果たし合い
「よう。逃げずに来たみたいだな」
私が獣たちに案内されて池に行くと巨大なワニがいました。あれが獣王ですね。
「当然です。逃げるくらいなら最初から果たし状なんて無視してますよ」
私は獣王に答えました。
「フン。今度は毒使いの力は借りられないぞ。1対1の勝負だからな」
獣王はそう言って私をにらみつけて来ました。
「わかっています。負けるつもりはありません」
「上等だ。死んでも文句言うなよ!」
獣王は声を張り上げました。
「ルールを確認する。戦闘不能になるか降参した方の負け。獣王が負けた時は獣王は魔王軍を抜け、勇者が負けても生きていた時は勇者は何をされても抵抗しない。この条件で異存はないか?」
イドルさんがルールと負けた時の条件を読み上げました。
「はい」
「おう」
私と獣王は条件に同意しました。
「では契約をここに結ぶ」
イドルさんがそう言うと術式が現れ、私と獣王の腕に刻まれて消えました。
「これで契約を違えたら罰を受けることになる」
イドルさんはそう言ってみんなが待っている所に戻って行きました。
「双方距離ヲトレ!」
イドルさんの召喚獣のカラスが言う通り互いに5歩下がりました。
「デハ、始メ!」
カラスの声と共に私は駆け出しました。
「はっ!」
私はまず小手調べに獣王の腕に切りつけました。
「ふん。効かんわ!」
獣王には傷1つついてません。獣特効では斬れないということですね。
「今度はこっちから行くぞ。食らえ!」
獣王は斧を振り下ろしてきました。
「とっ」
私は後ろに飛び、光線を放ちました。
「魔法なら効くと思ったのか?甘いんだよ!」
獣王は爪で凪ぎはらって来ました。
「遅いです」
私は上に飛び、紅雪で前に回転して切りかかりました。
「白峰鏡月流、月車」
腕の上を転がり肩から下りましたがダメージがありません。本当に硬いですね。
「くっ。ちょこまかと!いい加減当たりやがれ!」
獣王は斧を叩き付けて衝撃波を出して来ました。
「空断!」
私は空断で衝撃波を切り裂き、獣王に当てました。
「だから効かねえって言ってんだろ!」
胸元に当たりましたがダメージはありません。防御力高いですね。
「今度はこっちから行くぜ!デススピン!」
獣王は池に飛び込み、回転しながら飛び掛かって来ました。
「白峰鏡月流、水面月」
残像を残したついでに腹を切りつけましたが血は出てません。紅雪が血を吸ってくれたらかなり楽なんですけどね。
「思ったより厄介ですね」
とにかく今は落ち着いて突破口を探すしかないです。私は呼吸を整えて全集中することにしました。
ーーー
「苦戦しているな。獣王の鱗はそんなに硬いのか」
一緒に観戦しているイドルがポツリと呟いた。
「パワーはそこまでないしね。元々スピードと技で敵を倒すタイプだから硬い敵にはあまり強くないわ」
「そうなるとベニユキに血を吸わせるしかないが…。獣王を殺さずに血を吸えるのか?」
イドルは冷静に分析した。
「そこが問題よね。あの契約書は獣王が生きていてこそ効果を発揮するもの。一応次の獣王にも適用出来るけど離脱してもついて行く獣はあのワニに比べたら少ないでしょうね」
「脳筋だが強さとカリスマ性はありそうだしな。次の獣王を決めるにしても潰し合いになる未来しか見えん」
確かに残った幹部そこまでパッとしないのよね。獅子王が生きていたらもっとまとまったのかもしれないわ。
「そんなことはどうでもいい!さっさとぼくを解放しろ!」
あたしが拘束した金田が何かわめき出した。
「いやよ。解放したらあんた乱入するでしょうが」
あたしが返すと金田は黙り込んだ。どうやら図星みたいね。
「…それの何が悪い!獣の自己満足に付き合う必要ないだろ。ぼくが不意を打って倒せば全て終わるからそれでいいじゃないか」
ぶっちゃけたわね。ウソでも光が心配だからとか言えないのかしら。
「獣の自己満足でも応じた以上はルールを守る必要は出てくるわ。大体あんたが乱入しても邪魔になるだけよ」
「なっ、この」
あまりにうるさいからあたしは拘束魔法で金田の口をふさいだ。
「何にしてもヒカリにそうそう攻撃が当たることはないだろう。…体力が切れない限りは」
イドルは猛スピードで飛び回る光を見ながら言った。
「結構持つとは思うけどね。ヒカリスタミナもあるし、体力の消耗を抑える呼吸法も身に付けてるらしいから」
まあただ鬼を滅するマンガの影響かもしれないけどね。光案外そういうのの影響受けやすいもの。さすがに月の呼吸とか言い出すことはないだろうけどね。
「体力が切れるのが先か、勝利の糸口を掴むのが先か…。何にせよ今はヒカリを信じるしかないな」
イドルはヒカリと獣王の戦いを見ながら呟いた。
なかなか戦闘描写うまく書けませんね。後少しネタに走り過ぎた感はあります。