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構陣師  作者: ゲラート
第2章 獣王征伐
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百獣の行進

「伝令!獣王軍が森から出てきました!」

ノルマル軍の伝令が慌てた様子で軍議の間に入ってきた。

「ご苦労。すぐ迎撃体勢に入れ!」

『はっ!』

ノルマル兵は一斉に持ち場に向かって行った。

「私たちも行きましょう。獣の戦い方を見ないといけませんしね」

ヒカリはそう言ってベニユキの鞘を握った。

「ひとまず今は自分だけで行くであります。出来ればまだ勇者の存在は知られたくないでありますからな」

エリザはそう言って鎧をノルマル軍の物に換装した。

「くれぐれも深追いはするなよ。森には何があるかわからんからな」

「了解。エリザ、出陣するであります!」

エリザはそう言って前線に駆けて行った。


「それじゃおれも戦場を覗くか」

今回は獣相手だから…。こいつらで行こう。

「空を舞え、漆黒の翼。サモン、ブラッククロウ。跳び跳ね刺し貫け。サモン、ホーンラビット。跳び跳ね首を狩れ。サモン、ヴォーパルバニー」

おれはカラスを5羽、角が生えたウサギと爪が鋭いウサギをそれぞれ3羽ずつ召喚した。

「い、一度に大量に召喚するとは…。さすが『構陣師』殿ですね」

おれの召喚魔法を見た司令官は驚きの声を上げた。

「別に大したことじゃないさ。とりあえずブラッククロウ1羽はエリザにつけ。後のブラッククロウは戦場を見渡せる位置を飛び回れ。ホーンラビットとヴォーパルバニーは獣が退却するまで待機しろ」

おれは召喚獣に指示を出した。


「ふーん。退却に紛れて探りを入れようってわけね」

サヤはホーンラビットとヴォーパルバニーを撫でながら言った。

「少しでも中の様子が分かれば攻略しやすいからな。後々役に立つだろう」

おれはサヤに返した。

「現状そうするのがベストかもね。あたしのドローンは怪しまれるかもしれないし」

サヤはそう言ってMePhoneを操作した。

「一応宇宙からの衛星画像もあるけど…。森の形くらいしかわからないわ」

サヤはそう言って上から見た画像を画面に見せた。

「そんな所からも覗けるのか。やはりマザーはすごいな」

「あたしたちの世界では当たり前だけどね。このMePhoneが普及してみんなが繋がるようにすごいことになるわ」

サヤは遠い目をして言った。

「世界中で情報を共有するわけだな。魔王軍に渡ったら厄介だ」

「そうね。いずれ向こうのも手に入れるかもしれないわ。その時どうなるかは誰にも対勇者わからないわね」

サヤは遠い目をして言った。

「今は先の話をしてもしかたない。この戦いに集中しよう」

おれはブラッククロウの視点に意識を集中させた。


ーー


「吹き飛べであります!クリムゾントルネード!」

エリザはそう叫んで獣に向けて紅の竜巻を放った。

「モー!」

「ブヒー!」

先頭を走っている獣たちは巻き込まれて竜巻に切り裂かれて行った。

「すごい!さすが『紅の武装姫』だ!」

「すでに部分別に解体してあるとは…。どれほどの鍛練を積んでいるのだ」

ノルマル兵はエリザの剣の腕を見て驚いていた。

「グオー!」

今度はロックライノが向かってきた。

「はっ!」

エリザはロックライノを横に真っ二つにした。


「サイの食べられる部位など知らないであります。…それにしても突進する獣に紛れて後ろから来る獣も嫌らしいですな」

エリザはそう言ってケンタウロスの矢を剣ではたき落とした。

「そうですね。いつも突進の影に隠れてくるからきついです」

「今はエリザ殿がいるからさばけますけどね」

ノルマル兵はそう言って飛びかかってきたコボルトを切り裂いた。

「しかしあまりにも手応えなさすぎですな。将がまるでいない感じであります」

エリザはわけがわからないという顔をした。

「た、確かに。幹部級の魔物の姿は見たことがないです」

ノルマル兵はエリザに返した。

「まるで時間稼ぎをしているみたいでありますな。時間をかければいずれ勇者が召喚されて救援に来るとわかっているはずなのに」

エリザはそこまで言って言葉を切った。

「…まさか一番早く勇者とぶつかりたかったから?ノルマルをすぐに潰そうとしなかったのもサミュノエルから一番近いノルマルから離れたくなかったからと考えるとつじつまが合いますな」

エリザはそう言いながら肉を空間魔法に回収した。


「ふっ。少しは手応えがある敵が現れたようだね」

突然そんな声がしたと思うと何かが光った。

「…何者でありますか?」

エリザは難なく敵の突きを受け止めた。

「やっぱり止めるんだ。君勇者パーティーだろ?」

レイピアを持ったチーター男がかっこつけてそう言った。

「『紅の武装姫』エリザであります。そういう貴殿は獣王の家臣とお見受けしますが」

「『石火』のジータスだよ。まあ今日はあいさつ代わりだけどね」

ジータスと名乗ったチーターはそう言って煙玉を投げた。

「勇者パーティーが来た以上もう時間稼ぎは不要だ。覚悟するよう勇者パーティーにも伝えることだね。ハーハッハッ!」

ジータスの声が聞こえると同時に森の木がガサガサと揺れた。

「くっ。逃げられましたか」

「他の魔物もどんどん退いていきます」

初戦はここまでだな。後はウサギたちを送り込むだけだ。


「待て!逃がさないぞ魔物ども!」

ノルマル兵たちが退く中金色の鎧を着た男が森の中に突っ込んで行った。


ーー


「カネダ?いつ出陣してたんだ」

ブラッククロウの視点に映ったものが信じられないおれは思わず呟いた。

「は?金田出てるの?」

サヤは珍しくわけがわからないという顔をした。

「ああ。しかも森の中に突っ込んで行ったぞあいつ」

「信じられないバカね。一応勇者だから助けとく?」

サヤは心底どうでもいいという顔で聞いた。

「…状況次第だな」

おれは追加の獣を召喚して森に送り込むことにした。

正直別に金田が捕虜になっても構わない気はします。

まあ流れ次第ですね。

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