プレゼンを終えて
「グランプリを獲れましたね。これも皆様のおかげです」
ジョーブは上機嫌であたしたちを見回した。
「そんな…。私は何も出来なかったです…」
光は恐縮した様子で答えた。
「そんなことあらへんよ。ヒカリはんはうちらを精神的に支えてくれてたやないか。プレゼンで最後の一押しになったんも『落涙』の勇者ヒカリはんやで」
確かに勇者パーティーの助けになるという謳い文句は大きかったかもしれないわ。それでMePhoneの有用性が強調された可能性はあるわね。よくわからないけど。
「あはは。そうだったらいいんですけどね」
ヒカリは苦笑いしながら言った。
「勝利の余韻に浸るのはいいけど、仕掛けてくるかもしれない魔王軍についても考えないといけないわね。ヘイ、マザー。このメガネは販売コーナーに来た?」
あたしはMePhoneを出してドローンの情報を呼び出した。
『イイエ。顔ガ一致スル人物ハ来テイマセン』
MePhoneはすぐさま返答した。
「…もしかしたら魔法で顔くらい変えてるのかもね。魔導機に買いに行かせてる人もいるみたいだし」
「それだと判別出来ないですよね。魔導機の区別はつきにくいですし」
光は心配そうに言った。
「例の魔王軍の対勇者やな。何も起きへんとええんやけど」
チカゲは不安そうな顔をした。
「魔導機があるから大丈夫…と言いたい所ですがね。ウィルスがあるとなんとも言えませんね」
ジョーブも真剣な顔で考え込んだ。
「とりあえず光は会場に向かった方がいいかもね。何かあった時に観客守りやすいでしょうし」
あたしは光に提案した。
「…そうですね。その方が多くの人を守れます。沙夜ちゃんはどうしますか?」
光はあたしに聞いてきた。
「あたしはここに残るわ。何かあった時すぐイントゥザマザー出来た方がいいでしょ」
「沙夜ちゃん入りませんよね?!…まあそれなら私だけで戻ってますね」
光はそう言って振り向いた。
「ヘイ、マザー。光をステージまで案内して」
あたしがMePhoneに指示を出すとドローンが光の前に出てきた。
「助かります、沙夜ちゃん。ここ広いので迷っちゃう所でした」
光はそう言ってお辞儀した。
「でしょうね。光方向音痴だもの」
「そ、そんなことないです!それじゃ行ってきますね」
光はそう言って控え室から出ていった。
ーーー
「マシニクルの魔導科学というものはなかなか面白いな。我々にはない発想で作られているのが興味深い」
ロベリアは楽しげにプレゼンの様子を見ていた。
「そうでありますな。見たことない物ばかりで楽しいであります」
エリザもかなり楽しんでいるようだ。
「ですわね。近くに誰かさんがいなければもっと楽しめますのに残念ですわ」
チェリルは横目でカネダを見た。
「ふ、フン。ぼくの世界にもあんな物くらいあるさ」
カネダは謎の対抗心を燃やしてイスでふんぞり返っている。いちいちそういう反応されると気が削がれるのは確かだ。
「せめて解説でもしてくれるといいんだがな」
おれは半ば諦めながら、次に出てくる新製品に集中することにした。
正直繋ぎ回は書きにくいです。次はもっと話が動けばいいんですけどね。