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構陣師  作者: ゲラート
第2章 獣王征伐
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ノルマル到着

宴をしているうちに夜が更け、おれたちはノルマルの港にたどり着いた。

「ありがとうございますフランさん、海賊の皆さん。おかげで無事ノルマルに着けました」

ヒカリはそう言ってフランたちにお辞儀した。

「なに、これも仕事さ。今後とも贔屓にしてくれよ」

フランはそう言ってヒカリに手を差し出した。

「はい!」

ヒカリはフランの手を握った。


「うぅ。頭がすごく痛い…。飲み過ぎたかな」

おれたちも海賊たちにお礼している間に金田が下りてきた。

「飲み方が悪いのよ。あたしたちは大丈夫だったわよ」

サヤは余裕な顔で言った。

「城に出向いて王に謁見しなければいけないのにそれで大丈夫か?具合が悪いなら休んでいてもいいぞ」

ロベリアは冷たい目で金田を見た。

「何を言ってるんだ。勇者がいないと話にならないだろ」

カネダはわけがわからないという顔をした。

「…まあいい。何を言われてもくれぐれも逆上はするなよ」

ロベリアは諦めたように溜息を吐いた。

「ぼくが何を言われるっていうんだい?ぼくは勇者だよ」

カネダはまたバカ丸出しの発言をした。こいつのことはもう放っておこう。


城下町から城に向かうと、城門の前に門番がいた。

「『落涙』の勇者光です。貴国に入ったことを国王様にご報告に参りました」

ヒカリは白い山の上に黒と白の三日月が背中合わせになった紋章がついた印籠を門番に見せた。

「ようこそおいで下さいました『落涙』様!さっそく王に伝えてきます」

印籠を見た門番は急いで城に入って行った。

「何だ今のは。ぼくはもらってないぞ!」 

印籠を見たカネダがヒカリに向けて吠えた。

「二つ名をもらった記念にチカゲさんの商会からプレゼントしてもらったんです。好きなデザインにしていいと言われたので家紋を描いて勇者の証にした方がいいと思いまして」

ヒカリはそう言って印籠を懐にしまった。

「すでに各国にも印籠の写真を送ってある。全世界で勇者の証として通用する代物というわけだ」

ロベリアはヒカリの説明に補足した。


「何でぼくには勇者の証がないんだ。ぼくも勇者の権威を示したいのに!」

カネダは大声でわけがわからないことを言った。

「特権を剥奪されたやつが何を言っている。突き付けたところで相手にもされないぞ」

おれはカネダに事実を告げた。

「それにこの印籠はあくまで余計なトラブルを回避したり、非常事態の時に協力を申し出るためのものです。権力を振りかざすためにあるのではありません」

ヒカリはそう言ってカネダを諭した。

「そんなのただの綺麗事だ。ぼくならもっとうまく使える」

カネダはなおも喚いた。

「話にならない。決闘で勇者特権を剥奪しておいてよかったよ。お前に権力を与えてもろくなことがないからな」


「なっ。この」

「お待たせしました。王もぜひお会いしたいとのことです。少し準備がありますので客間でお待ち下さい」

城に入って行った門番が戻ってきたことでカネダとの無価値な話が終わった。

「ご苦労様です。さあ、参りましょう」

ヒカリはそう言って門番についていった。

「勇者様のお言葉だ。ここは矛を納めよう」

おれはカネダにそう告げてヒカリの後に続いた。

「ぼくも勇者だぞ。その扱いの差は何だ!」

そう喚くカネダの声を背に受けておれたちは客間に向かった。


控え室で休んだ後、おれたちは衛兵の後に続き玉座の間に入った。

「『落涙』の勇者ヒカリ、『魔眼』の対勇者サヤ。そして勇者パーティー諸君。よくぞ来てくれた」

玉座に座るノルマル王はあからさまにカネダを無視しながら言った。

「礼には及びません。獣王の脅威が迫っているのが私の役目ですから」

ヒカリは冷静に言った。

「私は我が国の脅威を未然に防ぐために来ました。決してそれを口実に弟と一緒にいるためではございません」

姉さんは聞かれもしないことをバラした。

「…そうか。『火葬鳥姫』が加われば心強い。頼りにしておるぞ」

ノルマル王は姉さんをじっと見ながら言った。

「はい。必ず全て焼き尽くしてご覧にいれます」

姉さんはお辞儀をしながら物騒なことを言った。

「もちろん『飛槍姫』、『桜花』、『紅の武装姫』、『構陣師』にも期待している。共に獣王の脅威を取り除いてくれ」

ノルマル王はそう言っておれたちに視線を向けた。

「もちろん。友好国のためですから」

「わたくしにお任せあれ。必ず倒してみせますわ」

「獣王…。腕が鳴るであります」

「はい。やるからにはあらゆる手を尽くします」

おれたちはそれぞれ返した。

「そう言ってもらえると助かる。今日は疲れただろう。今日は城に泊まってくれ。大いにもてなそう」

ノルマル王はそう言って微笑んだ。

「お心遣い感謝します。お言葉に甘えさせてもらいますね」

ヒカリはそう言って頭を下げた。

「大義であった。衛兵、部屋に案内してあげなさい」

「はっ!こちらです『落涙』様方」

衛兵はそう言って玉座の間を出ようとした。


「ちょっと待ってくれ!なぜ勇者のぼくに対しては何もないんだ!」

カネダは大声で文句を言った。

「王に向かって無礼な!口を慎め!」

側近はカネダに向かって怒鳴った。

「やめておけ。相手は腐っても勇者だ」

ノルマル王は側近を止めた。

「だ、誰が腐ってるっていうんだ」

「国を裏切り悪の貴族派についた者が腐ってないとでも?そんな勇者の何を信じろと言うのだ」

ノルマル王は冷たくカネダを見た。

「ぼ、ぼくは悪くない!騙したあいつらが悪いんだ」

「そんな言い訳を聞く気はない。認められたければ結果を出すことだな」

ノルマル王が手を振ると衛兵がやってきてカネダを部屋から連れ出した。


「クソ!何なんだあの態度は!ぼくは勇者だぞ」

カネダは客間に案内されてもまだ喚いていた。

「正論ですわね。はっきり言ってもらえて清々しますわ」

「サミュノエルとしては召喚した手前強く言えないからな、代弁してくれてよかった」

チェリルとロベリアは冷たい口調で言った。

「くっ。今に見てろよ!必ず汚名挽回してやる!」

カネダは力強く吠えた。

「汚名を挽回してどうするんでありますか?」

エリザはボソリと呟いた。

「一応間違ってはないみたいですよ。現在では誤用として扱われることが多いようですが」

「汚名挽回宣言したキャラが負けまくったせいでイメージ悪くなったのかしら」

ヒカリとサヤがエリザの疑問に対して答えた。

「まあ、ちゃんと鍛えれば大丈夫だよね。船じゃなにも出来なかったし」

姉さんはそう言って指先に火を灯した。

「そうだな。そう祈るよ」

おれはあまり期待せずに姉さんに返した。

勇者召喚に関わってない他国の反応を書いてみましたがどうでしょうか。個人的には待遇をあからさまに変えるよりはマシだと思ってるんですが。

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