表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

「『わたし』の章」の補足の章  〜せかい、セカイ、世界〜

幼い頃、とても不思議に思っていたことがあります。

それは「ぼくはなぜ、ここにいるのだろう」という実感です。だれにも聞かなかったし言わなかったけれども、なんとなく、いつもそんなことを考えていました。


だって不思議ですよね。気がついたら、電子雲のなかに現れる電子みたいに、そこ(世界)にポンと立っていたんですから。

そんなわたしにとって、世界はいつもびっくり箱でした。


なぜこの人は、いつも自分に優しくしてくれるのだろう。

なぜこの友達は、たまに真っ赤な顔で自分に石を投げるのだろう。

なぜこの女の子と話していると、自分の胸がドキドキするのだろう。


 なぜ、ナゼ、何故。

問いは答えを呼び、そして新たな問いを連れてきました。現代っ子に生まれていたら、片っ端からスマホで調べて「へぇ、そうなんだ」とひとりでニタニタしていたことでしょう。真理を探求するマッドサイエンティストさながら、危険な領域に足を踏み入れていたかもしれません。我ながら危ないところだったと額の汗を拭います。


 いずれにせよ、幼い頃に住んでいた世界は、自分の思惑より遥かに早い速度で回っていました。たくさんのなぜが溢れている世界。もっともっと多くのことを学びたい。知りたい。知識欲はだれしもが持っているものでしょうが、自分の矛先は、いつも人間に向けられていたように思います。


 人間こそが、ある意味でもっとも理解不能です。

なぜ絶対に宿題をやると指切りしたはずの友達が、次の日にはけろっと決意を忘れ、廊下に立たされているのだろう。なぜこの先生は、言われた通りにしているだけで、こんなにも褒めてくれるのだろう。なぜ自分の頭の後ろがわには、だれにも邪魔できない場所で世界をじいっと眺めている、もうひとりの自分がいるのだろう。


言葉にできなかった幼少期の疑問。それらは言葉に結びついて芽吹き、いくつかは氷解しました。けれども以前として堆積し続けているものもあり、いまでも診療の傍らで調べ続ける日々です。


 そんな幼い性分も手伝ってか、考え続けることは苦じゃありませんでしたし、人間への興味は人一倍でした。そして同居していた祖母の「医師は素晴らしい仕事よ」というマインドコントロールも加わり、わたしはこれまでの文集という文集に『将来の夢:医師』の二文字を書き連ねました。おそらくは生涯通じての皆勤賞ではなかろうかと記憶しています。


 そうして高校生を卒業し、予備校を一年経由、そして医学部合格し、晴れて厚い医学書を紐解いてみると、これがまた面白かったんですね。


 長い長いお預けのあとにご褒美が与えられた場合、ふたつのパターンがあると思います。

ひとつは甘い甘いお菓子になる場合であり、乗せた瞬間に舌感触良く、頬っぺたが落っこちてしまうケース。そしてもうひとつは期待はずれだった場合で「あれ、思ったほどでもないな」と落胆して路傍の石を蹴飛ばすケースです。


幸運なことに、わたしは前者でした。

「ふむふむ、人間の意識や感情は『脳』という場所で発生していて、なんと、まだまだブラックボックスとな。なるほど、解剖学も生理学もえらく複雑だ。よく分からない。でもなんか神秘的で、超面白いな」


わたしは『脳』を勉強するにつけ、つまらない常識で凝り固まった頭をハンマーで殴られた気分でした。世界を認識している『脳』そのものが、未だ謎で満ちているなんて。なかなか神様もにくいことをしてくれます。


幼い頃から月日が経ち、世界の自転の速さにすこしだけ慣れたつもりでしたが、まだまだヒヨッコ同然でした。いや、まだ孵化すらしていないのかもしれません。それほどまでに脳の問題は難しいです。


 そんなわたしを魅了しつづける『脳』の不思議。『わたし』という意識の謎。

 そんなわたしが見ている観測している知覚している、せかいセカイ世界。


 その不思議と魅力を伝えたい。

 いずれ一般向け、研修医向け、専門医向けに作っていこうと思いますので、興味のある方はお付き合いください。

そのほかにも、「これってどうなっているの?」という人体の疑問を投げ掛けてくだされば、力の限り(国内外の医学論文を使って)調べてみますので、ご一報を。ただいつ返信できるかはわかりませんのでご了承ください。

それでは、また。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ