森の中
「今度はこっちから仕掛ける番だ!今までの恨みを思い知らせてやろう!」
司令官は並んだノルマル兵たちに号令した。
『オー!!』
ノルマル兵たちは気合いを入れた。
「行くぞ!全軍、突撃!」
『ウオオオ!』
ノルマル兵は森に向かって走って行った。
「それじゃおれたちは転移で先に行くか」
おれは獣たちの目がノルマル兵に向いている間に転移魔法陣を森の裏に繋げた。視点共有した召喚獣がいればこのくらい余裕分だ。
「あの、金田さんは連れていかなくていいんですか?」
ヒカリはおれに尋ねてきた。
「放っておきなさい。囮になってもらった方が楽よ」
サヤは親指でカネダを指差した。
「出てこい獅子王!ぼくがやっつけてやる!」
カネダはめちゃくちゃに大剣を振り回しながら叫んだ。
「あいつは腐っても勇者だ。さすがにただの魔物にやられることはないだろう」
「陽動作戦をしてくれているのだからありがたく利用するのが得策であります」
ロベリアとエリザはカネダの方を見もせずに言った。
「…わかりました。金田さんを信じてまかせます」
ヒカリはカネダに背を向けて転移魔法陣の中に入った。おれたちも魔法陣の中に密着して入った。
「それじゃ行くぞ」
おれたちは森の裏側に転移した。
「…よし、着いたな。チェリル、近くに敵はいるか?」
おれはチェリルに尋ねた。
「いないようですわ。うまく死角をつけましたわね」
チェリルは目を閉じながら言った。
「何でそんなのわかるんですか?」
ヒカリはチェリルに尋ねた。
「わたくしには植物と心を通わせるギフトがあるんですの。だから森の中では負けることはありませんわ」
チェリルはそう言って木の幹を撫でた。
「敵がいないルートに案内してくれるのですか?では頼みますね」
チェリルがそう言うと地面が急に動き出した。
「草のざわめきが聞こえるわ。草があたしたちを乗せて移動してるの?」
サヤは下の草に目を向けながら言った。
「下の草がわたくしたちを受け渡してると言った方が正確ですわね。移動が楽なのは木属性の特権ですわ」
チェリルはない胸を張って得意げに言った。
「それでも少しは運動は必要だぞ」
「それイドくんが言っても説得力ないよ」
そんな他愛ない会話をしながらおれたちは森の奥に進んで行った。
「よし、見えてきたわ。…アローレイン」
サヤはそう言うと矢を放った。サヤが放った矢は分裂して木の間を縫って飛んでいく。
「「ぐわああ!」」
矢が飛んで行った方向から叫び声が聞こえた。人間の言葉を話すってことはあいつらだな。
「くっ。腕がしびれて…」
「まさか足が封じられるなんてね。これはまずいかも」
声がした所にたどりつくとライガの両腕とジータスの両足に矢が刺さっていた。毒矢だから満足に動けないだろうな。
「ど、毒矢なんて卑怯だぞ?」
「あたしは隙があったから射っただけ。当たらなければそもそも効果ないんだから避けられないあんたたちがわるいのよ」
サヤは辛辣な言葉で返した。
「キー!ウキキキー!」
「ウホウホ!ウッホッホ!」
「ガルルル!」
ライガとジータスがピンチなのを見て森の中の獣たちが襲いかかってきた。
「無駄ですわ」
チェリルが手を振ると木の枝や根が獣たちを蹴散らした。
「くっ。こうなったらせめて勇者だけでも!電光石火!」
ジータスはそう言ってヒカリに向かって駆け出した。毒を受けてる割にはなかなかのスピードだな。
「白峰影月流、十字月」
ヒカリがベニユキを抜くと同時にジータスの体が十字に裂けた。
「おのれー!獅子王拳!」
ライガはかなり遅い動きでライオンの形の気を放った。
「白峰鏡月流、飛月」
ヒカリは獅子王拳を避けて飛んだ。そしてそのまま首を落とした。
「う、ウキー!」
「ウォォオン!」
獣たちは一斉に森の中から出て行った。
「…次は獣王ですね。皆さん、気を引き締めましょう」
ヒカリはそう言って指先で涙を弾いた。
弱体化してるのもあってあっさり終わってしまいました。次は繋ぎ回の予定です。




