表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹と生きる  作者: 池田瑛
第1部 Δάφνη
12/73

11 10歳 お父さんの職場訪問① 森へと降りていきます

 ついに世界樹の幹を降りて森に行きます。


 苦節10年、やっと故郷の土を踏めるということでしょうか。家は全て木造だし、家具なども木材だった。木には触れあっていたけど、土とは縁が無い生活をしていた。


 我が家は朝から、私が外出するということで大騒ぎだ。


「森の中でお父さんとはぐれちゃったら、闇雲に動いたりしないで、木の上でじっとしていなさいね」と、母は朝からずっと、私のことを心配し続けている。


「はい、お母さん」と答えつつ、木の上だったら、逆に父が見つけ難いような? とも思う。けれど根本的な考え方は、前世などでも言われていたように、山などで遭難したら、その場を動かないで救助を待つということと同じなのだろう。


「Δάφνηが見えるからって、自分で帰ろうとしては駄目よ?」


「はい、お母さん」



 なるほど……世界樹は森の中の何処にいても見えるから、格好の目印だ。森で迷子になったら、世界樹を目印に自力で帰ろうとしていたかも知れない。

 私は頷く。


「じゃあ、これを着なさい」


 母が持って来たのは、葉っぱの服だった。鎖帷子のような、葉っぱが大量に織り込まれた服であった。葉っぱと葉っぱがつなぎ合わされて作られたTシャツとも形容できそうだ。


「こ、これは?」  

 

 森に行くのだから、森と同化するため、葉っぱを着るのだろうか? でも、それだったら外套が緑色だからそれで十分な気がする。


「これはΔάφνηの葉で作られた下着よ。怪我をしても、これを着ていれば大丈夫よ。さぁ、着替えてきなさい」と母は、私に強引に服を渡す。


 着心地はよい。というか、葉っぱだから重みもない。体にどうかするような感じだ。

 それに、世界樹の葉っぱで作られた下着とは驚いた。きっと、これを体につけている限り、怪我などをしてもすぐにこの世界樹の葉っぱが、癒やしてくれるのだろう。

 フィールド・アスレチックで毎日遊び、落下の仕方が悪かったときなど、骨折をしたりもした。だが、屋上に敷き詰められた世界樹の葉が直ぐに痛みを消し、そして怪我を治してくれた。

 この下着、葉帷子にも同じ効果があるのだろう。これを着ている限り、不死身なんのじゃ無いだろうか?


 そういえば、世界樹の葉って、ゲームの世界ではかなり貴重なアイテムで、一枚しか入手できなかったような気がする。HPがゼロになって行動不能になったキャラクターをまた戦えるようにするアイテムだった。

 考え方によっては、かなり贅沢なのではないだろうか?


 それに……前世の神話では、エルフって長寿、長命ということもあるのだけど、それ以外にも不死であるというお話もある。実際は不老不死ではないのだけど、不死という神話が生まれたのって、世界樹の葉をまとった服を着ていたのが原因ではないだろうか?


 怪我をしても、世界樹の葉の効能で直ぐに傷が癒える。それを、何も知らない人が目撃したら、エルフって不死なんだぁ、と誤解してしまうだろう。葉っぱの枚数からして、武蔵坊弁慶のように弓矢で蜂の巣にされても、問題無さそうな気がする。

 いや……実際に試して見るつもりはないけれどね……。


「それじゃあ、行ってきます!」


 私は、家の外へと踏み出す。


 

 ・


 森に行くと行っても、まずは世界樹から降りなければならない。まずは世界樹の幹へと行き、そこからは非常階段のようにジグザグの道を下っていく。道と行っても、等間隔で木の棒があるだけ。イメージとしては、学校などにあった遊具、うんていの上をひたすら歩くというイメージだろうか。


 高度600メートルのうんていの上を歩く。高所恐怖症の人だったら、たぶん無理だね。

 それに、突風とかで体のバランスを崩して踏み外したりしたら危ない。まぁ、その時は木の棒に掴まれば落下を免れることはできる。


 うん。フィールド・アスレチック施設で朝から晩まで遊んだ経験が活かされている! というか、フィールド・アスレチック施設での経験が無かったら、たぶん、万が一の時にリカバリーが出来なくて、地上に転落していると思う。


 梯子を降ったり、ロープで降りたりすると、滑車がある場所に着いた。ロープの先は、森へと続いている。この滑車で一気に森へと降りるのだろう。


「トクソ! おはよう」


「よう、パウロ。おっ! 今日は娘さんと一緒か。始めまして。俺は、トクソ。この滑車の番をしている」


「初めまして。エステルです」と私は挨拶をする。

 家族以外の人と初めて会った。このトクソさんって人もイケメンはイケメンなのだけど、お父さんがさわやか系イケメンなら、この人は肩幅も広くて、マッチョ系イケメンという感じだろうか。


「本当にしっかりした子だな。ついにこの日が来たって感じだな」


「あぁ、ワクワクするぜ」と父は張り切っている。


 パウロさんや……なぜ、父であるあなたがワクワクしているのか……。あなたは保護者ですよ〜。


「エステルちゃん、最初だから説明しておくぜ。あ、パウロ、お前が説明するか?」


「いや、任せる」 


「この滑車に掴まっていけば、森につける。大丈夫だとは思うが、途中で手を離しちゃ駄目だ」とトクソさんが滑車の使い方をレクチャーしてくれる。大体は、アスレチック施設での使い方と同じだ。


 違う点は、帰り方、つまり森から世界樹へと上がるときの使い方だ。


「森から帰るときは、まず滑車を掴む。そして、上がる準備が出来たら片手をあげて左右に振ってくれ。そうすれば、俺が滑車を動かす。忘れ物をしたとか気付いても、途中で止めることはできないから気を付けるんだぞ」とトクソさんが説明をしてくれた。


 世界樹から森へと降りるときは、簡単だ。重力に従って滑車が動いてくれる。だが、森から世界樹へと滑車で登る場合は? 

 

 その答えが、この滑車の番をしてくれるトクソさんという訳だ。


 森の方で合図をすると、トクソさんがロープに繋がった重石を世界樹から落とす。すると、森の方にある滑車が引っ張られていく。それで、世界樹へと戻ることができるという仕組みだ。

 帰りは、世界樹をよじ登るというようなことをしなくても楽に帰れるという仕組みで、かなり考えられているなぁと思った。 

 大変なのはトクソさんで、落とした重石を毎回引き上げなければならないということだろう。


「じゃあ、父さんが先に行っているからな」と父は滑車で森へと降りていく。  

 

 そして、いよいよ私だ。


「森の恵みを楽しんできてくれ」とトクソさんに見送られて私は滑車を掴み、台から足を離す。 


 その瞬間、私は滑り始める。


 滑車はどんどん加速する。


「あぁあ〜」と私は滑車で滑りながら言ってみた。眼下に広がる森を見下ろしながら滑車が滑っていく。ロープウェイで景色を眺めるのの超高速バージョンだろう。森は緑色でみずみずしく輝いている。


 やっぱり家の屋上にあった滑車とは臨場感が違う。気分はターザンだ。


 って、滑っていく距離が長い……。今までアスレチックで経験した速度を超えた滑走速度だ。


 風圧も強い。


 頬の筋肉が風圧でマッサージを受けているみたいだ。「あぁあ〜」と叫んだら、開けた口に空気が入り込んで、頬が風船みたいに膨らむ。たぶん、新幹線より速いかも知れない。


 って、着地、大丈夫だろうか……と、滑走しながら私は不安になる。滑車で着地に失敗すると、反動で地面を10メートルくらい転がることになって、結構痛いんだよね……。世界樹の葉がなきゃ、骨折コースだよ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ