急転
「な、なぜ貴様らがここに?!タダノはどうしたのだ!」
おれたちの姿を見た貴族派派閥長が叫んだ。自分の所のボスにも名前覚えられてないとは哀れだな。
「チェリルにまかせて来た。あの程度の勇者に負けるはずないしな」
「くっ。役立たずが。警備兵はどうした!」
貴族派派閥長はおれたちに向かって吠えた。
「逃げたんじゃないか?あんたに忠誠を誓うやつなんかいないだろうしな」
おれはヒカリに余計なことを言わないようにジェスチャーをして言った。
「そんなわけないだろう。わしは貴族派派閥長で侯爵だぞ!」
「そんな肩書きでしか威張れないの?哀れね」
サヤはバカにしたように言った。
「あの恩知らずどもめ…。だれか私を助けろ!」
貴族派派閥長は回りを見ながら叫んだ。相変わらず無様だな。
「ハア…。お父様。そう無様に叫ばないで下さい。器が知れますわ」
ヴィレッタが呆れた顔で部屋に入ってきた。
「何をやっておる!肝心な時にいなくなりおって!」
「ちょっと野暮用があっただけです。これを見たらわかるでしょう?」
ヴィレッタはそう言って桜の髪飾りを投げ捨てた。
「それチェリルちゃんの…。でも血の匂いがしませんが」
ヒカリは首を傾げて恐ろしいことを言い出した。
「遠くに吹き飛ばしたのよ。まあいいわ。どうせ害獣狩りはもう終わるしね」
ヴィレッタは口元の扇を閉じてニヤリと笑った。
ーー
「や、やめろ!魔法を撃つな!」
「気でも狂ったのか!うわあああ!」
そう叫ぶ貴族派の兵たちは後ろから魔法を食らった。
「なぜ今になって…。城攻めの時通用しないのはわかっているではないか!」
「こ、これ以上魔法を放つなら貴族派を裏切ったとみなすぞ!」
貴族派の兵が叫ぶ間にも後ろから魔法が放たれている。
「こ、この愚か者どもがー!」
貴族派の兵たちの断末魔の叫びは魔法が炸裂する音の中に消えていった。
「おかしいですね。魔法を放っても『構陣師』殿に支配されることはわかっているはず。なのになぜここまで撃つんでしょう?」
参謀は望遠鏡を覗きながら呟いた。
「我々を倒そうと焦っているのではないですか?」
「その割には落ち着いています。…そもそも『構陣師』殿は魔法陣の位置まではずらせないはず。ここまで地面から噴き上げる魔法が多いのは貴族派の退路を断つのが目的としか」
参謀はそこまで言って言葉を切った。
「まさか…いや、そんなバカなことが…」
参謀は自分の考えが信じられないという顔をして冷や汗を流した。
ーー
「それじゃ、役者も揃ったようだし仕上げと行きましょうか」
ヴィレッタが扇を手で叩くと隠し通路から警備兵が出てきた。そして一斉に取り囲んで敵に剣を向けた。
「な、なぜわしに剣を向ける!自らの主もわからぬのか?」
「わかってますよ。みんな私の犬ですから」
そんなことを言ってる間にチェリルの髪飾りから蔓が伸びて貴族派派閥長を拘束した。
「もう終わりですよお父様。潔く降伏して下さいませ」
ヴィレッタはゆったりした動作で扇を貴族派派閥長に突きつけた。
正直におわせ過ぎた自覚はあるので気付いてた方は多いかもしれません。
次でどうにかまとめたいです。