舞う桜花
前半は金田視点です。
「待ってろ!すぐ君を倒して先に行ってやる」
ぼくは大剣をチェリルちゃんに突きつけた。
「出来るものならやってみるといいですわ。行きなさい」
チェリルちゃんは手の魔法陣から桜の花びらを放った。
「またさっきみたいに切り刻むつもりだね。そんなことさせないよ!」
ぼくは飛んできた花びらを大剣で叩き落とした。
「なかなかやりますわね。これならどうですか」
チェリルちゃんは何枚もの桜の花びらを放ってきた。
「はっ。そんなの当たらないって」
ぼくは飛んでくる花びらを叩き落とした。
「お遊びはここまでにしましょう。はあっ!」
チェリルちゃんが手を突き出すと木の拳が魔法陣から出てきた。
「ふん。そんなの簡単に受け止めてあげるよ」
ぼくは剣を振り上げようとしたがなぜか剣が上がらなかった。
「な、なぐはっ」
ガード出来ないぼくに向かって木の拳は右フックを繰り出して来た。その次にアッパーを食らわせて来た。
「大剣が持ち上げられない…。一体何をしたんだ!」
ぼくはチェリルちゃんに向けて叫んだ。
「そんなに知りたいなら教えてあげますわ。…その身を持って、ね」
そういうチェリルちゃんはぼくの鎧に花びらを落とす。
「なっ?!急に体が重く…。桜の花びらは切り刻むものじゃないのか?!」
「あの桜は染血吉野。この桜は肢垂桜ですわ。肢垂桜には触れた物を重くする効果がありますの」
触れた物が重く?それで鎧が重くなったのか。
「で、でもこの剣は重くなってないぞ!」
「その剣には軽く感じさせる術式が刻まれてますわ。自分の武器なのにご存知ないんですの?」
チェリルちゃんはうつむくぼくを見下してきた。
「もうこれ以上話すことはありませんわね。お黙り下さいな」
チェリルちゃんが指を鳴らすとぼくの口と手足が拘束された。
「それではごきげんよう。そのまま這いつくばっていて下さいな」
チェリルちゃんはぼくに背を向けて歩き出したその時ーーー
「あら。あいさつもないなんて冷たいじゃない」
ーーー地面に落ちた桜を風で巻き上げてヴィレッタが降りてきた。
ーーー
「…行ったようね。先に行きましょう」
ワイヤレスイヤホンをつけながらMePhoneを見ていた沙夜ちゃんが指示を出しました。
「地図まで表示出来るなんてすごいですね。でもどこで見取り図なんて手に入れたんですか?」
私は沙夜ちゃんに尋ねました。
「スパイが送って来たのよ。隠し通路もバッチリだから写真撮れば後は楽だったわ」
沙夜ちゃんは声を潜めて言いました。
「そのスパイさんってこの屋敷にも詳しいんですね。腹心の部下とかなんでしょうか?」
私は声を潜めて沙夜ちゃんに聞きました。
「タネ明かしするならボスの前でしょ。ちょうど着いたみたいだしね」
貴族派派閥長さんの部屋の扉の前に立った沙夜ちゃんはMePhoneを見ながら耳を澄ませました。
「どうやら隠し通路に兵がいるようね。包囲して逃げ場をなくす気かしら」
沙夜ちゃんはそう言って紙をかきあげました。
「袋のネズミというわけでありますね。抜かりないでありますな」
エリザさんはそう言って笑顔を浮かべました。
「命令があれば入ってくるだろうな。出来ればそんなことはないといいが」
ロベリアさんは落ち着いた様子で言いました。
「…特に扉に仕掛けはないわ。いつでも突入可能よ」
沙夜ちゃんはそう言ってワイヤレスイヤホンとMePhoneを懐にしまいました。
「ヒカリ。突入の指示を頼む。やはりここは勇者がやった方が締まるだろう」
イドルさんが私に目配せしてきました。
「わかりました。…皆さん、行きますよ!」
『おー!』
私は扉を大きく開け放ちました。
あまり話進みませんでしたね。次の次辺りで伏線回収出来るといいと思ってます。