革新のためには全人類のトランスレーター化の義務を!」

議長席から離れた席に座るトランスレーターの一人が叫ぶ。


「何も手術を受けなくても外部接続型の端末を使用すれば情報は得られる。何故そこまで人類のトランスレーター化にこだわる。」

ジネラル・アーサーに続きナチュラルアースの議員が続く。

「ここまで固執するには何か裏があるはずです!あなたは軍部側の人間です。マスターエデンを完全に軍事AIへと変える気ではないでしょうか」


「なぜそう疑うのですか。今やマスターエデンは人類の希望。そんなことができるわけがない、ですから我々は人類の革新を…」


そうして議論は長く続いたが決着がつくことがなかった。


会議はまた次回持ち越しとなり目を三角にしたマクサーが出てくる。

(年寄りめ、これでは計画が進まんではないか。やむを得まい強引にでも計画を実行するしかない。)

マクサーは近くにいた側近に目配せするとうなづきどこかへ走り去った。マクサーは自身が企む大きな野望のための第一歩を踏み出したのであった。


ジネラル・アーサーは護衛と共に自身が持つ皇族専用のタワーに帰還した。厳重に警備された門を抜けた先には大きくきれいな庭があるのだが今日は違った。大きな足跡が縦横無尽に駆け回り、所々焼け焦げたところがある。

(またあの馬鹿娘か…)

ジネラル・アーサーは頭を抱えていると執事がボロボロの格好で走ってこちらに向かってくる。

ぜぇぜぇ息を切らしながら執事が弁明した。

「アーサー様申し訳ございません。止めはしたのですがなにぶんアクティブアーマーの力が強くお嬢様を止めることができませんでした。」


アクティブアーマーとは人類がサイボーグ化するまでは5mほどの高さがある人型ロボットに乗ることで宇宙進出し惑星探査を可能とした。耐久度が高くどこでも活動ができ装備を変えることで穴を掘ったり空を飛んだりと様々なことができる。当然兵器を装備することで軍事兵器としての運用も可能である。現在は宇宙に適応したサイボーグ、スペーストランスレーターの活躍により巨大で小回りが効かず関節を狙われるとひとたまりもないアクティブアーマーは衰退の一途をたどっていた。しかし一部の物好きが乗り物として改造したり新たに新造をしていることもある。そんな物好きの一人がジネラル・アーサーの娘クレハ・アーサーである。


ジネラル・アーサーは巨大な足跡の先にあるタワーの隅に建てられた古びた小屋へと足を運んだ。

巨大な整備用の機械と大小様々な部品が所狭しと並んでいる。油の独特の匂いに顔をしかめながらジネラル・アーサーは立膝をつかせた白いアクティブアーマーの下で作業している娘に話しかけた。

「あれほど庭を走るなといったのにまたこんなことをしよって…」


声をかけられたことに父親の存在に気づいたクレハが作業の手を止め顔を出す。


髪は母親譲りの美しい金髪を上に二つに結びにし澄んだ青い瞳を持ち一見人形のような美しい顔立ちをしているが今は煤によって汚れておりその美貌が霞んでいる。


「あっ父上帰ってたのね、おかえり。どうも関節の調子が悪いのよね〜やっぱザゲック社製よりヅドット製の方が…」

自分の行ったことなど気にもとめずぶつぶつと独り言を言うクレハに対しジネラル・アーサーは呆れかえってしまった。

「お前も皇族の生まれならその自覚を持ってもっと清楚に生きれられんのか。よりにもよってこんなロボットに夢中になるとは。全く誰に似たのやら…」


「ロボットじゃなくてアクティブアーマーよ!名前も考えてあるのヴァルサーガっていうの!」

とクレハが自信満々に胸を張って答えた。

クレハは皇族特有の資金とコネを使い部品をありとあらゆるところから集め造られたヴァルサーガは現存するアクティブアーマーでも驚異の性能を誇る。ただ高性能の機械を組み合わせただけでなくクレハの母が考案しクレハが実現した独自のシステム「トレースアーマーシステム」により搭乗者の思考を読み取ることでアクティブアーマーを瞬時に動かすことができ反応速度はピカイチである。クレハはこれによってアクティブアーマーを手足のように動かし日々改良を重ねていた。


「母上の意思を継いで完璧なものにしたいの。それがいちばんの親孝行だと思うから…」


「私にも親孝行をしてくれ。兄のジーマがトランスレーターとなり行方知れずのままになった今ナチュラルアースであるお前だけしか皇族の後継になる資格を持っていないのだ。」


「父上…わかってる。これが完成すればちゃんと政治学の勉強もするし皇族についての自覚も持つよ。ただ今はこれに集中させて。大丈夫もうすぐできるから。」


(ジーマがもっとまともだったらこの子にこんな負担を強いることなく自由なことをさせられたのに…)

ジネラル・アーサーは肩を落とし行方不明となった息子のことを思った。そしてふと近くに表示されていた電子版のカレンダーが目に入りジネラル・アーサーはあることに気づく。


「そういえばもうすぐ18歳の誕生日だったな。何か欲しいものはあるか?またパーツの部類だと思うが…」


「そうねぇ…システム回路の接続パーツ…ヅドット製の股関節フレーム…いやスラスターの調子もあんまり良くないし…」


「じゃあ『メッショナルタワー』内にあるラボで見てもらうっていうのはどうだ?その日に会談があるし話が私がつけておく。パーツ類は運んでおくし整備機械類ならあそこは大体揃ってるだろ。テランダー博士にもみてもらえればいい。」


「ほんと!?一度あそこに行ってみたかったんだよね!テランダー博士にまた会えるなんて。あの人忙しいって言って全然会いに来てくれないもん。ありがと!最高の誕生日プレゼントだわ!」


ジネラル・アーサーは目を輝かせて笑顔を作る娘の姿を見てつくづく自分は娘に対し甘い親だなと思ってしまうのであった。


そしてその誕生日が長きにわたる過酷な戦争の開戦日になるとはその時誰も思いもしなかった。







 



当初の予定ではなろうあるあるの異世界転生にのかって未来のSFロボットが70年代のロボット世界に迷い込むというものでしたがネタをいざ書いたら前振りがひたすら長くなったのでせっかくだしSFをがっつり書いてみようかなとそのあと転生させたいです(それまで書き続ければいいのですが)。 


ファンタジーゲームのパロメータやスキルを過度にいじって異世界を楽しむのがこの小説家になろうにて多く展開されていますがこれまでそう言ったファンタジーに触れなかったためはっきり言ってついていけない状況ではあります。無理に流行りに乗らず自分の書きたいものを書いていけたらなと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ