船上の宴
「今日は勇者様方の歓迎会だ!野郎ども、乾杯だよ!」
フランはそう言ってジョッキを掲げた。
『乾杯!』
海賊たちもジョッキを掲げて、一気にビールを飲み干した。
「1日だけなのに歓迎会だなんて…。何か悪いですね」
光はあたしにボソボソ呟いてきた。
「気にするな。どうせ理由をつけて騒ぎたいだけだ」
イドルはそう言ってビールを飲んだ。
「そう。割とイメージ通りね」
あたしもこの世界では合法だからビールを飲んだ。
「まあとにかくジャンジャン食って飲みな。海の幸ならいくらでもあるからね」
フランはロブスターにかじりつきながら言った。
「それじゃ遠慮なく食べるであります」
エリザは大皿のパスタを自分の皿に盛り付けた。やっぱりよく食べるわね。あたしは真っ先にカジキのステーキに手を出した。
「おいしいわねこのカジキのステーキ。自分で釣ったからかしら」
「わたくしのスパイスもきいてますわね。シェフの腕がいいと提供しがいがありますわ」
チェリルは魚の香草焼きに手を出しながら言った。
「ふむ。城とはまた違った料理だな。悪くない」
ロベリアはフィッシュアンドチップスを食べている。そこらへんはイギリスぽいわね。
「お刺身も新鮮ですね。さすが海です」
光は舟盛りの刺身を食べている。この世界にもそんな文化あるのね。
「やっぱり貝が熱くて開くのを見るのはいいね♪」
貝を火を出して網焼きにしているミアーラが笑いながら呟いた。やっぱり怒らせたら怖そうな感じがするわ。
「うぅ。やっと落ち着いたよ。もう船に乗るのはこりごりだ…」
カネダはそう言ってスープを飲んだ。
「残念ながらそうもいかないんだよ。魔王軍は海にも侵略しているからね。ヒカリはともかくあんたは船に乗らないと無理だよ」
確かにヒカリなら普通に海の上走れそうよね。魔力が持てばの話だけど。
「何で海になんか侵攻してるんだ。どうせたいていの魔族は住めないじゃないか」
金田は割とまともなことを言った。
「そりゃ敵の海運を絶てるからね。魔王は戦闘にしか興味ないけど魔族にはそこまで考えてるやつもいるんだろうさ」
そんなやつがいるとしたらあのジジイあたりかしらね。対勇者の後見人だからそれなりに地位は高そうだわ。
「ハッ!魔族にそんな知恵があるわけないだろ!」
金田は吐き捨てるように言った。
「魔族の策にはめられて貴族派の犬になったお前が言っても説得力はないな」
イドルはパエリアを食べながら指摘した。
「で、でも実際騙したのはネルキソスだろう!」
「それでもお前を取り込むように指示を出したのは魔族だ。まああいつの場合逆に利用しただけだが魔族の味方をする人間は他にもいるだろう。魔王がいかに戦闘狂で力にしか興味がないといっても魔王軍をなめると痛い目をみるぞ」
イドルは冷静に金田に反論した。
「他人事とは思えませんわね。…こちらは実権がないからまだマシですが」
チェリルは金田をまっすぐ見ながら言った。
「ま、まあいいよ。どんな相手でもぼくが倒せばいいんだ。ぼくは勇者だからね!」
金田はそう言ってビールを一気に飲み干した。
「ならもっと鍛えないといけないでありますよ。控え目に言って貴殿はパーティー最弱でありますから」
エリザは金田に思っていることをはっきり言った。
「うるさい!勇者のチートがあればぼくは最強なんだよ」
金田は顔を赤くしながら言った。あれ酔ってないかしら?
「やれやれ。酒の飲み方も知らないなんてしょうがない坊やだね」
フランは呆れた目で金田を見た。
「なんだと。勇者にそんな口聞いてむにゃむにゃ」
金田はそこまで言って急に机に突っ伏して寝息を立て始めた。
「本当にこいつ勇者かい?正直顔以外いい所が見つからないんだけど」
フランはそう言ってビールを飲んだ。
「光属性を使えるから一応勇者よ。実力と性格はあれだけどね」
あたしはフランに返した。
「まあヒカリがいるならなんとかなるだろうさ。頼んだよ、ヒカリ」
フランはそう言って光の手を強く握った。
「はい。必ず皆さんを救ってみせます」
そう答えた光の姿はいつも通り危うく見えた。
金田のいい所は敵の策に確実にはまってくれる所ですかね。
被害担当や反面教師としては優秀なのが取り柄です。
展開的には大事な存在ですが本人にとっては不本意でしょうね。