一触即発
「これはこれはリンゴー社長。美女を侍らせているとはうらやましい限りだな」
控え室に向かう途中でメガネをかけたハゲがジョーブに話しかけた。
「人聞きの悪いこと言わないで下さい、ザッケルボルグ社長。彼女たちはただの協力者ですよ」
ジョーブは冷静にハゲに返した。
「ああ、あなた方が『落涙』様と『魔眼』様ですか。私はマイク・ザッケルボルグです。以後お見知りおきを」
マイクと名乗った男はそう言ってお辞儀した。
「はい。『落涙』の勇者白峰光です。よろしくお願いします」
「『魔眼』の黒谷沙夜よ。よろしく」
あたしとヒカリはマイクにあいさつした。
「そういえば『魔眼』様が操る『電脳の戦乙女』の話題もよく聞きますね。この機にアピールするなんてさすがペアだな」
そう言って笑うマイクの目は全く笑っていなかった。
「やれやれ。あなたもペアが黒幕というデマを信じてるんですか」
ジョーブはそう言って肩をすくめた。
「とぼけても無駄だ。魔導機には被害がなく、ワクチンソフトで儲けている。一番得をしてるのはあんたじゃないか」
マイクはジョーブに食ってかかった。
「そんなのはただの結果論です。大体普通なら怪しまれないようにペアの魔導機にもウィルスを仕込むと思いますよ。自社しか被害を受けてないとかあからさま過ぎでしょう」
ジョーブはマイクに正論をぶつけた。
「わからないだろう。そう思わせることが目的かもしれない」
マイクはそう言ってジョーブをにらみつけた。
「エビデンスを出せない以上不毛なやりとりはやめましょう。今はどちらが品評会でグランプリを獲得するかです」
ジョーブは淡々とした口調で返した。
「何を白々しいことを。魔導機を暴走させなかったペアの方が有利に決まってるだろう」
マイクは苦々しげに言った。
「そんなこと関係ないです。審査されるのは純粋に商品だけですよ。いずれにせよ最初から負ける言い訳をしてる人に負ける気はないですが」
ジョーブはそう言ってニヤリと笑った。
「なんだと?!くっ。そこまで言うなら完膚なきまでに叩き潰してやる。卑怯な手を使って負ける屈辱を味わわせてやるよ!」
マイクは肩を怒らせて自分の控え室に向かって行った。
「はあ。疑われているのはわかっていても実際敵意をぶつけられると堪えるものがありますね」
ジョーブはそう言って苦笑した。
「しゃあないやろ。現時点で疑いを晴らせるもんなんかあらへんしな。今はグランプリ取って儲けることを考えようや」
チカゲはそう言ってジョーブの背中を叩いた。
「…そうですね。今はプレゼンのことに集中しましょう」
ジョーブは力強い足取りで控え室に向かって行った。
あまり進みませんでしたね。次は品評会の様子がかければいいと思ってます。