第四話 紙
さて今回は同業者のお話
狩る側が狩られる側になることもあるんだよね。
それではスタート。
暗い部屋に一人の男が立っている。
その部屋には大きなスクリーンのような物がついている。
男が壁についているスイッチを押すとスクリーンに光が灯る。
そこにはフードを被った人物が写る。
それは人の形をしているが、フードのせいで顔が見えない。
そのため男なのか女なのか、年老いてるのか若々しいのかは分からない。
「来たな、ファルス。」
「はい。何でしょうパイシーズ様。」
男……ファルスがそう訊ねると、フードを被った人物……パイシーズが口を開く。
「不死の不死者殺しの噂を知っているな。」
「はい。不死者のくせして不死者を殺している者ですね……」
「あぁそうだ。その奴が今回の討伐対象だ。」
「よろしいのですか?今まで討伐に反対していたのはパイシーズ様だと聞いていたのですが……」
「いや、奴の行動も目に余る物が出てきた。それで考えが変わったのだよ。」
ファルスは不思議そうに首を傾げながら分かりました、と言い部屋から出ようとする。
そこに後ろから
「奴は能力を無効果する能力を持っている。気を付けろ。」
とパイシーズが声をかける。
ファルスは小さく頷くと部屋から出ていく。
その部屋にはスクリーンの明かりが残っていたがしばらくたつとその光も消えまた部屋は漆黒に包まれる。
「ふぅ。」
俺は謁見の間から出ると溜め息をつく。
「不死の不死者殺しの討伐か……」
噂には聞いていた。
東洋には不死者の身でありながら不死者を殺す同族殺しを存在を……
だが俺は半信半疑だった。
何故なら不死者になんて自我は無いからだ。
今まで殺してきた不死者は全員が全員何を言っているのか分からなかった。
だから今回の者も話が通じないし、同族を殺しているのも本能的なものなんだと思う。
大体不死者ごときが俺達の真似事をするなどちゃんちゃら可笑しい。
化け物は化け物らしく早く人間に殺されれば良いのに……
「ファルス様。謁見お疲れ様でした。」
「あぁすまない。ありがとう。」
そんな事を考えている間に祈祷場についた様だった。
巫女が話かけてくる。
「すまない。すぐ日本に行く準備をしてくれるか?」
そう俺が訊ねると巫女は淡々と
「はい。分かりました。それがパイシーズ様のお導きならば。」
と答えた。
ふむ、この感じは元々パイシーズ様に聞いていたな。
それなら話も早い。俺も部屋に戻って討伐の準備をしていこようか……
俺はそのまま祈祷場を後にした。
「こちらで間違いないですか?」
「あぁ問題ない。ありがとう。」
俺は運び屋から普通に運び込めなかった物を受けとる。
日本は意外と規制が厳しかった。
そのせいでこんなめんどくさい手を使って武器を持ち込まないといけなかった。
さてこれで武器は揃ったが不死殺しを探さないといけないからな。
俺は一応ネットや、噂話のような物で不死者の存在を仄めかしてみる。
これで食い付いてくれたら良いのだが……
そしてそんな噂を流してから1週間がたった頃、その出ると噂した場所に一人の少年が現れた。
その少年は背中に太刀を背負っていた。
その太刀を抜くと辺りを見渡し溜め息をついて帰ろうとする。
チャンスだ!
俺はゆっくり近づき攻撃を仕掛けようとした。
しかしその瞬間に不死殺しは刀を振り抜く。
俺はすんでのところで避けることが出来たが危なかった。
「誰かいる事は知っていたが殺しに来るとは思わなかった。その動きかた同業者か……」
俺は驚いた。まさか不死者が喋るとは思わなかった。
「何故、何故不死者の癖に自我があるんだ!」
「なるほどお前は今まで不死者に自我がのまれた奴しか相手にしてこなかったんだな……まぁどうでも良いが。俺はお前を殺すつもりはないさっさと帰れ。」
俺は色々と混乱しながら、不死殺しに攻撃を仕掛ける。
「っ!紙?」
奴もその攻撃を避けるがその避け方は普通の不死者と変わらない。別段能力を無効果することはないみたいだ。
(なんだ……只の噂か……)
「くっ。その能力は【紙】の不死者に似ているが……」
その通り。
声には出さないがこれは教団が開発した不死者の能力を使えるようになる武器を使っているからだ。
今回は【紙】の能力を改良した強度を自由に変更できる紙を武器にしている。
それに混ぜて何時も使ってる拳銃でも攻撃している。
不死殺しも太刀で攻撃を仕掛けてくるがその攻撃は当たらず俺が一方的に攻撃する形になっている。
「くそっ」
「はっ。不死殺しも対した事が無かったな。」
俺は拳銃を構える。
「それじゃあな。」
俺は引き金を引いた。
そこには黒いオーラを纏った不死殺しがいた……
「なるほど、【死】の不死者の破片で作った弾か……」
「何故だ!何故死なない!」
俺がそんな風に動揺しているといきなり現れた鎖で拘束された。
「魔術か……」
「その通りだ。知り合いから言えば「これは君の高い魔力でごり押しているだけだから正確には魔術とは言えないけどね」らしいがな。」
「だが、何故だ!能力を無効果は出来ないはずだ!それに出来たとしても傷を受ける筈だ!」
そう俺が言うと不死殺しは笑ってこう言った。
「お前は勘違いをしている。俺は別に能力を無効果している訳じゃない。不死を否定しているだけだ。元々は不死を肯定する能力だったんだがな……」
不死を肯定する?日本?
まさか……
「まさか貴様は!」
「さぁ想像にお任せするよ。」
奴は太刀を俺に向かって振りおろした。
「よかったのかい?殺さなくて」
「別に俺は人を殺す趣味はない。それに半殺しにするのに意味がある。」
「どういう事だい?」
「こうすることで奴が所属している奴等に牽制をかける事が出来るからな。」
「なるほどね。」
その二人の声は夜の闇に消えていく。
次週第五話 私