ドレーク海賊団
「うっ。気分が」
航海に出てすぐカネダが青い顔をしてへたり込んだ。
「だらしないわね。ドラゴンスレイヤーでもないくせに」
サヤは真顔で意味不明なことを言った。
「ドラゴンスレイヤーと船酔いは関係あるのか?」
「とあるマンガではドラゴンスレイヤーの弱点が乗り物酔いなのよ。なぜかは知らないけどね」
サヤは苦笑しながら言った。
「とはいえ揺れるのは確かですね。少し戦いにくいかもしれません」
ヒカリは足を踏み締めながら呟いた。
「じゃあ軽く体でも動かしとくかい?どうせノルマルまで1日かかるしね」
フランはヒカリとサヤに提案した。
「いいけど…。何すればいいの?弓の練習しようにも船壊すか矢を無駄にするだけなんだけど」
サヤは弓の弦を弄びながらフランに聞いた。
「なら…釣りかな?大物釣ってメシの足しにするのも悪くないんじゃないかい?」
フランは釣竿とエサをサヤに投げた。
「いいわ。海の魔物を倒せるかもしれないしね」
サヤは空中でキャッチすると釣りを始めた。
「ヒカリはうちの戦闘員と模擬戦をやるといい。フッカー」
フランが呼ぶと左手に大きなフックをつけた男が出てきた。
「その左手どうしたんですか?」
「サメに食われた。っと、模擬戦なら鉄じゃまずいか」
フッカーが手をフックに当てると材質が木に変わった。
「わあ、すごいです。これって換装ですか?」
ヒカリはフックを見ながら言った。
「いえ。空間魔法を使った形跡はないであります。おそらくは錬金でありますね」
エリザの言う通りあれは錬金だ。魔法陣が出ていたから間違いない。
「準備は出来たか?」
フッカーは木製のカットラスを持って答えた。
「はい」
ヒカリはそう言って木刀を構えた。
「ルールは一本勝負。一発当てた方の勝ちだよ」
フランはルールを説明した。
「じゃあ始めるぞ。おらあ!」
フッカーは声を上げてカットラスを振り下ろした。
「うっ。足場悪いですね」
サヤはどうにか受け止めたが踏ん張りがきかないようだ。
「もらった!」
フッカーは左手のフックを横凪ぎした。
「とっ」
ヒカリは体をのけぞらせ、フッカーの右に向けて滑り込んだ。
「はっ!」
ヒカリの木刀はフッカーの右膝にきれいに入った。
「いってー!」
フッカーは右膝をおさえてうずくまった。
「そこまで!船医、ヒールをかけてやりな」
フランが指示すると後ろから船医が出てきた。
「ハイヒール!」
船医が回復魔法を使うと右膝の赤みがひいていった。
「動き止めたから決まったと思ったんだがな。まさか揺れを利用して滑りこむとは思わなかったぜ」
フッカーは膝をさすりながら言った。
「体が傾くなら滑ろうととっさに思ったもので。滑るのは慣れてますから」
ヒカリはそう言って涙を弾いた。
「映像見た時から思ってたけど特殊な戦い方だね。普通にマストを使って攻撃してきそうで困るよ」
フランは呆れたようにヒカリを見た。
「ヒカリ殿の動きは変則的でありますからな。対応するのは難しいであります」
エリザはしみじみとした口調で言った。
「あっ。何か来た」
ふとサヤの声が聞こえてきた。見てみるとサヤの竿が大きくしなっている。
「っとなかなか楽しませてくれるわね。多分結構な大物だわ」
サヤはそう言いながら魚の動きに合わせて竿を操った。
「よし、フィーッシュ」
サヤが竿を叩きつけると大きなカジキが降ってきた。
「ブレードフィッシュか。サベル。手助けしてやりな」
フランが指示するとサーベルを持った男がブレードフィッシュの尖った上顎を切り裂いた。
「はっ!」
すかさずロベリアが投げた槍がエラを貫いた。
「白峰影月流、三裂月」
そして落ちてきた所をヒカリが頭を落とし、三枚に下ろした。
「空中で捌くなんて…。さすがですわね」
チェリルは感心しながら落ちて来たカジキの身が汚れないよう大きな葉で受けとめた。
「大きい魚だね。焼いちゃっていい?」
姉さんは指に火を灯しながら言った。
「頼むから船ごと焼かないでくれよ」
フランはそうぼやいてパイプをふかした。
後1、2話くらいでノルマルに着ければいいと思います。