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構陣師  作者: ゲラート
第2章 獣王征伐
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戦いを終えて

「うっ…」

気絶して草に横たえられていた獣王がうめき声を上げて辺りを見回した。

「…そうか。おれは負けたんだな」

獣王は頭の後ろを押さえながら呟いた。

「なぜおれを生かした。この国の人間はおれを憎んでいるだろう」

獣王は司令官に問い掛けた。

「戦いはすでに我らの勝利で終わった。貴様が負けた以上貴様は魔王軍を離脱して狙われる立場になる。人間としては魔物が潰し合ってくれるならメリットしかないだろう。だから貴様と手下の獣に手を出すことはしない」

司令官はそこまで言って言葉を切った。

「だがそれも約束を守るならばの話だ。魔王軍に入るならこの場で切り捨ててやる」

司令官は震えながら剣の鞘を握りしめた。


「はっ。お前におれが討てるとは思えないけどな。あいつらに手を出さなかったことに免じて何もしないでいてやるよ」

獣王はそう言って立ち上がった。

「もう立って大丈夫なんですか?私との戦いのダメージがまだ残ってません?」

ヒカリが心配そうに獣王に話しかけた。

「そんな傷もう回復してる。こんな所で針の筵になってる方がよっぽど気が滅入るぜ」

獣王はそう言ってヒカリに背を向けた。そしてそのまま水辺から離れて行った。

「ガルル。グルル」

「ガオ、ガオオオーン!」

その後を獣たちが鳴きながら追って行った。


「全員獣王について行くって言ってるわ。あいつかなり慕われてるのね」

魔物の言葉を理解出来るサヤがおれたちに通訳した。

「…また獣王さんと会うことはあるんでしょうか?」 

ヒカリは獣王たちの背中を見ながらポツリと呟いた。

「彼らも魔王軍に狙われている身であります。互いに生きていれば道が交わることもあるでしょう」

エリザは獣たちが去って行った方を見ながら言った。

「どうにもならない物を心配しても仕方ありませんわ。今は前を見るしかないですわ」

チェリルはそう言ってヒカリの背中を撫でた。


「確かにこれからどうすればいいのかわからんな。隣国のノルマルはある程度わかるが後はどこを優先して救援すればいいのだ?」

ロベリアはそう言ってあごに手を当てた。

「だったら一旦お姉ちゃんと一緒にサミュノエルに帰ろっか。情報もサミュノエルの方が集まるでしょ?」

姉さんはそう言って手を叩いた。

「…確かにその方がよさそうだな。他に意見はあるか?」

俺はみんなを見回すとみんな首を振った。特に何もないようなのでおれはヒカリを見た。

「わかりました。一旦サミュノエルに帰って情報を集めてから動くことにしましょう」

視線に気付いたヒカリはリーダーとして方針を決めた。


「それは今は置いておいて獣王の撃退したことを民に伝えるために凱旋してもらえませんか?皆喜ぶでしょう」

司令官はヒカリに頼んだ。

「…いいんでしょうか?獣王を倒してないのに凱旋するというのはかなり気まずいんですが」

ヒカリは気乗りしなさそうな顔をした。

「あたしも思う所はあるわ。でも脅威が去ったアピールくらいはした方がいいんじゃないかしら」

サヤは冷静にヒカリを諭した。

「…そうですね。みんなの不安を取り除いてあげた方がいいですよね。わかりました。先に凱旋します」

ヒカリは頷いた。

「では王都に戻るぞ!城の皆も待ちわびているはずだ」

司令官は全軍に指示を出した。

『オー!』

兵たちは声を上げて王都に帰還する準備をした。


ーー


「おおっ!勇者様と我が国の軍が帰って来たぞ!」

おれたちが凱旋すると城の前に集まっていた人たちが歓声を上げた。

「あれが『落涙』様か。あんな小さい体で獣王の鱗を切り裂いたらしいな!」

「おれは獣王を殴り倒したって聞いたぞ!」

王都の群衆はそんなことを言ってヒカリを褒め称えている。どうやら兵たちから話が伝わっているようだ。

「何か私すごい化け物みたいになってません?」

ヒカリは群衆に手を振りつつ苦笑いした。

「事実でしょ。能力知らなければ誤解されるのは確かだけどね」

サヤも手を振りながら答えた。


「他の勇者パーティーも活躍したそうだな。…もう1人の勇者を除いて」

「『落涙』様に瞬殺された獅子王に瞬殺されたんだろ。実力差ありすぎだろ」

群衆の中からそんな声も聞こえてくる。やはり負けたという話の方がインパクトが強いんだろうか。

「なん」

カネダが何か言おうとしてるうちにサヤが沈黙魔法をかけて拘束した。かなり手慣れて来てるな。

「やっぱりあんまり知られてないね。もっと森とか焼いた方がよかったかな」

姉さんはサラリととんでもないことを言った。

「それだと悪目立ちするだけだ。そんなことが広がったら勇者パーティーの名に傷がつくだろう」

おれは姉さんに軽く返した。

「冗談だって。もう1人の方はともかくヒカリちゃんの名を汚す気ないよー」

姉さんは軽い口調で返した。

「そうか。ならいい」

おれたちは適当に返した。


「よく我が国から獣たちを追い払ってくれた。この国の王として例を言う」

ノルマル王はおれたちに感謝を述べた。

「そんな…。私たち獣王を見逃してしまったのに」

ヒカリは戸惑いながら返した。

「そなたたちはこの国を脅威から救ってくれた。それだけで我が国としては十分だ」

ノルマル王は穏やかに笑いながら言った。

「そなたたちには褒章を与えよう。宴の用意もしてあるぞ。そなたたちや兵を労わせてくれ」

それからおれたちは宴をした翌日にサミュノエルに帰った。

だいぶ端折ってしまいました。次から新章に入る予定です。

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