閑話 決戦前夜
「伝令!貴族派軍は派閥長の屋敷の前に陣取っている模様!」
伝令兵が軍義の場に入ってきて伝えた。
「ご苦労様です。手薄な場所はありましたか?」
「はっ。屋敷の裏手は手薄のようです。あまり兵はいません」
伝令兵はそう言って参謀に敬礼した。
「明らかに誘っていますね。私なら勇者タダノを伏せます。ここは勇者パーティーで突っ込むべきでしょう」
参謀はそう言っておれたちに視線を向けた。
「金田さんは同じ勇者ですからね。私たちが何とかしないといけないですよね」
ヒカリはそう言って意気込んだ。あんなやつに対しても仲間としての情があるんだろう。
「そうね。茶番を終わらせるついでにあいつに引導を渡してやるわ」
対照的にサヤはどこまでも冷たい目で言った。やはりあんなやつに情なんて持ち合わせてないんだろう。
「では我々は陽動ですね。三名家と宮廷騎士団長がいなくなったとはいえ主力は残っています。気を引き締めていきましょう」
参謀は兵たちに指示を出した。
「今回は自分は行けないでありますね。みんな油断せず戦って欲しいであります」
エリザは神妙な顔をして言った。
「心配しないで下さい団長!」
「貴族派のやつらに目にものを見せてやりますから!」
騎士たちはそう言って意気込んだ。
「頼んだであります。栄光をこの手で掴みましょう!」
『おー!』
エリザの言葉に騎士たちは士気を上げた。
「さすがですね。この勢いのまま敵を潰しましょう」
参謀はそう言ってニヤリと笑った。
ーー
「ど、どうするのだ!敵はすぐそこまで来てるぞ!」
貴族派派閥長は執務机で震えながら喚いた。
「落ち着いて下さいお父様。慌てた所でどうにもなりませんわ。いつも通り黙って結果を待っていて下さいまし」
ヴィレッタは扇で口元を隠しながら言った。
「ここまでそうやって来た結果がこれだから焦っているのではないか!本当に作戦はうまく行っているのか?」
さすがに愚鈍で傲慢な貴族派派閥長でも今の状況には不安を感じているようだ。
「ご心配なく。全て想定の範囲内です。私の作戦に支障はありません」
ネルキソスはうさんくさい笑みを崩さずに言った。
「だ、だが宮廷騎士団長や三名家がいなくて大丈夫なのか?」
貴族派派閥長はまだ不安そうな顔をしている。
「むしろ好都合です。今回無様にやられたことで彼らの権威は大いに失墜しました。この戦いに勝てばクルデタヌ侯爵家の権力はより大きくなるでしょう」
ネルキソスはクルデタヌ相手にとらぬ狸の皮算用をした。
「そうだな。ここから逆転すればよいのだ。ガーハッハッ!」
貴族派派閥長は高笑いを上げた。
「では我々は作戦会議に戻りますね。まだやることがありますし」
「失礼しますわ。お父様」
ネルキソスとヴィレッタは高笑いを上げる貴族派派閥長を放置して出ていった。
「いよいよ害獣退治も大詰めね。ここまで長かったわ」
裏庭に来たヴィレッタはネルキソスに話し掛けた。
「そうですね。学生時代からの我々の悲願がようやく叶います」
ネルキソスはうさんくさく笑いながら答えた。
「革命の日まで後少し。あなたの計画に期待してるわ」
ヴィレッタはそういって裏庭にひっそりある小さな木になっている赤くて小さな実をもいだ。そして繋がった柄を分けて1つの実をネルキソスに投げる。
「まかせて下さい。私はあなたに真実の心を捧げてますから」
実をキャッチしたネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべて実を食べた。
「そう。なら最後まで上品に行きましょう」
ヴィレッタはそう言ってから口元を隠しながら実を食べた。
変な所で切れてしまいました。
次は戦いに行くはずです。多分。