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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
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堕ちた名家

「先陣は剣に獅子の旗印、槍に蛇の旗印。後方に弓に鷲。名家が勢揃いしてますね」

遠視魔法を使った参謀は余裕な笑みを浮かべた。

「盾に穴熊はないのね。ハブられてるのかしら」

サヤは真顔でわけがわからないことを言った。

「ねえ。弓の名家ってその紋章鎧の胸につけてて金色の弓持ってるやつでいいの?」

サヤは弦を軽く指で弾きながら参謀に尋ねた。

「見えるんですか…。特徴からしておそらくそれが弓の名家で間違いないでしょうね」

参謀少し引きながら答えた。


「ならやっていいわね。ヘイ、マザー。フックを出して」

サヤがMePhoneに指示を出すとフックが出てきた。サヤはフックを矢に取り付けた。

「アウトレンジ、行くわ」

サヤはそう言って矢を放った。矢は風切り音を上げて弓の名家の方に飛んで行った。

「…あっ。ケツにぶっささったわね。まあいいわ。ヘイ、マザー。フック巻き上げて」

サヤがそう言うとマザーの先端上にある穴から細いチェーンが一瞬で現れた。そしてどんどん穴に向けて吸い込まれて行った。

「フィーッシュ」

サヤはMePhoneを勢いよく振り下ろした。

「ぐはっ」

サヤに釣り上げられた弓の名家は地面に勢いよく叩きつけられた。

「ダークバインド」

サヤは魔法で弓の名家を縛り上げた。


「な、何をする!私は弓の名家だぞ!」

弓の名家はそう喚いた。

「反逆者は黙ってて」

サヤは尻に刺さった矢を思い切り引き抜いた。

「ぐわ!」

「うわ。ばっちい。クリーン、ハイクリーン、パーフェクトクリーン」

サヤは念入りに矢を清めた。

「ぶ、無礼だぞきさ…ぐっ」

弓の名家は毒が回って倒れこんだ。

「これで向こうの弓部隊は混乱して使い物にならないわね。さ、今のうちに残りの倒しなさいな」

サヤはそう言って弓兵隊の所に戻って行った。


「よ、よくやってくれました『魔眼』様。我が軍も攻めましょう。エリザ団長とロベリア姫様は隊を率いて宮廷騎士団長と槍の名家を倒して下さい。弓兵隊と魔法隊は遠距離から援護をお願いします。後の隊は混乱している弓兵隊を叩いて下さい」

参謀は若干引きながら的確な指示を出した。

「やっと叩きのめせる日が来たでありますね。正直血筋だけで威張っててムカついてたであります」

エリザは気合いを入れて剣を握り締めた。

「心得た。私の槍を見せてやろう」

ロベリアは槍を回してから前に突き出した。

「みんな。矢の雨を敵に浴びせてあげましょう」

サヤは軽く拳を握り締めて弓兵隊に声を掛けた。

「では出撃して下さい」

『おー!』

参謀の号令と共に兵たちは出撃した。


「『構陣師』殿。『落涙』様を剣の名家の所に転移させることは出来ますか?」

先陣が出ていったのを見届けた参謀はおれに聞いてきた。

「それくらいならお安いご用だ。デビルズアイを経由すればいいだけだしな。なんなら剣の名家を生け捕りして離脱することも出来るぞ」

「さすがですね。ではお願いします」

おれは剣の名家の近くにいるデビルズアイと魔筆共有し、向こうに転移魔法陣を書いた。それから転移魔法陣をこっち側に書いた。

「では、行って来ます」

ヒカリはおれにそう言って手を振った。

「行ってらっしゃい」

おれも軽く手を振った。

「はい!」

笑顔で答えるとヒカリの姿は転移魔法陣の上から消えた。


ーーー


転移魔法陣が開いた先は剣の名家さんがいる部隊の上空でした。

「…あの豪華な鎧に気。おそらくあれが剣の名家さんですね」

私は空中にシールドを出し、思い切り蹴りました。

「な、なんだあれは?!」

「まさか…『落涙』か?!」

驚いている皆さんを尻目に私は光旋嵐で剣の名家さんの頬に切りつけました。

「き、貴様ー!この私の顔に傷を」

剣の名家さんが何か言ってる間に峰で体を弾き飛ばしました。

「白峰鏡月流、浮月」

そのまま足に光魔法を纏って浮いた剣の名家さんの体を蹴り上げました。

「ぐはっ。や、やめろ!」

そう叫ぶ剣の名家さんを尻目に剣の名家さんをシールドを駆使して上に蹴り上げていると、転移魔法陣が上空に現れました。これは…下を向いてますね。

「はっ!」

私は光の玉を出して剣の名家さんを転移魔法陣の中に蹴り込み、転移魔法陣に入りました。


ーー


「お疲れ様。よく頑張ったな」

転移魔法陣を通るとイドルさんが優しく迎えてくれました。 

「頬にしか切り傷がない…。映像を見て思っていましたが剣士の戦い方ではないですね」

参謀さんは苦笑いを浮かべて言いました。

「だろうな。おれもヒカリの戦い方を見ると剣術とは何なのかわからなくなることがある」

イドルさんは参謀さんの言葉に頷きました。

「まああれは白峰流の動きではありませんからね。他の引き出しを使ってる部分は多いです」

私は涙を指で飛ばしながら答えました。

「戦闘脳というものですね。そこらへんはうちの騎士団長も負けていませんよ」

確かにエリザさんの勝負勘はすごいですね。換装する武器の選別に間合いの取り方、何より実戦感覚がすごいです。全力でやれば私に刃が届くかもしれませんね。

「…そんなこと言ってる間にエリザが宮廷騎士団長とぶつかったようだぞ」 

イドルさんは片目を閉じて呟きました。


ーーー


「見つけたでありますよ宮廷騎士団長!」

宮廷騎士団と相対したエリザは剣を突き付けながら言った。

「おやおや。平民の騎士団ではないか。我ら宮廷騎士団にやられに来たのか?」

宮廷騎士団長はえらそうに言った。

「はっ。貴殿らのような錬度が低い部隊に負けるわけないであります。新米騎士でも貴殿らより働くでありますよ」

エリザは冷たい目で言った。

「何だと!もう怒ったぞ!一騎打ちだ!」

宮廷騎士団長は鼻息荒く剣を振り上げた。

「望む所であります」

エリザは冷静に剣を抜き放った。


「ふん!」 

エリザはすごい勢いで宮廷騎士団長に切りつけた。体からは赤い光が立ち上っている。

「くっ。武器の申し子を使うなど卑怯だぞ!」

「これは実戦でありますよ。印つけた武器なら勝手に発動するであります」

エリザはそれから猛攻を仕掛けた。宮廷騎士団長は完全に押されている。やはり力の差は歴然なんだろう。

「くっ。なめるな!」

宮廷騎士団長は反撃しようと剣を横に凪いだ。

「よっと」

エリザは軽く払って宮廷騎士団長を上から切りつけた。

「くっ」

宮廷騎士団長は剣を横にして上段に構えた。あれで防ぐつもりらしい。

「甘いであります」

エリザの持っている剣は一瞬消え、ピコピコハンマーに変化して宮廷騎士団長の頭に直撃した。

「ぐふっ」

宮廷騎士団長は一撃で気絶した。

「さすがイドル卿謹製でありますな。付与魔法が凄まじいであります」

エリザは即座にピコピコハンマーを剣に換装した。そして鎖を空間魔法から出して宮廷騎士団長を拘束した。

「団長がやられただと?!」

「クソ!卑怯だぞ!」

宮廷騎士団長がやられたのを見て宮廷騎士団は騒ぎだした。

「自分はスキルを使っただけであります。大体戦場で卑怯とか騒いでると死ぬでありますよ」

エリザは武器をショットガンに換装してまとめて麻酔弾を撃ち込んだ。

「さて、倒されたいやつは前に出るであります」

エリザは空間魔法からマシンガンを取り出して不敵な笑みを浮かべた。


『完全に1人だけ異世界の動きしてるよね。マスター変な武器あげすぎだよ』

デビルズアイのネーナは銃を乱射するエリザを見て呆れたように念話を送ってきた。

『開発した武器を回す先としては便利だからどうしてもな。サヤやヒカリから知識を得ると改良もはかどるから余計エリザの装備がおかしくなるんだろう』

『すごい他人事だね。それにしても何であのピコピコハンマー剣をすり抜けたの?』

ネーナは不思議そうに聞いてきた。

『換装には武器を切り換えて出す時にわずかなタイムラグがある。だからエリザの剣と相手の剣がぶつかる瞬間に換装すればタイムラグで攻撃が当たるというわけだ』

おれは簡単に理屈を説明した。

『なるほどー。…それって失敗したら大変なことにならない?』

『なるだろうな。タイミングを間違えたらケガするし、換装する武器を間違えると間合いが合わなくて当たらない。まさにエリザの経験と瞬時の判断と本能があるから出来る芸当だ』

正直おれには理解出来ない感覚だ。おそらくギフトを磨き上げる中で身に付けたとは思うがやはり才能も大きいんだろう。

「宮廷騎士団長は落ちた。次はロベリアと槍の名家だな」

おれはロベリア方面のデビルズアイに意識を切り替えた。


ーー


「おやおや。姫様ではないですか。大人しく城に籠っていればいいものを」

槍の名家は下卑た笑いを浮かべて言った。

「じっとしているのは性に合わんのでな。そもそも貴様らなどに怯える必要もないだろう」

ロベリアは余裕な笑みで言い切った。

「何だと?!くっ。姫だからって手加減すると思うなよ!」

「いらぬ世話だ。どのみち貴様は勝てんよ」

ロベリアはそう言って槍を構えた。


「クソ!なめるな」

槍の名家は槍をロベリアに突き出した。

「甘い」

ロベリアは軽く槍を払い、槍の名家の頬を突いた。

「なっ。この私の顔を!」 

「どのみち貴様は反逆罪で処刑される。傷など気にしてどうする」

ロベリアは余裕な顔で槍を回した。

「これからどうだ!」

槍の名家は上から槍を振り下ろした。

「遅い」

ロベリアは槍を強く弾き飛ばした。槍の名家の槍は回転しながら上に飛んで行った。

「ひ、ヒィイ!て、撤退だー!」 

槍の名家は号令をかけて逃げようとした。

「私から逃げられるとでも思ったか?」

ロベリアは腕だけに加速魔法をかけて槍を投げた。

「ぐはっ!」

槍の名家は後頭部に槍を食らって倒れ込んだ。

「安心しろ。石突だ」

ロベリアが掌を前に出すと槍がロベリアの手の中に戻って来た。

「さて、そろそろみんなも片付いたかな」

1番最後に敵を倒したロベリアはそう言って空を仰いだ。


ーー


「邪魔な三名家と宮廷騎士団長がやられましたか。これでやりやすくなりましたね」

ネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべて言った。

「当たり前よ。そう来ないと面白くないわ」

ヴィレッタは扇で口元を隠しながら言った。

「フフッ。せいぜい皆さんには私の手の上で踊ってもらいますよ」

ネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべながら手を前に出した。

どうも実力差があるとあっさり倒してしまいますね。

次はとりあえず派閥長の屋敷には突入します。

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