ペア社
「何なんだあの皇帝は!まるでぼくたちが勇者の権力を濫用するみたいな言い種じゃないか」
城から出たカネダは不機嫌そうに言った。
「あんたが言っても説得力ないわね。それに勇者としては割とグレーなことやろうとしてるのは事実だし」
サヤはそう言って肩をすくめた。
「ふん。まあいい。どうせぼくは協力しないからな」
カネダは憮然として言った。
「あっそ。最初からあんたは戦力に数えてないわ」
サヤはカネダの方を見もせずに返した。
「それより早く機械を倒した方がいいだろう。すぐ本拠地に攻め込もう!」
カネダは話の流れを無視して意味不明なことを言った。
「今は国を挙げたイベント中だ。新技術を見るために各国からも要人が来ている。そんな時に帝都を離れるのは得策ではない。機械が動くのに対応出来るよう留まるべきだ」
ロベリアは冷静に返した。
「突っ込みたいなら1人でやればいいであります。我々巻き込まないで下さい」
エリザは冷たい口調で追い討ちをかけた。
「勇者に対して何て言い種だ。勇者には黙って従うものだろう!」
「わたくしたちが従う勇者はヒカリ様ですわ。あなたに従う理由はありませんわよ」
チェリルはカネダに冷たい口調で返した。
「金田さん。私たちが優先すべきは人々の安全です。襲撃を受ける危険があるなら離れない方がいいと思います」
ヒカリはカネダを優しくさとした。
「ふん。勝手にしろ。後でぼくの話を聞いてた方がよかったと後悔しても遅いからな!」
カネダがよくわからないことを言った。襲撃を受けても迎撃するだけだからあまり変わらないんだが。
「そうか。無駄話はそれくらいにしてペア社に行くぞ」
そう宣言しておれは転移魔法を発動した。
「着いたぞ。ここがペアの本社だ」
おれは転移した先の建物を手のひらで指し示した。
「すごく高いわね。この世界でこれだけ高い建物は初めて見たわ」
サヤはペア本社を見上げた。
「何だか日本を思い出しますね。何だか元の世界にいるみたいです」
ヒカリはしみじみとした口調で言った。
「高い建物が多いのか。異世界の建築技術はすごいな」
おれが話しながら扉の前に立つと、扉がひとりでに開いた。
「お待ちしておりましたイドル様。チカゲ様は社長室にいらっしゃいます」
おれたちが受付に行くと受付嬢がすぐ対応してくれた。
「わかった。どうもありがとう」
おれは受付に礼を言って扉の前に行った。そして扉の横のボタンを押した。
「エレベーターって…。まあファンタジーでもある作品はあるけどね」
サヤは冷めた目でエレベーターを見た。
「何だか世界観が崩れて来ましたね…。あ、来たみたいですよ」
ヒカリがそう言うとエレベーターの扉が開いた。
「社長室は最上階だ。みんな乗ってくれ」
おれたちはエレベーターに乗り込み、カードをかざして最上階のボタンを押した。
「うおっ。床が上がっていくであります」
「この箱が動いてるんですのね。何だか不思議な感じですわ」
エレベーターに慣れてない2人がはしゃぐ中エレベーターは静かに上がって行った。
正直世界観が壊れている自覚はあります。
次もあまり話は進まないと思います。